過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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2016年11月12日

アメリカのいびつなデモクラシー

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マリリンのブロンズ像
Downtown Dayton, Ohio



大統領選挙の結果に世界中が衝撃を受けている中で、どうしても納得がいかないという気持ちが僕の内部でくすぶり始めて、それが次第に怒りへと変わっている。
その怒りは、僕が毛嫌いしていた男が大統領になってしまったことへではなくて、その男を選んだアメリカのいびつなデモクラシーへ対して向けられている。 アメリカの国民が選んだ男ならいかに嫌な奴でもしかたが無い。それに従うのが民主主義の原理だとは僕にもよくわかっている。 それなら諦めがつく。 ところがこのトランプという男、アメリカ国民が選んだ男ではないからである。 下の数字を見て欲しい。

ヒラリー・クリントンの投票獲得数 60,339,165
ドナルド・トランプの投票獲得数  59,988,438

圧倒的な大差ではないとはいえクリントンに投票した国民の方が多かったのは歴然とした事実なのだ。
僕らが子供の頃から叩きこまれてきた素朴単純な民主主義の原理に習うなら、クリントンが大統領になるべきだったのだ。 それがそうはいかず、世界中の人々をショックに打ちのめしたのは、アメリカの選挙制度で決められたエレクトラル・カレッジ (electoral college) と呼ばれるバカげた選挙法以外の何物でもない。
エレクトラル・カレッジとは簡単に言うと、各州ごとに一定のポイントが設定されていて、その州で最多数の投票を得た候補者がポイントを全部獲得する。 両候補への投票数が大差であれ小差であれ関係ない。 勝ちは勝ち、負けは負け。 というわけだ。 その結果今回の選挙ではこんな数字が出てしまった。

トランプ  290
クリントン 228
 
ところが僕にまったく納得がいかないのはこの各州のポイントの設定であった。
たとえば例を挙げれば

ワイオミング州(人口 580,000) エレクトラル・カレッジ → 3点
ノースダコタ州 (757,000)   エレクトラル・カレッジ → 3点
サウスダコタ州 (858,000)   エレクトラル・カレッジ → 3点
カリフォルニア州 (39,000,000) エレクトラル・カレッジ → 55点

州人口に比例してポイント数が設定されたとなっているが実はそうでもないところが実に杜撰(ずさん)と言わなければならない。 なぜならもしワイオミングに3点を与えるなら、その67倍の人口を有するカリフォルニアのエレクトラル・カレッジの点数は55点どころか200点以上になってもよいはずだ。 (そしてこのカリフォルニア州ではクリントンが60%対30%で大勝している)

だいたいこのエレクトラル・カレッジそのものが大昔の遺物で、1700年代にマディスンとハミルトンの二人の政治家によって設立された。 黒人の奴隷はもちろん白人女性にも選挙権がなく、地所を所有する裕福な白人男性だけが参政していた時代の話である。 このエレクトラル・カレッジの制度はその後たびたび改定されたとはいえ、全国民が平等に選挙権を持つ現代、こんな旧弊な不完全なシステムにいまだに固執するアメリカという国が理解できないのは僕だけではなく、国民の直接投票で代表を決めるヨーロッパの国々からも大きな疑問が投げかけられている。 もちろんアメリカ国内でも同じで、今回の大統領選挙後にあらためて論争の的(まと)になりそうだ。 いやすでになっている。
なぜ国民の直接投票で決めないのか?
そうであるべきだと僕は信じている。 国民にしてみても自分の1票が直接そのまま結果にひびくと思えば、今よりもっと積極的に投票に参加するのはまちがいなく、選挙に関心の薄い貧困層をはじめ全体の投票率もずっと上がるはずだ。

そういえば、かつて2000年のアル・ゴア(民主党)対ジョージ・ブッシュ(共和党)の大統領戦でも同じことが起こったのを思い出す。
エレクトラル・カレッジの点数でブッシュが小差で勝って大統領となったが、国民の投票数ではゴア候補がブッシュを上回っていた。
今回の選挙とまったく同じだ。


世界でも民主義国家の代表と自他共に認めているアメリカが、こんなわけのわからない反民主主義的なやり方で大統領を選ぶのは、実に不思議で不可解なことだと僕は思っている。 このことをアメリカは世界に恥ずべきである。

それにしても
あーあ、これからの4年間が思いやられる。 
むしゃくしゃするから酒だ酒だ!






 
   

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