過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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September30

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古いレンズよさようなら

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ニッコール 35mm f/1.4


このレンズを手に入れたのは70年代の半ばだったから、もう40年以上も僕といっしょに年月を重ねてきたことになる。
当時としては貧乏アーチストの僕なんかにはとても手の届かない贅沢で高価なレンズで、これを買うためにしばらくのあいだ生活を極端に切り詰めことを忘れない。 今では古いカメラやレンズ類をほとんど処分してしまったあと、最後に残ったわずかなものの一つがこのレンズだった。
今あらためて手に取るとそれは手のひらにずっしりと重く、プラスチックをふんだんに使っている昨今のレンズには無い重厚な貫禄がある。 あちこちの塗りが剥げ落ちていて、とくに回転リングの部分はひどい。 胴に彫られた数字はかすれてしまいレンズの曲面にも幾つかの傷がある。 絞りのリングは少しガタついているしピントの操作リングは逆にゆるゆるで締りがない。 こうやって眺めるといかにも 「刀折れ矢尽きた」 老兵という感が強い。 しかし僕の後半生の荒波ををいっしょに生き抜いた仲間だ。 死ぬまで手放すことはないだろう。


だから 「古いレンズよさようなら」 というのはこのレンズのことではなくて、実は自分の眼の中のレンズ、つまり今回の白内障手術で取り除いた右眼の水晶体のことだった。
新しいシリコン製のレンズと取り替えてみたら、最初の数時間は何も見えず、まるで万華鏡を見ているように訳の判らない形や色が眼の前に飛び交っている。 まるでずっと昔に何度かやったことのあるLSDでトリップしているような感じである。 それがだんだん落ち着いてくると少しづつ物が見え始め、時間が経つにつれてそれが次第に焦点を結んできた。 手術した右眼の奥の方には鈍い痛みがあったが、鎮痛剤を数回飲むうちにその痛みは夜までには消えてしまった。

手術後は3種類の目薬をそれぞれ違う頻度で眼に入れるようにと医者が言う。 目薬1は日に2回、目薬2は4回、目薬3は2時間おきに日に8回というぐあいで、これを1週間続けたあと2週目はそれが目薬1と3に減り3週から5週までは目薬3だけを日に4回というけっこう複雑なスケジュールになっている。 混乱を防ぐために医者がくれたチャートに、目薬を使用するたびにチェックをするわけである。
手術の翌日のフォローアップで医者の検診を受けたら、視力はすでに 20/20、つまり日本でいう視力1.0 になっていた。
嬉しいことに以前は常に紗がかかったように見えていた周りの世界が、今は見違えるようにハッキリと鮮明に見えるようになった。 このぶんだと以前の眼鏡なしの生活に戻れそうである。 ただし、医者が言ったとおりで本を読むなどうんと近くのものはやはり見辛い。 その時だけリーディンググラスを使うか、そうでなければ以前と同じバイフォーカルの眼鏡をかけるしかないだろう。 手術前にはリーディンググラスをかけても右眼がぜんぜん見えず、本を読んでもすぐ疲れてしまったのが今では嘘のように楽に読めるようになった。 以前なら虫眼鏡を使わなければ読めなかった新明解の小さな字も、今ではリーディンググラスをかければ楽に読めた時には、僕は思わず 「やったあ!」 と手を叩いてしまった。

予期しなかったことを発見してショックだったのはそのあとである。
左右の目で別々に見る世界の色が違う!
新しいレンズを入れた右眼で見る世界はすべての色がニュートラルで正常に映るのが、左の古い眼で見る世界はずっと暖色系に見えるのだ。 ちょうど写真でいえば、昔のフィルムカメラに着ける #85 とか LBA の暖色フィルターを装着したような感じだった。

右眼

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左眼

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ということは、今まで何十年ものあいだ、ニュートラルじゃなくて暖色フィルターを内蔵した両眼で写真を撮っていたということになる。
これにはちょっと参った。
もっとも自分の趣味としては下の暖色の写真のほうが好きだとしても、これは趣味の問題以前の 「いかに正確に見る」 かが問題点だとすると、これではまったく自信がなくなってしまう。 色の違いのことは医者も言及しなかったし、いろいろとサーチした記事にもシャープさにだけ言及して色彩には触れていなかった。 左眼を手術すれば解決するわけだから、これはもうそうするより他にないような気になっている。 医者に言わせれば今のところ手術の必要はまったくないそうだ。

困った…






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遠くへ行きたい

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冬の旅
Bellbrook, Ohio USA










歌唱: 鮫島有美子









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モランディ美術館

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モランディ美術館
Bologna, Italy

モランディの絵が東京にやって来ているそうだ。
ほんとうなら数年前に予定されていた展覧会が東北大震災でキャンセルされたのが、ようやく今年になって重い腰を上げたモランディの絵がボローニャの館を出て日本へ来ているらしい。 ふだん日本のニュースには疎い僕にそれを教えてくれたのは、読者の一人でありモランディの強烈な信奉者でもある絵描きのたまさんである。 彼女はもちろん待ちきれないようにしてさっそく見に行って、できることならボローニャで見たかったと再三言っているのは、どうやら僕に責任があるらしい。

というのは、彼女が僕を知ったきっかけというのは、もう7年も前に僕が古いブログでボローニャのことを書いた時、インターネットでモランディを検索中の彼女がたまたまこの僕の写真に行き当たったからだそうだ。 僕らはそれ以来すっかり良い友だちになってしまった。
そんなことを考えていたら、そうだ、あの美術館ではまだ未公開の写真があったのを思い出した。 これはたまさんに見せなくちゃ、と数枚の写真を掘り出してみた。





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モランディのアトリエ Ⅰ





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モランディのアトリエ Ⅱ

モランディ美術館の1室には彼のアトリエが再現されている。
彼がああでもないこうでもないと花瓶や壺を並べ替えただろう幾つかの古い机や、(写真には見えないけど) イーゼルや絵具箱や筆などが、整頓されることもなく雑然と散らばっていて、大きな窓からはあのボローニャの優しい秋の光がいっぱいにアトリエに溢れていた。





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贅沢な壁

そしてちがう室の壁には21枚の絵がいっしょに配置されて、見事な1枚のミューラルとなっていた。
モランディを愛する点ではたまさんには負けない我が Green Eyes は、その前に置かれたベンチに腰掛けて長いあいだこの壁を見つめていたのを思い出す。

あれは2007年の秋だった。






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ノスタルジア ・・・ ふたたびモノクロの世界へ

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Nostalgia 1
風見










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Nostalgia 2
貯金箱










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Nostalgia 3
火熨斗(ひのし) と火熨斗台










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Nostalgia 4
喇叭










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Nostalgia 5
布団叩き










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Nostalgia 6
赤子風呂










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Nostalgia 7
金銭登録機










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Nostalgia 8
マヌカン










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Nostalgia 9
納戸の扉










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Nostalgia 10
喇叭と写真機










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Nostalgia 11
滑車










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Nostalgia 12
薬棚










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Nostalgia 13
焼き網










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Nostalgia 14
麦酒の空き缶




・・・・・














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3月のクイズの結果は…

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???


これは何のツールだろう?

正解はスカート・マーカー (Skirt Marker)。
つまり、ドレスをを試着した女性を床に立たせて、そのスカートの丈(たけ)が床から均一になるようにこのツールを使って測り、ピンで仮縫いをする。 台にはめ込まれた赤いフェルトは針山ということになる。
この写真に見えている物差しの最長が20インチ(50センチ) というと、ちょうど膝が隠れる長さだろうか。 1900年代初期の女性は男性に膝を見せるなどという 「はしたない」 ことはしなかったのである。

僕のクイズ史上で最小の解答者数となった3人の中で、正解はふたり。
lightseeker さんと Endless さん。
3人目の解答者で 「お裁縫の道具」 と当たり障りのない解答をしたムーさんは勉強不足ということで不正解とした。
さて当選者は、パンパカパ~ン (ファンファーレのつもり) 二人だけなので念を入れてサイコロの3度振りをした結果…

lightseeker さんに決定。

lightseeker さん、おめでとう。
住所氏名を非公開コメントにして送ってください。
お好きな写真を指定することを忘れないように。
数日経ってもご返事のない場合は棄権とみなして次の方を選びます。


ところで余談になるけど、このスカート・マーカーなるものを発明して特許を取ったのは、1940年代に僕の住む町であるデイトンに存在した Orco という製作所らしい。 製品の正式名は "PIN-IT Skirt Marker" となっていてこれは70年後の現在でも骨董品として Amazon や E-Bay に出ている。 20ドルも出せば手に入るようだけど、僕が見たこの店ではこんな値段表が付いていた。


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それから YouTube で見つけたこの動画は上の製品よりずっとあと50年代に他社が売りだしたものらしい。







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モノクロの世界へ

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陰影礼賛


久しぶりにモノクロの世界へ入ってみると、どういうわけかほっとする。
それはまるで、自分のまわりの色彩に満ちた現実世界が実はマヤカシの世界に過ぎず、それはいつか必ず滅びるだろう頼りなくてあやふやな存在であるのにくらべて、白と黒とグレーのモノクロの世界には100年前も100年先も変わらずにそこに存在する 「確かなもの」 ―― 恒久といってもいいような世界があった。

ふだん見慣れたリビングルームのフロアスタンドも、モノクロのフィルターを通して見ると、裏に隠されて今まで気づくことのなかった新鮮な美しさを表してくれる。





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二つのカップ


毎日1度は必ず飲むエスプレッソ。 それ用のデミカップを普通のコーヒーカップにうっかり入れたらそのまま取れなくなってしまった。 湯で温めたり冷蔵庫に入れて冷やしたり、いろいろやってみたけどどうしても出てこない。 これは破壊するよりほかに方法はないのだろうか? もしそうするとすればどちらのカップを助けるか? これは難しい問題だ。
それも忍びなく、といって捨てるのもなんとなく気が進ます、仕方なしにそのまま放ってある。 さいわいデミカップは違う形と色のものをほかに数個持っているから、エスプレッソが飲めなくなったわけではないんだけれど、この角を落とした正方形のやつを1番気に入っていたのに…





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本棚


本というものはその数が増えることはあっても減ることはない。 日常手に取ることはまずないのに、家の中のかなりの場所を占めているのは理屈に合わないと思いながらそのままになっている。 何度か処分しようと試みたが、そのたびにこれは取って置きたい、これはいつかまた読むだろう、この本には思い出がある、と結局また本棚のもとに場所へ収まってしまう。 古い本ほど特にそうだ。 





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楽譜


先日地下室で、長いあいだ開けられることもなく積まれていた段ボールの箱を開けてみたら、むかしボストンで音楽学生をやっていた頃の教材やピアノ楽譜やノートブックなどがごっそりと出てきた。 その中には自分の作曲編曲した譜面がかなり混じっている。 そのページをめくりながら僕は、昔の恋人に40年後に出会ってしまった時のような懐かしさと切なさを感じていた。
この写真の鉛筆書きのスコアは "Why am I treated so bad?" (俺ってなんでこんなひどい目にあわされるんだ?) のタイトルでジャズオーケストラ用に書いたもので、教師だったフィル・ウィルソンのバンドで最初に演奏された時のあの興奮をはっきりと思い出していた。 僕の耳に、重厚なハーモニーをバックにソロを取るフィルのトロンボーンが聞こえている。


モノクロの世界への旅は一種の現実逃避なのかもしれない。 酒やドラッグがそうであるように…









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3月のクイズ

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???


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???


久しぶりに Antique Village へ行ってみる。
この巨大な骨董品のモールは以前に 『アメリカの女たち』 で紹介した。 あの時もそうだったようにここへ来る時はなにかテーマをあらかじめ決めてから来ないとただ漫然と歩き回るだけになってしまい、結局なにを見たのかわからなくなってしまう。 「アメリカの女たち」 のあと 「動物」 のテーマで挑戦した時には、この動物の数が何しろものすごくて結局そのあと2度も来てしまった。

そこで今日のテーマは 「珍しいもの」 と決めてある。
300以上もある小さなショップを一つ一つ丹念に見て回るわけだけど、珍しいものは思ったよりも数が少ないということに気がつく。 これなら半日で全部のショップを回りきれるだろうと、いつものように店内に流れる60年代のオールディーズに耳を傾けながらゆっくり探訪を続ける。 そしてそのうちに目についたのがこれである。

ブリキ製の台に長さ30センチほどの物差しが垂直に立てられて、台の上面には赤いフェルトが貼ってある。 物差しに沿ってメタル製の簡単なメカニズムがスライドするようにできていて、それはネジで物差し上に固定することができる。 メカニズムの突起した部分は開閉できるから、それを押してやると物差しの上でカチッとはまるようになっている。 かつて1度も目にしたことのない何かのツールみたいだけど、これはいったい何なのだろう?

普通のショップなら店主に訊けば簡単にわかるだけじゃなくてその使い方まで教えてくれるのだろうけど、このモールには個々の店主というものが存在しないのだ。 付いている価格表を見ると、そこにツールの名称が書かれていたので、何に使うものかはおぼろげに理解できたのだが、それでもどうやって使用するのかなどまったくわからなかった。

さてこれは何のツールでしょう?


正解の中から抽選で1名を選んで、僕のブログ上のどれでもお好きな写真を差しあげます。 
締め切りは今日から1週間。
答えは非公開コメントにして下さい





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あーあ、また浮気をしてしまった

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姉妹


また僕の浮気が始まってしまった。

2年前に不二子に出会って後先も考えず、がむしゃらに自分のものにしてしまった時に、もう浮気はこれが最後だと決心をし、女房にもそう宣言して、なんとか今まで二人の女のあいだでうまくやってきたのに。
今また 「ふじよ」 とこうなってしまった。
われながら悪い病気なんだと知りながら、つくづく男であることの哀しみを噛みしめる。
この2年、若い不二子の身体に溺れながら、なんとはなしに物足りなさを感じ始めていた時にふじよが現れた。 ふじよは不二子のずっと年上の姉でしかも子持ちの人妻である。 華奢で小さくて抱きしめると折れてしまいそうな若い不二子と違って、ふじよの身体は円熟して大きく、柔らかな肉の奥には思いがけない強さがあった。 少々手荒く扱ってもむしろそれを喜び、逆にこちらに挑戦してくるほど頑強で、そして貪欲だった。 か細い不二子なら 「もっと優しくして」 と懇願するのに…


実はこのふじよ(Fuji X-Pro1) には以前から惹かれていたがどうしても手が出せなかった。 とくに必要があるわけでもなかったからこれ以上欲しがるのは贅沢だと自分を抑えていたのである。 女房(Nikon D7000) と不二子(Fuji X100s) がいればそれでもう十分じゃないか。
ところがこの1月、Fuji X-Pro2 という新人が登場したそのとたん、古顔となった X-Pro1 の値打ちが半額まで下がった時に、これはもう手に入れるしかないな、と決心してしまう。

送られてきた X-Pro1 を手にした時の感触や、この数日間片時もそばを離さず使ってみた印象は冒頭に書いた通りである。
前から持っている X100s とこの X-Pro1 は姉妹機ということになっているが、カメラ操作やそのファームウェアは類似しているというより同じものと言っていい。 だからほとんどの操作に慣れるのにまったく時間がかからない。
違いといえばもちろん、X100s は固定レンズ、X-Pro1 の方は交換レンズを受け付ける。 今回カメラといっしょに購入した 35mm F1.4 と 18mm F2.0 はフルフレームでは 53mm と 27mm だから、これと X100s の 23mm F2.0(35mm) とがあれば僕の撮る写真の90%はこの2台のフジで事足りることになる。 長いあいだ女房役を努めてくれたニコンは望遠と超広角に限られてしまうから、出番がますます少なくなだろうし、ニコンの重量を嫌うようになってきている僕は旅行などに持って出ることはもうほとんどないような気がする。
そうだ。 春になったら二人の女を連れて蜜月旅行へ出かけよう。 古女房は家に置いて行けばいい。

ところでこのフジの、35mm F1.4 が実に素晴らしいレンズだと大発見したんだけど、それを書くのはまた後日としよう。

あーあ、また浮気をしてしまった。
いつになれば自分のこの悪癖が修まるのやら…




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