過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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豪雨のあと

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二つの絵
Dayton Art Institute


明け方から凄い雨だった。 集中豪雨というやつだ。
今朝起きると、時々水の出る我が家のベースメントは、おかげで今までにないほどの浸水となり、2センチほどの深さの池になっていた。 建てられてから100年近く経つレンガ造りの古い家だから仕方がない。 水が出た時のために片隅の排水溝に小さなポンプが備えてあり、溝の中の水位が一定の高さまで上がると、ポンプが自動的に作動するようになっていた。 そのポンプが今日は動いてないのだろう、と思った僕は裸足になるとジーンズの裾をまくって (僕は長靴を持たない) 水の中へと入って行った。 ランドリーのマシーンの裏側へ回り込んで排水溝を見ると、ポンプは水面下に沈みながら、感心にも懸命に喘ぎながらちゃんとやるべきことをやっていた。 つまり、今日の雨量は彼が対処できる能力をはるかに超えているわけである。

そこで僕は考えた。 いったん雨が止んでしまえば、溜まった水は忠実で勤勉なポンプ君が時間をかけてでも最後の一滴まで汲み取ってくれるだろう。 しかし午前10時の現在、雨はまだまだ凄い勢いで降っている。 池と化している地下室の水位がもし4センチを越えると、その水は一段高くなっている物置部屋のドアに達してしまうのだ。 物置部屋には濡れては困る紙類や家具などがぎゅうぎゅうに詰められていた。 これはもう、うかうかとしてはおれない。 僕はわが家で一番大きなゴミ用のポリバケツを持ち出すと、そのバケツに水差しを使って水を汲み取るという作業を始めた。 そこまでは我が Green Eyes も手伝ってくれるが、そこから先は男の仕事だった。 水を満たしたバケツを両手で持ち上げると、急な階段を上って一階に出る。 キッチンを通り抜けて裏のドアからドシャ降りの裏庭へ出ると、その庭を10メートルほど横切り、裏木戸を抜けて出たところの傾斜したドライブウェイに水を廃棄する。 (庭に水を捨てると、その水はまた地下室に流れ込むから)。

この廃水ルートは決して楽ではなかった。 僕は20回も繰り返しただろうか。 そうするうちに僕はくたびれてきて、バケツの水が半分のところで運ばないともう持ち上げる事もできなくなってしまった。 それをまた何十回と繰り返す。 僕はまるで服を着たまま太平洋を泳いで渡ったようにずぶ濡れだった。 寒い日ではなかったから良かったのだ。 地下室の水位はずっと2センチに保たれているということは、この重労働が功を奏しているわけである。
僕はこの作業を、短い休憩を何度も取りながら2時間も続けただろうか。 雨がようやく小降りになってやがて完全に止んでしまうまで。

熱いシャワーを浴びたあと、くたくたに疲れきった僕は2時間ほどぐっすりと眠った。 まるで半年分のエクササイズを一挙にやり終えたあとのような気分である。 腕と腿(もも) にモリモリと筋肉が付き、お腹が何センチか引っ込んだような錯覚がして、肉体的な充足感さえあった。
目を覚ましたあと遅いランチを取ると、「そうだ、今日の午後は久しぶりに美術館に行ってみよう」 と思っていた。 実は、数日前に届いた新しい16ミリの超広角レンズをまだ試していなかったからである。

そのあと、美術館から戻ってまず地下室に降りてみると、嬉しい事に水は完全に引いていた。 黒く濡れたセメントの床は水に洗われて前よりもずっときれいになっていた。 共に奮闘したポンプ君は今はひっそりと音も立てず、静かな休息を取っている。


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コメント:

* お疲れさまでした

Septemberさんの日常が垣間見えたことと
お茶目でテンポのよい文章が面白くて
本当は笑いごとではないのですが
ポンプ君とSeptemberさんの奮闘物語、楽しく拝見しました。

それにしても物置部屋を守ることができてよかったですね。
お水の汲み出し、お疲れさまでした。

ちょっと運動しただけで
私も筋肉がついて痩せたような気になります☆
2011/05/08 [tony] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: お疲れさまでした

tonyさん、無精者でふだん何もしない私でも、こうしていやおうなしに挑戦される事が時にはあるのですよ。
でも、もうたくさんです。
2011/05/09 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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