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過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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September30

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55年後のめぐり逢い

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クリステン(同じビルに住む45歳の独身女性、医師)の家族




7月初旬のある日。目が痛くなるほど日差しが強く気温が33度という暑い日だった。
朝の3時間テニスボールを追って汗まみれクタクタになって帰宅した。家に誰もいない時はいつもそうするように、着ているものを全部床に脱ぎ捨てて裸のまま浴室に向かう。女房が寝室のラジオを消し忘れて出かけたらしく音楽が低く流れている。その旋律が耳に入ってきたとたんに僕の身体はいきなり電源を遮断されたロボットみたいにそのままそこへ停止してしまった。

あれだ!
あの旋律だ!

浴室の洗面台に両手をついてその曲を聴きながら涙がぼろぼろ流れる。


あれは僕が19か20の大学生の時だったから今からもう50数年前になる。
新宿戸山町の大学裏の4畳半の下宿の部屋で、ラジオの深夜放送から流れてきたのがこの曲だった。
弦をバックにした高いソプラノの旋律が瞬時にして異常に強く脳に焼き付いてしまった。その時の女性アナウンサーの柔らかな声まで覚えているのに、聞いたはずの曲名も作曲者の名も忘れてしまっていた。ただ曲名が何やら花の名前のように長たらしかったのを覚えていた。そしてそれ以後絶対に忘れることのなかったその旋律を再び聴くことは今の今まで無かったのである。

曲名は『バチアナ・ブラジリアス 第5番』
作曲者はヴィラ・ロボスというブラジル人。
ソプラノと8台のチェロのために書かれた曲だった。

僕のほとんど一生をかけた謎が今初めて解けた。もういつ死んでもいいなどとは言わないが、気分はそれに近い。その夜は一晩中幾度も繰り返して You Tube でいろいろなアーチストの演奏する同じ曲を聴きながら、僕は自分自身に問い続けていた。
この50年はあれはいったい何だったのだろう? あれは自分にとっては何だったのだろう?










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