過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

Profile

September30

Author:September30

Visitors Counter

Search form

・・・なる古城のほとり、雲白く遊子かなしむ

T06pro568-blognew.jpg

Les Barroux, France Ⅰ



View Larger Map

プロヴァンスに滞在した3週間に、車を駆ってほとんど無計画にあちこちを訪れた。 その旅ではまだナヴィゲーターを持っていなかったから、ベースキャンプに選んだ村 Vaison la Romaine を毎朝地図を手にして出発しても、運転をしながら地図を見ることがすぐに面倒になってしまって、そのあとはただやみくもに走った。 車に装備されたコンパスで東西南北がようやく判別できるだけだった。

その日はすばらしい天候だった。 まるで吸い込まれそうに空が青く、その青の中に、雲が水彩絵の具の白を一筆でさっとなぞったように浮いていた。 僕は車を南へ南へと走らせる。 そのうち地中海に落っこちてしまうかもしれないと思いながら。
やがてその空の下に、小高い山の上の古城が遠方にはっきりと姿を現した。 街道わきに標識がでてきて、それが "Les Barroux” という名の村らしいとわかる。


T06pro577-blognew.jpg

Les Barroux, France Ⅱ


山頂に着いてみるとそれは思ったよりも大きな城で、公開されているのは一部だけだったが、きちんと手入れされていてよく管理が行き届いているのがわかる。 受付では主婦らしい初老の女性と、彼女の孫くらいの年の青年が、きちんと中世の衣装を着けて親切に応対してくれた。 周りに住む農家の人たちが代わり番にボランティアとしてここに詰めているらしい。 驚いたことにちゃんと音声ガイドまで借りられるようになっていた。 ここを訪れる観光者はけっこうあるのにちがいない。


T06pro569-blognew.jpg

Les Barroux, France Ⅲ


音声ガイドによれば、この城は12世紀に、まわりのサラセンやイタリアからの侵入に対抗するための要塞として建てられらたらしいが、それから現在までの900年のあいだ、ここにただ悠然と平和に聳(そび)えていたわけではない。 ずっと現代に近くなってからフランス革命では破損されたり、世界大戦ではドイツ軍がこの城を焼いている。 そのたびに篤志家によってていねいに修復されてきた。 「開かずの間」 はその修復がいまだに続いているらしい。
城内は家具や装飾品などをごちゃごちゃと展示しないで、ところどころに小物がそっと置いてあるだけなのが、かえって中世の人々の質素できびしい生活を偲ばせる。


T06pro571-blognew.jpg

Les Barroux, France Ⅳ


城の上から見下ろすと、すぐ真下に小さな村落があるだけで、あとはどちらを見まわしても美しい自然に囲まれている。 もし僕が絵描きだとか物書きならこんなところに暮らせば良い仕事ができるだろうなあ、と思う。 毎日のようにここまで登ってきて空と山と平野を眺め、退屈すれば周りにある何十という町や村を車で訪ねればいいし、40キロ南西に位置するアヴィニョンまで足をのばせば都市の生活を味わうこともできる。 そしてそこから汽車に乗ればパリまでは2時間半である。

にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ
スポンサーサイト

コメント:

*

プロヴァンスはあちこちブラブラして、のんびり回りましたが、私はオークル一色の町(ルシヨン)で買ったラヴェンダーの蜂蜜の味が忘れられないです。
ルシヨン自体は少々観光地化されて、町を歩いている人々は外国人ばかりでしたが、みんなが通り過ぎる目立たないこじんまりとした食品店で”今年収穫したラヴェンダーの蜂蜜あります”の張り紙を目ざとく見つけ、速攻で買いました。
農業が盛んな国はいいですね、本当に。
2011/01/25 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* この街の

なんとも言えないクリーム色の写真がいいですね。sptember30さんが撮った写真だからでしょうか?私もいつか訪れてみたいです。
今日久しぶりにリヨンの知り合いのおじちゃんからメールが来て、次の光の祭りにおいでよと言われました。中世の町並みに蠟燭がともるのが何とも幻想的で大好きなのです。
やっぱフランスいいですよね〜〜。
2011/01/25 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: No title

Micio さん、南へ南へと旅をした私は北のリヨンとかルシヨンにも行ってみたいと思いながらついにチャンスがなかったのです。そのかわり、スペインの国境へ向かってSeteとかMontepellierまで行きました。途中で寄ったカマルグは茫々とした平野でヨーロッパ一の米作地帯でした。野生の白馬が棲息していて・・・
農業の盛んな国はいいです。本当にいいと思います
2011/01/25 [September30URL #- 

* Re: この街の

inei-reisan さん、
それでそのすてきなリヨンの光の祭りには行くのですか?
私の限られた経験で、人間味ではイタリア、風景ではフランスというかなり偏見的で独断的な見方をしてしまっているのですが、ドイツはどうなのでしょう?
ぜひ、inei-reisan さんの感想を聞きたいですね。
2011/01/25 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

今年の夏はこのあたりか南イタリアに行ってみようと思ってます。

人の少ないところにいたい、でもあまり山奥も嫌、こういうのを隠棲とは言わず、半隠というそうです。まあいいとこどりです。理想の生活ともいえます。
2011/01/25 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

*

あてのない旅とこんな出会い、すてきですね。

いつも、決まった目的地に行って、時間も限られているからやりたいこと、見たいものもある程度調べて・・・という旅ばかり。こういう旅もしてみたいとあこがれつつ、臆病なのと、時間を言い訳にしてなかなかできません。
2011/01/25 [FumieURL #- 

* ドイツは

比べてみると、音という気がします、音楽しかり、機械の音も、ビアガーデンの笑い声や、いろいろな音が印象的です。
2011/01/26 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、半陰は大賛成です。(笑)
何事にも「中庸」が大切、と説いたのはほかならぬ上海狂人さんのお国のひとでしょう。
2011/01/26 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

Fumie さん、あてのない旅はすてきですが時々失敗します。
あとで調べてみて、「えっ、近くまで行っていながらあそこを見逃した!」とかよくあるんですよ。
貴重な時間だからやはり準備は必要だと痛感します。

2011/01/26 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: ドイツは

inei-reisan さん、「音」ですか、なるほど・・・
そういえば村上春樹さんの旅行記「遠い太鼓」 でしたか、知らない土地に行くと他の何よりもまず 「音」 が先に脳に入る、というようなことを書かれていましたね。

2011/01/26 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

トラックバック:

>>>> http://blog1942.blog132.fc2.com/tb.php/104-16e871da
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)