
Subway Station
Dorchester, Massachusetts USA
写真を始めてから40年になるが、長いあいだ自分の撮った写真は周りにいるごく少数の人たちに見せるだけで、あとは自分で楽しんでいるだけだった。 時々個展のようなものをやってはいたけど、それとてごく限られたサークルの中で人の目に触れていたにすぎない。
それがインターネットの到来ですべてが変わってしまった。 僕もかなり遅まきながら見よう見まねでホームページを作成したのはそんなに古い話ではなくて、15年ぐらい前だったろうか。 そして自分の作品を初めてウェブサイトに載せた時のことは忘れない。 数週間のうちに数千人が見てくれた。 数ヶ月たつとその数は数万人にもなった。 それまでの個展では百人以上の人が来てくれたことはなかったから、これは僕には目の玉が飛び出るようなショックだった。 サイトへのアクセス数は作品の価値とは何の関係もない、ということはわかっていたけれど、とにかくそれほどの人が見てくれたということが信じられなかった。 こうして僕はインターネットの凄さを実感したのである。 サイトのアクセス分析機能を見ると、文字通り世界中の国々からのアクセスがあったのがわかるが、アメリカ以外ではなぜかロシアとイタリアが多かったのは今でもその理由がよくわからない。 (日本からは一人もいなかった)
そして思うのは、僕がもし日本でウェブサイトをやっていたら、これほど世界中の人の目に留まることはなかったに違いないということだった。 それは英語という世界共通語のパワーである。
このホームページも数年後に閉じることになったのは、本職の仕事の方が忙しくなってページのメンテナンスが時間的に不可能になったからだ。 そのあとは世界中の写真家で形成されるあるウェブサイトに参加した。 そのサイトは現在も続けているけれど最近の僕はあまり活発に活動しているとはいえない。 というのは、数年前に日本語のブログ(つまりこのブログ)を始めてしまい、慣れない日本語を書くようになって、それだけで精一杯になってしまったからだ。 そのかわり多くの日本人の人たちと出会うことができたのは何物にも代えられない幸運だと思っている。 そして、長いあいだ貝の殻の中に閉じこもっていた僕を優しく外に連れ出して、日本へ連れて帰ってくれたのはその人たちだった。 僕はたぶん、こんな形でゆっくりと日本へ回帰して行くのだろう。
一度入ってしまえば二度と出ることのできない世界。 それがインターネットの世界である。 世界中の人々との、顔も見えず声も聞けない繋がりが、もしなくなってしまったとしたら、人はまたもとの孤独な殻の中へ帰って行くしかないから。
たとえ君が犬だったしても
誰にもわからない。
Peter Steiner

