過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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人は愛がなくとも生きることができるか?



めぐりあう時間たち


古い映画をハントしていてたまたま行き当たったのが "The Hours" だった。
2003年のオスカーでニコール・キッドマンが主演女優賞をとったというのに、なぜか僕は見逃してしまって11年も経った今になって初めてこの映画を見た。 そういえばあの年のオスカーは 『シカゴ』 というアメリカ人にしか作れないような騒々しい映画がなぜかあらゆる部門で幅を利かせた年で、同年のポランスキーの 『戦場のピアニスト』 などもエイドリアン・ブロディが主演男優賞をとっただけで陰に霞んでいた。

"The Hours" は邦題を 『めぐりあう時間たち』 というそうだ。
違う時代に違う場所(イギリス、カルフォルニア、ニューヨーク)で生きた3人の女性の物語で、それぞれが同じ時間を共有するという意味では邦題の 『めぐりあう時間たち』 は筋が通っているようだけど、実際に映画の中で彼女たちが The Hours を口にする時に、それはまったく違う意味で使われていた。

だいたい外国映画のタイトルに付けられる邦題ほどわけのわからないものはない。 先ほどの 『戦場のピアニスト』 も原題が "The Pianist" だから僕がその映画のことをブログに書いた時に 『ピアニスト』 と書いたら、読者の一人がコメントをくださって、日本では 『戦場のピアニスト』 と呼ばないと他の映画と混乱してしまうと教えられた。
僕が覚えている例では "The Shacow of Your Smile" が『いそしぎ』 になったり、"Purple Noon" が 『太陽がいっぱい』 になったり、"Bonnie and Clyde" が『俺たちに明日はない』 になったりする。 映画のタイトルなんてなんでも構わないようなものだけど、現代のようにすべてがグローバル化してくると当然ながら異人種間のコミュニケーションも増えるから、それが映画の話になるとお互いに煙にまかれて話がまったく先に進まないことがほとんどだ。

そこである時、古い洋画の邦題を片っ端から調べたら、明らかに幾つかのパターンを見つけた。 日本人の好きな言葉は、『華麗なる・・・』 だ。

『華麗なる復讐』 "Gangster Story"
『華麗なる賭け』   "The Thomas Crown Affair"      
『華麗なる関係』   "Une Femme Fidele"
『華麗なる激情』   "The Agony and The Ecstasy"
『華麗なるギャツビー』  "The Great Gatsby"

それから日本人が堪らなく好きなのは 『愛と哀しみの・・・』

『愛と哀しみの旅立ち』 "Come See The Paradise"
『愛と哀しみの果て』    "Out of Africa"
『愛と哀しみのボレロ』  "Les Uns et Autres"
『愛と哀しみの旋律』    "Desire for Love"

僕も自分のブログのタイトルを 『華麗なる懺悔』 とか 『愛と哀しみの日々』 とでも変えれば、もっと読者が増えるかな、などと思っているところです。


話題が完全にそれてしまったので、『めぐりあう時間たち』 に話を戻そう。
この映画は英国作家ヴァージニア・ウルフの実人生に彼女の小説 『ダロウェイ夫人』 をからめて、ニコール・キッドマン(1923年、英国)、ジュリアン・ムーア(1951年、カルフォルニア)、メリル・ストリープ(2001年、ニューヨーク)の3人の女性の人生が2時間足らずの映画の中に非常に濃い密度で詰まっている、という作品だ。 場所と時代を超えた三つの物語がお互いに次々と交錯するので、ぼんやりと見ているとちょっと混乱してしまうが、その巧みな構成と脚本のうまさに舌を巻いてしまった。 その年の主演女優賞を取ったニコール・キッドマンのヴァージニア・ウルフの演技は鬼気迫るものがあるが、他の二女優もそれには負けていず、まるで演技のコンテストを観ているようだった。
それに加えて、ふだん僕のお好みの作曲家とはいえないフィリップ・グラスの音楽が、ここでは実にピッタリと合っていてこれ以外の音楽は考えられない。 トレードマークのむしろ単調な旋律とハーモニーが、繰り返し繰り返しゆっくりと時間をかけてテンションを積み上げていく彼の音楽は、この映画で満開に花が開いたという感じがする。 彼を引っ張ってきたのは誰か知らないが、その人にアカデミー賞を上げたいくらいだ。
そのうえ、エイズで死ぬ間際のニューヨークの詩人を演じるエド・ハリスがメリル・ストリープの目の前でいきなりビルの窓から跳び下りる、などのショッキングなスパイスも加味されていて、2時間はあっという間に過ぎてしまった。

ところで話はまたまた横道にそれるけど、僕が学生時代に同棲していた同じ大学の英文科の女性の卒業論文のテーマがヴァージニア・ウルフだった。 その手伝いをさせられてウルフの作品を幾つか英文で読んだことがある。 『ダロウェイ夫人』 もその一つだったけど、まあなんと難解な文章だろうと悲鳴をあげたものである。
後年僕はその女性と結婚するはめになって、7年後に別れてしまうことになるいきさつはすでに何度もこのブログで書いている。 今回この映画 『めぐりあう時間たち』 を見ながら、いつの間にか1970年前後の東京とボストンを舞台にした彼女と僕の物語が、そのまま映画の中に組み込まれていくような錯覚を覚えていた。

それだから、というわけではないけれど
これはお勧めの映画です。


* 上の動画の最後のスクリーンで "The Hours" をクリックすると、フィリップ・グラスの1時間にわたるサウンドトラックが聴けます。 映像無しで音楽だけ聴くと信じられないくらいに退屈で、僕はいつのまにかぐっすりとデスクの上で眠ってしまった。



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三月のクイズの結果は・・・

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雑貨屋
横浜中華街


初めてのトリビアの出題だったので勝手がわからなく、易し過ぎてしまったようだ。
この次はこうはいかないよ。
解答のあとに載せているリンクはそのことが書かれているブログ記事です。


a) イタリアのエミリアロマーニャ州にあって、町中に現代画家たちの壁画が描かれている町は
② ドッツァ    『イタリアの旅-ドッツァ

b) パリにあって、そこへ入るとまるで海の底にいるように感じるほど青のステンドグラスで埋められている教会堂は?
① サント・シャペル教会    『青いチャペル

c) ブタ(豚)と呼ばれながら実はその綱目科属種がブタとは何の関係もない動物は?
③ ツチブタ     『八月のクイズの結果は・・・

d) 現存する世界最古の共和国は山の上にあるが、そこから見下ろすと眼下に広がるのは?
⑤ アドリア海     『サン・マリノ共和国




6人の正解者から最終に残ったのは 「けろっぴ」 さんと 「のほほん」 さんで図らずもニューヨーク対ドイツの外国同士の決勝戦となったが、今回はアメリカに軍配が上がった。

けろっぴさん、おめでとう。
住所氏名を非公開コメントにして送ってください。
お好きな写真を指定することを忘れないように。
数日経ってもご返事のないばあいは棄権とみなして次の方を選びます。




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動物好きの絵描きさん 19 カンガルー

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カンガルー
By Green Eyes


カンガルーという動物は知れば知るほど不思議な生き物だ。
まず不思議なのは、生まれたばかりのわずか数センチのサイズの赤ちゃんをそのまま母親が自分のポーチ(巾着)に入れたまま育てるということだ。 出産は1度に1匹ずつだが、ポーチの中にはちゃんと乳房が4つ装備されているので、そのあともっと子供ができても4匹までなら、乳房の取り合いで喧嘩になること無く平和な家庭が築けるわけだ。 そして最も不思議なのは、ポーチに抱えている赤子がまだ幼な過ぎたりする時に、もしまた次の子を妊娠してしまった場合には、母親のカンガルーは体内の胎児の発育を一時停止できるという不思議な能力があって、出産を好きなように遅らせることができるらしい。 これは凄いことだと思う。

それというのも、カンガルーの女性達は実は生まれつき色好みなのだ。 人間も含めてふつうならどんな動物でも持っているあの発情期というものがない。 つまり出産日以外はいつも発情しているそうだから呆れてしまう。 だから次から次へと妊娠してしまうのである。 相手をさせられる旦那はたまったものではない、などと思ってしまうのはわれわれ一夫一婦制の人間の悲しさで、彼女たちは若い元気な青年から落ち着いた壮年の男まで相手をまったく選ばないから、年老いて発情のシグナルを出せなくなり、周りの男たちから相手にされなくなるまでは好きなセックスをし続けることができる。

だからといって彼女たちは男との愛欲に溺れて自分の子供をないがしろにするということは無い。 ポーチの中の子供はふつう6ヶ月くらいまでは外に出ることはなく、そのあとは子供が出たり入ったりを繰り返しながら、完全に乳離れして外の世界で暮らすようになるまでには8ヶ月かかるそうだ。 その間はどこへ行くにも何をするにも(愛人とのセックスも含めて)母子はピッタリと一体である。
野生のカンガルーの平均寿命は6年と短いから(動物園など人に飼われるカンガルーは20年も生きる) 人間で言えば子供が14歳くらいになるまでは母親は自分のそばから離さず、そのあとは子供は母親の懐からいきなり世間に放り出されて、大人の世界へと入って行くのだ。

また、カンガルーは歩くことができなくて跳ぶしかないという唯一の大動物だそうだ。 いっきょに2メートルぐらい跳んでしかも疲れを知らずに何キロも跳び続けることができる。 そしてこれも他の動物と違うのは、後すざりというものができない。 そのかわり水の中では水泳の達人となる。
何とまあユニークな動物であることか!

僕は植物はどうも苦手だけれど、動物となると話が違う。





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三月のクイズ

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雑貨屋
横浜市中華街

今月のクイズは少し趣向を変えてトリビアというのはどうだろう?
トリビアにはふつう誰でも得意不得意のカテゴリーがあるんだけど、僕のトリビアはそんなのをまったく無視した、ちょうどこの横浜のチャイハネの雑貨屋みたいなトリビアです。
そのかわり全問を通して一つだけ共通しているのは、すべて僕のブログにかつて掲載された事柄だということ。
だからといって以前のブログをひっくり返して600本近くある古い記事を見なければ解答が出ないということはなく、以前の記事を見てない読者でもそれぞれお気に入りのリサーチの仕方でちゃんと正解にたどり着く、というところがミソなのだ。

4問全部を正解した人に抽選への道が開かれる。


a) イタリアのエミリアロマーニャ州にあって、町中に現代画家たちの壁画が描かれている町は
① ピエヴェ・ディ・チェント
② ドッツァ
③ ボローニャ
④ パルマ
⑤ フェッラーラ

b) パリにあって、そこへ入るとまるで海の底にいるように感じるほど青のステンドグラスで埋められている教会堂は?
① サント・シャペル教会
② ノートルダム大聖堂
③ サクレ・クール寺院
④ サン・ジェルマン・デ・プレ教会
⑤ サン・シェルピス教会

c) ブタ(豚)と呼ばれながら実はその綱目科属種がブタとは何の関係もない動物は?
① ミニブタ
② 黒豚
③ ツチブタ
④ イベリコ豚
⑤ イノブタ

d) 現存する世界最古の共和国は山の上にあるが、そこから見下ろすと眼下に広がるのは?
① 地中海
② 黒海
③ エーゲ海
④ ビスケー湾
⑤ アドリア海



正解の中から抽選で1名を選んで、僕のブログ上のどれでもお好きな写真を差しあげます。 
締め切りは今日から1週間。
答えは非公開コメントにして下さい。



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プロヴァンスの石の家 (4/4)

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ブランチはサンルームで

連日の日帰り旅行と1泊のカマルグ行が続いたあとは、どこへも行かずに家でごろごろしたり、洗濯をしたり、徒歩で近所を散策したりする日があった。 そんな日にはそれぞれが勝手に朝寝坊をして遅く起きだしてくる。
この朝僕が目を覚ますとすでにコーヒーの香りが家中に漂っていて、あくびをしながら階下へ降りるとサンルームのテーブルはきれいにセットされていた。 あとで聞くと、ふだん調理当番には入っていないマヤが今朝はひとりで全部やったのだという。 サラダにポタージュ、卵、ハム、チーズ、クロワッサンとバゲット、数種類のとびきり美味しいジャム、それに冷えた白ワイン、と優雅なブランチとなった。





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家の向かいにはローマン・シアターがあって・・・

サンルームからすぐ向かいに見えている巨大な石段は、大昔に古代ローマ人が造った闘技場だった。 その裏側には近代的な博物館があって、そこを訪ねてこの闘技場の史実を知った時に僕は思わず唸ってしまった。 建てられたのがなんとBC500年というからすごい。 ローマ帝国が全ヨーロッパを支配していた時に、その威容を示すためのさまざまの創造物のひとつがここにも残っていたのである。 この町には21世紀の現在と紀元前の世界とが文字通り同居しているのだ。
このローマン・シアターは現在は夏になるとロックのコンサートが開かれてフランス中から若者たちがなだれ込み、この町はものすごい騒ぎになるそうだが、ヘンドンハウスでは居ながらにしてそのコンサートを楽しめるというわけだ。 コンサート開催中はその混雑と騒音のためにこの家の滞在費が割引になる、というのはロックが好きな人ばかりではないようだ。

そういえば不思議な偶然があった。
最初にこのヘンドンハウスへ到着した時に、同行の娘のマヤがアッと絶句して立ちすくんだ。
彼女が突然思い出していたのは、6年前にまだソルボンヌに留学していた年の夏、友達数人とパリから車を10時間運転して、はるばるこのローマン・シアターまでレディオヘッド(Radiohead)のコンサートへ来ているのだ! そのシアターの真向かいに6年後に住むことになるとは、なんという巡り合わせだろう。





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ローマン・シアター

今、自分がこうやって指で触ったり腰掛けたりしているこの同じ石段に、2000年以上前に誰かが同じように腰掛けていたのだと想像する時に、僕は 当たり前のことながら 「石は燃えない」 と改めて悟ったのだった。 その昔、グラディエーター(闘士)とライオンの死闘に大歓声を上げた民衆の子孫たちが、2000年後に同じ劇場でロックスターに熱狂的な声援を送るのだと考える時、人類の歴史とは長いものなのか短いものなのか、混然としてわからなくなってくる。





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進化と退化

ローマン・シアターの石塀の外には、ツーリストのための案内所やコミュニティーの集会所やギャラリーが並んでいる。
先ほど博物館で古代ローマ帝国時代の彫像を数多く見たばかりの僕の眼に、この21世紀の前衛彫刻は不思議と奇異に映らなかった。
のんびりと歩きながらつい目と鼻の先のヘンドンハウスへ向かう途中、アメリカでの自分の生活とは何という違った世界がここにはあるのだろう、と思っていた。 そしてその世界を、旅する者としてではなく、たとえ短期間でもそこに住む者として経験できたことが嬉しかった。

さあ、今日はこれから帰って何百枚という写真の整理をしなくちゃならない。 明日からまたアクションが始まるのだ。 明日の予定はフランスで一番高い山であるモンヴァントゥに登ることになっていた。 ここからはそんな遠くではない。
この山登りでは下山の途中で車が故障したりするのだが、そのことはここに書いた。


(終)



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プロヴァンスの石の家 (3/4)

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ダイニングルーム

ダイニングテーブルに全員が揃ってちゃんとディナーをしたのは数回しか無かった。 というのは、僕らはほとんど毎日朝から日帰りの旅に出かけて夕食を外で食べることが多かったし、夕方早めにに帰宅した時にはリビングルームやサンルームでゆっくりくつろぎながら食事をしたからだった。

この町の中心部までは歩いて10分の距離で、そこには銀行や郵便局やレストランと並んでいろいろな店やマーケットがあった。 食料品や日常品が必要な時には 「ちょっとそこの市場まで」 という感覚で気軽に買い物ができたし、まとめて大量の食材を仕入れるときには少し離れた巨大なスーパーまで車で出かけた。 そのスーパーさえ重い買い物袋がなければ歩いて行けなくはない距離だった。 ヘンドンハウスは実に便利の良い場所にあったのである。





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ちょっとそこの市場まで

同じ場所に数週間も滞在していると、けっこう近所の人たちと親しくなったり、マーケットや店屋でも顔を覚えられてまるで地元の住民のような扱いを受けるようになる。 カフェのウェイターがちゃんと好みのドリンクを覚えていてくれたり、八百屋のおじさんもニコニコして野菜を大目に測ったり、採れたての果物をそっと袋に入れてくれたりする。 (それをしてくれるのはなぜかどこでもおばさんではなくて、おじさんだった)。 パリと違ってここではどこでも英語が通じるというわけではなかったけど、身振り手振りでちゃんとビジネスは成立するし、警察(駐車違反のチケットを貰って出頭)や医者(MJ がある日いきなり具合が悪くなった)などの少し複雑な状況には、マヤのフランス語が大いに役立った。 親としては娘をパリに留学させた見返りがようやくあったと実感したプロヴァンスの旅だった。






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キッチン

キッチンはモダンに機能的に装備されていて必要な物はすべて揃っている。
それが二度目にここへ来た時には、レンジもオーブンも冷蔵庫もさらにハイテクの最新のものに取り替えられていて、それを見た女性連は競ってシェフになりたがっていた。 最初は女性連に僕を加えた数人が手分けをして夕食を作ってみたけれど、そうなるとさすがにこのキッチンも混雑して動きが取れず、身体の衝突だけではなくて意見の衝突も発生した。 船に船頭が多すぎる、というやつだ。 そのあと代わり番に当番制でやるということに意見が一致して、男性の僕はキッチンに入るべからず、と言い渡された。
それ以後は日米共同の国際料理プロジェクトは非常にスムーズに進んだようである。






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リビングルームの作戦会議

明日はどこへ行こう、何をしよう、とワイワイと騒ぎながら少しずつ予定が決まっていくほど楽しいことはない。 この旅を通して唯一のドライバーである僕は皆に大事にされていろいろな特典が与えられた。 つまりマスターベッドルームを占拠できたり、調理当番や苦手のショッピングから免除されたり、旅行中のレストランの選択は僕の意見が優先される、というぐあいだ。

一行の一人一人が何かの形で仕事を課された。 僕には勿論のこと運転という大役があったし、作戦参謀として3人の熟女連がもっぱらスケジュールを取り仕切り、マヤはその日のすべての経費を記録して1日の終りに精算して貸し借りをゼロにするという財務の仕事、MJ の旦那のカークはドライビング中に僕の横で地図と首っ引きでナビゲーターを務めていたが、失敗が重なって自信を無くしてリタイアしたあと、その仕事は彼の息子のジョンに引き継がれた。

そんな中で何の仕事も与えられずに一人で悠々とこの旅を楽しんでいたのは詩人のパチさんだった。
この家でのパチさんの行状は前にここに記してある。


(続)



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プロヴァンスの石の家 (2/4)

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ベッドルーム #5

昔は、冬の寒さやプロヴァンス名物のミストラル(野分)を防ぐために窓はうんと小さく取られたのだろう。 太い鉄格子は昔のままで、日中でもあまり光の入らない薄暗い部屋には、250年前の空気がそのまま淀んでいるような気がした。 屋根裏部屋のランプの光の下での質素な農民の生活が偲ばれる。





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マスターベッドルーム

このベッドルームだけが思い切り改装されていて、壁一面に取られた窓から、ゴッホやセザンヌが愛したあのヴォークリューズ地方の柔らかな光がふんだんに室内に溢れていた。 この家ではどの窓にも網戸というものがなかったが、外の空気を入れようと開け放しておいても虫一匹入ってこなかった。
大家のヘンドンさんはイギリス人で、ニューヨークの大学をリタイアした大学教授、奥さんは絵描きだそうで、二人とも英語、フランス語、スペイン語を自由にしゃべる。 家中至るとこに趣味の良い美術品が置いてあり、家具や装飾品や本棚に並ぶ書籍などに持ち主の教養と知性が表れていた。 そうだ、この二度に渡るプロヴァンス旅行のあとで、僕がヨーロッパ旅行をまとめたカラー写真集 『プロヴァンスからイタリアへ』 を出版した時に、ヘンドンさんはその本を2冊買ってくれて1冊は自宅に、もう1冊はこのヘンドハウスのリビングルームのコーヒーテーブルに置いてあるそうだ。 その本にはこの町やヘンドンハウスの写真も載せてある。







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窓の外には

マスターベッドルームの窓から裏庭を見る。
それほど大きくないぶどう畑があって、最初の3月の旅では裸の木々が、二度目に来た11月には豊かな葉をつけたぶどう畑がそこに広がっていた。
ヘンドンさんは人を雇ってヴァインヤードの管理から自家製のワインの製造まで任せている。 そういえば地下のワインセラーには古い木製の醸造機や樽が置いてあった。 数十本のボトルが二段の棚に並んでいて、それぞれが昨年と一昨年の収穫のようだった。 そしてそこにピンでとめられた紙片には 「一日に1,2本の割りなら自由に飲んでかまいません」 と英語で書かれていた。 もちろんさっそく試してみたら、ウーンと唸るほど良いものとはいえないにしても、アメリカの義弟が趣味で造るワインとは雲泥の差で美味しかった。 

ぶどう畑のの向こうに見える建物はあとでわかったのだけれど、家族でやっているこじんまりとしたワイナリーだった。 自由に試飲ができて、極上のものを買っても信じられないくらいに安かった。 今回の滞在では行く先々で有名なラベルの Gigondas や Châteauneuf du Pape や Séguret を始め無数のワイナリーを訪れた。 その度にワインを買い集めてきては片っ端から飲んだ。 それが、アメリカに帰国する際に持ち帰った数本はすべてこの隣家のワイナリーで造られたワインだった。 近所同士ということでこの家族とはすっかり親しくなっていたから、その思い出を持ち帰ったというわけだ。

二週間の滞在中にどれだけのワインを飲んだかといえば、ヘンドンハウスを去る前の日に全員で家中を掃除した時、僕の役目は廃品処理ということでワインの空き瓶を車に詰めて近所の回収場まで運んだ。 2度往復した。 空き瓶をざっと数えたら100本以上あった。


二度目に違う季節にここへ来た時のぶどう畑はこんな感じである。


(続)



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プロヴァンスの石の家 (1/4)

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Hendon House
Vaison la Romaine, France


僕らの一行はパリからリヨン経由のTVG(高速列車)に乗って、南下すること二時間半、アヴィニョン駅で下車した。
予約してあったレンタカーを受け取るとそこからは、目的地のヴェゾン・ラ・ロメインの町までは北西に向けて50キロのドライブだった。 借りたBMWはヨーロッパではいつもそうであるようにマニュアルのシフトだったから、今回の旅も運転は僕一人に任せられることになりそうだ。 (ほとんどのアメリカ人はオートマチックしか運転できない)。
早々にハイウェイを降りると、あとは丘陵をくねくねと抜ける田舎道が続き、僕らはその年の旅行ではまだナビゲーターを持っていなかったから、地図と首っ引きで何度か道を間違えながら、もう辺りが暗くなる頃にやっとヴェゾン・ラ・ロメインの町に入った。

ヘンドンハウスを探し当てた時に、全員の口からいっせいに 「へ~!」 と声が出た。
古い農家を改造した石造りの家だとは聞かされていたけど、そのどっしりと重量感のある風情を実際に目にして思わず圧倒されたのである。 しかも予想していたよりずっと大きい。 二棟の建物が正面の回廊でつながっている。 たぶんどちらかの棟に大家のヘンドンさんが住んでるのだろう、と思ったらそうじゃなくて、この家全体がこれから2週間僕らの住む家になるのだとあとでわかった。 建物の左端に見えているモダンなサンルームは明らかに近年付け足されたものに違いない。





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前庭

鉄製の門を開けて中に入る。 左側の壁にドアがあってそれが玄関となっていた。 右側の石段を登ると、あとでわかったことだけど、そのまま直接二階のマスターベッドルームに出入りできるようになっていて、これは夜中に誰にも知られずに家への出入りができるお忍び用の通路であったに違いないなんて勝手に想像してしまう。 玄関のドアの脇に小さなレモンの木があって、その木の下の陶器の小箱の中に家の鍵が入っているから、というのがヘンドンさんの指示だったが、その通りだった。





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門を開いて

この家が建てられたのは、1700年代の半ばだそうだから、もう250年を経ているわけだ。 その頃の人々が暮らしたような質素で不便な生活を僕らも経験することになるのか、と半ばこわごわと、半ば期待をして一歩家の中へ足を踏み入れたら、その予想は完全に裏切られた。 内部は驚くほどモダンに改造されていて、18世紀にここに住んだ人たちには申し訳ないくらい快適な生活ができるようになっていた。
大小のベッドルームが5つ、バスルームが4つ、ダイニングルームとリビングルームが一つの広大なスペースを取っていて、それに十分なサイズのキッチンが付いていた。 ガラス張りのサンルームはそれだけで我が家のリビングルームよりはるかに広い。 そのうえ裏庭にはちゃんと地面にはめ込まれたプールまで付けられていている。 右棟の建物はダンスパーティでもできそうな大広間になっていて、そこにはビりヤードやピンポンテーブル、エクササイズマシーンなどが備わっていた。

家賃は4月から10月にかけての観光シーズン中は1週間に2700ドルで、それが7月のピークには3400ドルまで上がる。 ところが僕らが行ったのは最初の年は3月、二度目は11月、とどちらもシーズンオフだったから (そう、実は僕らはここには二度も来たのだ) 家賃は週1000ドルまで下がっていた。 たとえば4カップルでこの家を借りれば、一人あたりの滞在費が1週間125ドルというのは信じられない価格である。 僕らがここへ二度も来てしまったのは、この町がとても気に入ったということは勿論だけど、実は家賃の安さが理由の一つでもあったのだ。

(続)





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二月のクイズの結果は・・・

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イースターの午後


今年の日本の祝祭日をざっと数えてみたら17という数が出てきた。 それに比べるとアメリカのホリディは10日しかないから日本よりずっと少ない。 もっともこの10日というのはいわゆるナショナル ホリディというやつで全米共通の祝祭日なんだけど、それ以外に各州によって州だけのホリディや、ユダヤ教だけの休みがあるから、話はもっと複雑になる。 それにしてもふだん勤勉な日本人にはこれほど多くの休日が必要なのだろう、と思った。 アメリカ人は仕事を休みたい時はいつでも休むから。

今月のクイズのイースター(復活祭)は、もともとキリスト教に起源があるのはクリスマスなど他の多くのホリディと同じだけど、ナショナル ホリディには入っていない。 移動祝祭日だから日にちが決まっていなくて毎年違う日にやってくるが、イースターサンデーという言葉があるくらいで必ず日曜日と決まっている。 その日にちは太陰太陽暦によって、4月の4日から5月の8日のあいだの日曜に設定される。
イースターといえばうさぎ、とくるのはハロウィーンといえば魔女、と決まっているようなものだけど、イースターのうさぎたちはラビットではなくてバニー (Bunny) と愛称で呼ばれる。 あのプレイボーイバニーのバニーである。




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イースターのうさぎたち



そうそう、かんじんのクイズのこと。
応募者全員が正解というのは前に1度あったと記憶している。 日本にはない習慣だから戸惑う人もいるだろう、と思った僕が甘かったようだ。 まあ、たまにはいいよね。
抽選の結果最後まで残ったのはうらら堂さん(先着順なら良かったですね)、わにさん(オハイオに引っ越すんですって!?)、okko さん(お久しぶり!) の3人で、ファンファーレのあとステージに登場したのは okko さんでした。 

okko さん、おめでとう。
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お好きな写真を指定することを忘れないように。
数日経ってもご返事のないばあいは棄権とみなして次の方を選びます。




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