過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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2016年12月

聖母子像

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キャサリンとマックス (2016)







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マリアとイエス (1658)
フランシスコ・デ・ズーバラン (スペイン)






このクリスマスの5日前、12月20日に姪のキャサリンに男の子が生まれた。
多勢の親族が集まって賑やかなクリスマスパーティが進行するその片隅で、ひっそりと生後5日目の赤ん坊に乳を与えるキャサリンを目にした時、はてどこかでよく見たことのある図だと思った。

そうだ…
これはかつてヨーローッパのいたる所の寺院で目にしたあの聖母子像そのものだった。
自分の分身である乳児を項(うなじ)を垂れて見つめる母親の表情の、はっとするような優しさと慈愛深さが僕の胸を打つ。 これから先何十年と続いていく母と子の関係にはさまざまの紆余曲折が待っているに違いないが、今この瞬間ここにあるのは、まだ年月の汚れにも人生の醜さにも染まらない、清らかで純粋な愛情そのもののように思える。

美しいと思った。





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パノラマの世界へ (補足)

昨日のブログにパノラマ写真を載せたあと、どうも後味が悪い。
あの2枚の写真、ブログの枠にそのサイズを制約されるから、あれではまるで下着のゴムバンドみたいに細長いミニチュア画像になってしまい、パノラマ本来の壮大さが感じられない。 そこで今日の補足となった。

このサイズになって初めて画面右端に見える僕のアパートの建物の詳細や、左端の遠方にデイトン美術館が見えてきた。 川の中央に浮いているような軍艦型のコンクリートは何だと思う? これは夏の花火大会で花火を打ち上げる基地なのだ。

次の2枚の写真、首を傾げすぎて痛めないように祈っています。
もっとも携帯電話でなら横長で見られるわけだけどね。


それでは皆さん


Merry Christmas !











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パノラマの世界へ

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アパートの裏を流れるマイアミ川
画角 180° レンズ 27mm



最近はどういう風の吹き回しなのか、パノラマ写真に没頭している。
それというのはたぶん、以前のぎっちりと家々が並ぶ住宅街から今の住居に引っ越してきて、いきなり広々ととした風景に周りを取り囲まれることになったせいのようだ。 僕の持っている2台のフジのカメラには両方ともパノラマ機能が付いているのに、今まであまり気にしなかったというか、その必要を感じなかったというか、本気で挑戦してみたことはなかった。 それがつい最近になって試しに数枚の写真を撮ってみて即座に、うん、これは使える、と思った。 これが実に憎い機能なのだ。

もともと僕が持っていたパノラマ写真の概念は、別々に撮影した数枚の写真をフォトショップなどを使ってスティッチ(繋ぎ合わせ)してやるというのが常識だった。 これがなかなかうまくいかない。 しかも各写真の繋ぎ目を完璧にするためには、まず三脚を使うという必須条件があるから、ふだんでも旅行でも三脚を持ち歩かない僕はまずそれで失格となる。 それでも旅先では失敗を覚悟で手持ちで撮影をしたことがある。 南フランスのカマルグ平野に立った時とか、マルセーユではノートルダム寺院の丘の上で。 ヴェネツィアでもそうだったしバルセロナのランブラス通りの大混雑の中でもパノラマを頭に置いて写真を撮った。 しかしどれも満足のいく結果とはならなかった。 フォトショップで時間をかけて繋ぎ合わせるのだが、手持ちで撮影した数枚の写真を完璧にスティッチするのは不可能に近いことを発見してからは、いつのまにかパノラマを敬遠するようになっていた。


それがこのフジのパノラマ機構ではいとも簡単に易易とできてしまう。

1. まず画角を180度と120度のどちらかを選ぶ。
2. 手持ちのままぐるりとカメラをスィープするその起点を右にするか左にするかを指示してやる。
3. 露出を決めてシャッターを切る。(ボタンを押し続ける必要なし)

あとは、パシャパシャと連続してシャッターが切れる音を聞きながらカメラを動かしてやればよい。
このカメラを動かす速度というのがちょっとクセモノで、早すぎても遅すぎても途中で〈撮影失敗〉の表示が出てくるが、数回の練習ですぐにコツがのみこめる。 そしてあとは自動的に合成されて完璧にスティッチされた画像が出てくる。 素晴らしいじゃないか!


 
 
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川沿いの散歩道
画角 180° レンズ 27mm



こうしてできあがった合成写真は、当然ながら画像の横の長さが 8000 ピクスル、ファイル容量が90 MBとわりと大きなファイルになる。 ブログのような小さな画面で見てはその圧倒感が伝わってこないのは残念だ。 これからはこのパノラマ機能をどんどん使うだろうという予感がする。






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アメリカの切手

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もう来週はクリスマスでそのあとは新年、とふだんまったく忙しくない僕でさえ何となく慌ただしくて落ち着かないこの頃。
毎日のようにクリスマスカードが到着する。 去る8月に引っ越したことは知人友人に洩れなく全員に通知したわけじゃないから、前の住所に宛てて出されて新住所に回されて来た郵便物がけっこう多い。 引越し前にちゃんとそれぞれ住所変更を届けた郵便局、銀行、保険会社、医療関係、年金の役所、などはすでに数カ月前から新しい住所に必要な刊行物が来ている中で、かんじんのF銀行だけがいまだに古い住所へ送っているのに気がついて先日わざわざ電話で苦情を言ったら、なぜか住所変更がされていませんでした、これからはもうだいじょうぶですと言う。 そうしてつい昨日、F銀行から住所変更を完了しましたという通知が届いた。 よく見るとその封書はなんと古い住所へ送られたものが新住所へ回されて来ていた。 住所変更を完了しましたという通知を古い住所へ送るなんてまるでジョークじゃないか、やれやれこれがアメリカか、と可笑しいのと腹が立つのが半々だったが、ことが銀行だから放っておく訳にはいかない。 また最初からやり直しである。

そんな杜撰なアメリカの銀行はともかく、アメリカの郵便局はUSPS(The United States Postal Service)の略称で呼ばれる、連邦政府とは別個の政府機関で全米で60万人の被雇用者を抱える大企業だが、そんな巨大な組織なのにもかかわらずけっこうちゃんと運営されてるんだなあ、と今回の引っ越しで改めて感心した。 引越し後の新住所にはスタンプを押された郵便がきちんと回送されてくるし、その中にはあれほど多かったどうでもいいジャンクメールがいっさい入っていないのは嬉しい。

アメリカの郵便事情は他国と比べてもかなり良いんじゃないかなと思うけど、どうだろうか?
近隣の住所なら2日目には配達されているし、カリフォルニアなど遠方に手紙や小包を送っても数日で確実に着く。 もっともクリスマスと年末が近いこの時期には、もっと日にちがかかるようだけれど。 思い返してみても途中で紛失してしまったという事故が何十年とここに住んでいて1度もない。 そのかわり日本やヨーロッパへ向けて送ったものが、アメリカを離れたとたんどこかに消えてしまったという経験なら、今年は1度、去年は2度もあった。 最近のファーストクラスの郵便には無料の追跡機能が加わったけど、これは陸を離れて他国へ渡ってしまうと追跡は不可能となる。 ある時など、日本国内で失われてしまった大判の封書(中身は台紙付きの写真)は3か月後にボロボロになって宛先に配達されたということもあった。

ようやく話が切手のことになる。
アメリカの切手は業務用の普通切手は別にして、一般人が郵便局で買い求めるのはすべて日本で言う記念切手のようなものだ。 切手をください、とカウンターで言うと、1枚だけを買う場合は別として4枚とか12枚とか20枚とかのシートで購入すると眼の前に華やかな色合いやさまざまのデザインの数種類ものサンプルが出てくる。 買いに行く度に新しいデザインのものが出てくるのも楽しい。 現在は封書用の切手は封書の重量が1オンス(28.35g)以内なら1枚47セントで買うことができるが、大抵の人が買う切手は値段の書かれていない、上の写真のようないわゆる 「永久切手」 というやつである。 この永久切手は10年ほど前に考案された。 それ以前は毎年のように切手の値段が上がる度にその分の1セントや2セントの切手を別に購入して封書に貼り付けなければならなかったその煩雑さを、永久切手が解消した。 つまり、その時点の切手価格で永久切手を購入しておけば、その後は切手の価格が上がろうと古い切手をそのまま貼ってやればいい。 5年前に買った42セントの永久切符を持っている人は、47セントまで値段が上がった現在でもそれがそのまま使えるのである。 これは便利だ。

それと、アメリカの切手は日本の切手にくらべて概して鮮やかな多色刷りでデザインも細部のディテールに凝っている。 印刷費には日本の切手よりも金がかかってるように思えるがどうなのだろう? 








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クイズの結果は…

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ポテト ライサー



正解は 「マッシュポテトを作るツール」。

名称としては日本の主婦連はポテトマッシャー、アメリカ在住の2人の主婦はポテトライサー、と答えたがもちろん名称にはこだわらない。 だけどこのマッシャー(masher)とライサー(ricer)とは意外と区別がはっきりしてることを学んだ。


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ライサー


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マッシャー


つまり、ricer の rice(米)という語には 〈米粒状にする〉 という動詞があるところからこの名称は来たものと考えられる。 現代ではフードプロセッサーでマッシュポテトを作ってしまうらしいが、やはり手動のライサーやマッシャーで作ったほうがずっとおいしいのは、レストランであのねっとりと餅のように潰され過ぎたやつを食してみるとその違いは判然とする。

正解の7人の中から抽選で選ばれたラッキーな人はキャットラヴァーさん。

キャットラヴァーさん、おめでとう。
住所氏名を非公開コメントにして送ってください。
お好きな写真を指定することを忘れないように。
数日経ってもご返事のない場合は棄権とみなして次の方を選びます。



余談になるけれど…

アメリカでクルマ愛好家の間で使われる俗語というか隠語というか、ricer という語があるのは僕も前から知っていた。 改造しやすいホンダやスバルに排気音を大きくするパイプを付けたり後部に魚のヒレのようなピラーを付けたり、車体をレースカーみたいに派手に塗装したり、つまりパーフォーマンスとは直接関係のない見てくれだけの改造を施したクルマ(のオーナー?)をライサーと軽蔑を込めて呼んでいる。 これは racer をもじって ricer と呼んだのか、そのほとんどが日本製の車なので日本の米を連想して名付けられたのか、そのへんは僕にも不明である。







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久々のクイズ

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クリスマスがすぐそこまで来ている。
そこでクリスマスギフトを兼ねての久しぶりのクイズは易しいものにしよう。

アンティークの店で見かけたこのツールは何だろう?

正解の中から抽選で1名を選んで、僕のブログ上のどれでもお好きな写真を差しあげます。 
締め切りは今日から1週間。
答えは非公開コメントにして下さい








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恋をするマヤ

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マヤとアール 




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後ろ姿のマヤとアール





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マヤと叔父夫婦






娘のマヤに恋人ができたらしい。
長いあいだ男を寄せつけなかったこの子が、今年の8月にシンシナティでの甥の結婚式に出席した時に、ピッツバーグからボーイフレンドを連れてくると予告した。 珍しいことだ。 過去に付き合っていた男性をこんな形で両親に紹介したことは今までなかったからだ。 第一、身内の結婚式に同伴すること自体が、この子にとって彼が友達以上の意味を持つことは明らかなように思えた。 仕事場の同僚というわけではなく仕事を通して知り合ったというこの青年の名はアールといった。 フェイスブックで彼の優しそうな髭面の顔を見て、われわれ両親は理由もなくほっとする。

8月といえば僕らは新しい住居に引っ越したばかりで、まだ家具類も置くべき場所に納まらず部屋中に箱が積まれている中に、とりあえず寝る場所だけを確保していたような状態だった。
そんな乱雑な住まいに、ピッツバーグから5時間をかけて車を駆ってきたマヤとアールが姿を現す。
こちらの眼をまっすぐに見てミスター付で僕の名を呼ぶアールに、僕のことはトシオと呼び捨てにしてくれればいい、と言いながら握手をする。 彼のしっかりと固い握手に好感を覚える。
すでに到着していた息子の太郎を交えてとりとめのない会話が始まったが、初対面のぎこちなさをまったく感じさせないアールの雰囲気に女房はその場で好感を抱いたようなのは、彼女の饒舌さからも読み取れる。 マヤよりも二つ年下だというアールと同年輩の太郎とはその場で気が合ってしまったようだった。 父親の僕はといえば、彼が常にマヤに対して見せる優しい気づかいに好感を持ちながら、いやまだまだ騙されんぞという意地悪な意識を拭い去ることができないでいる。
夜更けまで飲んで食べて話をしたあと、僕らのアパートからはほんの2ブロックのところにあるグランドホテルに宿を取った二人は帰って行った。 酔っ払った太郎はもうソファで眠っている。
「いいひとよねえ。 大好きよ。 あのふたり完璧なカップルだわ」 とベタ褒めムードの女房に、僕は何となく同意をしたくなくて
「うん、だけどちょっと調子よくてしゃべり過ぎるんじゃないか」 などと言ってみるが、その反抗はいかにも弱々しく響いたのに自分でも気がついていた。


その翌日。
結婚式のあるシンシナティは僕の住むデイトンの町からは車で1時間足らずの距離である。
5人を乗せた車の中では次から次へと話が弾んでいる。 といっても運転に専念する僕と、いつものように口数の少ないマヤは時々口をはさむだけで、女房、太郎、アールの3人の会話のもっぱら聞き役だった。 その会話を聞いていて、この30数年を真っ直ぐな人生を送ってきた訳ではないらしいアールの人柄が次第に浮かび上がってくる。 彼の見かけの優しさの裏に、太い芯が通っていることを認めないわけにはいかなかった。


式のあとの披露宴。
どっとバーに押し寄せる人の群れに気を削がれて、名札の置かれたテーブルにポツンと座っている僕の眼の前にそっとマテニーが置かれた。 アールが自分のドリンクよりも先に僕にマテニーを持ってきてくれたのだ。 うーんなかなか憎いことをする、と僕はうなってしまった。 そういえば、昨夜自宅で僕がマテニーをすすっているのを見て 「ジンですか? それともウォッカ?」 と彼が訊いたのを思い出す。 それにしても憎いことをする奴だ。   


披露宴を終えてまたまた車でデイトンのわが家まで帰ってきたのは夜中を過ぎていたが、そこでまた飲み直すことになった。
煙草を吸いに外に出ようとした僕に、アールが自分も行くといっていっしょに裏の川辺りに出る。 彼も喫煙者だとわかって何となく嬉しい。 建物の裏側が公園か何かだと思っていたらしい彼は、いきなり目の前に広がる大きな川を見て子供のように驚き、喜んだ。

男同士の会話は自然とマヤが話題となった。
マヤを知れば知るほどご両親がいかに良い育て方をされたのかがよくわかります、と当の両親にとっては最大級の賛辞が彼の口から出るのを聞いて、僕は年甲斐もなく嬉しくなる。 彼の言い方にお世辞とは思えない誠実さを感じたからである。 そこで僕が
「いや、正直に言うと母親はともかく、僕が子供達に良い父親だったという自信はまったく無いんだよね。むしろ世間並みには父親として落第だったと思ってる。」 と正直に本心を告白する。
「いえ、それはないと思います。 彼女がお父さんのことを話す時、言葉の端々に尊敬とか畏敬といった感じがいつも出てる。」 と彼は驚くようなことを言う。 そこで僕は言った。
「うちの子供達は息子が母親似、娘は父親の僕に性格が近いような気が長い間してきたんだけど、こんなことを言うと本人のマヤは不本意かもしれない。」
するとアールは微笑して言った。  
「実は彼女も同じことを僕に言ったことがあります。」 これも驚きだった。 こんな会話は家族同士でもやったことがなかったからである。 アールという男が媒体になってくれたお陰で、知らなかったマヤの一面が覗けたことが僕にはとても嬉しかった。

川面を渡ってくる生暖かい真夏の風に、ふたりで2本目の煙草の煙を吹き出しながらの短い会話の最後に、アールが言った。
「マヤのことは安心してください。 過去にあったいろいろなことは全部聞いているけど、もう誰にも彼女を悲しませるようなことはさせません。 約束します。」
とまたまた実に憎いことをいう。 この男、女を口説くのと同じくらいに親を口説くのがうまい、そう思いながらも僕はすでに彼を信頼してもいいという気持ちになっていた。



あれから3か月半、ふだんマヤと僕とのあいだにはメールも電話もほとんど無いのは前と変わらないが、母親とはけっこう交信しているようだ。
今夜女房が言った。
「マヤは以前とくらべて見違えるように元気になってる。 電話の声に張りがあるし、メールの文面もすごく明るいしね。 サンクスギビングはパーティにも行かずふたりだけでひっそり過ごしたみたいよ。 私は以前のようにあれこれ心配する必要がなくなって、うんと楽になった。」


以前の悲しいマヤのことは数年前に 『娘への手紙』 に書いている。





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