過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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2016年04月28日

2016/04/28  夢一夜

夢一夜

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 アーチ、噴水、石畳
Seguret, France



このところ毎晩のように夢を見る。
以前よく見た夢のように刹那的で筋の通らない夢とちがって、近頃の夢は一つの話に定着してちゃんと物語になっている。 目が覚めたあとでも実際にその物語を経験したような生々しい現実感があり、あらためてその話を最初から克明に反芻することができた。 まるで自分が違う世界へ行って違う人生の一部を生きたあと、またこの現実へ呼び戻されたような奇妙な気分である。
おかげで最近は眠りにつくたびに、今夜はどんな世界へ連れて行かれるのだろうと楽しみにするようにさえなった。 こんなことは今までになかったことだ。
それというのはたぶん、掛かりつけの医者に最近なかなか寝つかれないとこぼしたら、処方してくれた軽い睡眠薬を服用し始めたせいのようだ。


ゆうべはこんな夢を見た。
僕はあの南フランスの山の上の小さな村、セギュレの石畳の路を歩いていた。
ひとりではない。
ふたりの連れがいてそのふたりはもう何年も連れ添った夫婦のようだった。 その見知らぬふたりを、この村へはもう2度も来たことのある僕が案内しているというわけでもなく、むしろふたりの後について曲がりくねった細い路を登っていた。





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村の夕暮



このふたりと僕は友人でも知り合いでもないのに、どうも奇妙な関係にあるようだった。 男はがっしりとした大きな体をしていてほとんど口をきかない。 細身の女の方は時々男に話しかけたり振り返って僕がちゃんとそこにいるのを確かめたりするのだが、そんな時、僕を見る女の眼が何かを訴えるかのように妙に熱っぽい。 おや、この女、俺に惚れてるのかなと思わせるような色っぽい微笑を見せたりする。
女は自分の好みのタイプではないし、そばにいる亭主らしい男はなかなか恐そうだ。 にもかかわらず、この触れなば落ちん風情の女にこれ以上誘われたら拒むことができるだろうか。 と思いながら僕は女のくびれた腰から視線を外して遠くの山脈にかかる雲を見ている。





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教会


山上の小さな教会に辿り着く。
何百年とそこに建っている教会のドアは重く、男と僕とが二人がかりで押してようやく中へ入ることができた。 うしろから入って来る女が僕の背中へそっと手のひらを当てるのを感じた。
燭台が幾つか灯されただけの薄暗い教会の中で、やがて男と女が抱き合ってダンスを始める。 音楽はない。
そのすぐ傍にぼんやりと立っている僕を、がっしりとした男の肩越しに女がじっと見つめている。 そしてこちらへまっすぐ手を延べてきた。 僕はその手を握りながら、ああこの女とは寝ることになるな、とはっきりした予感に襲われる。 それは嬉しいというよりはどちらかと言うと 「困った…」 という気持ちに近かったようだ。
僕は女の汗ばった手の平を離すとそのまま教会の外に出た。 石だらけのゆるい坂道をひとりで下りて行った。




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石の坂道



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