過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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遅れて来た女

bostonbw0011-blognew.jpg

直線と曲線
Boylston Street, Boston, Massachusetts USA 1979


この写真のデリカテッセン "The Cutting Board" は僕の仕事場からすぐのところにあって、最近開けたばかりのちょっと洒落た店だった。 僕はここでその時、ランチデートに誘われた女性を待っていた。 そう、デートに誘ったのではなくて誘われたのである。 その女性というのは、僕の仕事場のすぐ向かいにあったレストランでホステスとして働いていた。 そのころの僕は仕事が終わったあと毎日のようにそのレストランへ顔を出すと、 バーに一人で座って酒を飲んで飯を食べるのを日課にしていて、そうしているうちに彼女と話を交わすようになっていたのである。 聞いてみると、もともと売れないイラストの仕事をしていた時にたまたまこのレストランのメニューをデザインしたのがきっかけとなって、そのままホステスとしてパートで働くことになったらしい。
彼女はアメリカ人の女の子にしては性格がずっとおとなしく、すべてに控えめで口数も少なかった。 その彼女から休みの日にランチに誘われた時にはちょっと驚いた。 気軽に男をデートに誘うようなタイプには見えなかったからである。 しかしかえってそれで僕は彼女の勇気を良しと思って、逆に好意を感じてしまったようだった。

その彼女が待ち合わせの時間が来ても現われない。 15分が過ぎ、30分が過ぎても現われなかった。 それまで店の中で待っていた僕はいったん外に出ると、どうしたものかと考えた。 人を誘っておきながら、と気分を害するよりも、そんな人だったのか、という失望感の方が大きかったようだ。 若い時は気が短くてプライドの高かった僕だから、普通ならさっさと帰ってしまったに違いないのに、なぜか僕はその時入り口の曲がり階段に腰を下ろすと、それからさらに30分も待ってしまったのである。

約束の時間からきっかりと1時間過ぎたところで彼女がその細い姿を現す。 嬉しそうにニッコリと笑う彼女の口からは 「ごめんなさい」 も遅れた言い訳も出てこなかった。 そしてあとになって分かったのは、彼女は約束の時間を1時間まちがえていたのである。

その彼女というのが現在の僕の妻、Green Eyes なのだが、僕があの時待たないであの場所を離れていたら、どうなっていたのだろう、と考える時がある。 二人の子供、マヤと太郎との出合いも無かったし、アメリカに何十年も居ついてしまうことも無かったろう。 (僕はその時ブラジルに渡る準備をそれとなく進めていた)。
今頃僕はいったい地球上の何処で何をしていたのだろう?
それは運命の神様にしか分からない。

ところで、我が Green Eyes は僕との最初のデートの時間を取り違えてしまうぐらいだから、時間というものを完全に超越して生きることのできる稀な種類の人間だということが、あとになって分かった。 彼女は "The Cutting Borad“ で僕に会ってから現在までに、約束の時間をまちがえたり、まちがえなっくても遅れたり、あるいはまったく約束を忘れてしまったりした回数は、3659回にもなる。



あなたの運命を決定するのは
チャンス(機会)ではなくて
チョイス(選択)なんですよ
Jean Nidetch


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コメント:

*

わはは、すみません。つい最後の数字で笑ってしまいました。たくさん、たくさんなんですね(^^)
約束の時間に現れず「ありゃまぁ」と思ったら、その女性が奥様だったとは、今度は「お〜っ!」でした。人の縁というのは不思議なものですね。
2011/06/01 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さんから見れば笑い事かもしれませんが、当の私の身にもなってみてください。 (涙)
実は今日も・・・
明日親類の葬式に行くのですが、教会でミサが始まるのが10時半だと彼女がいうのです。たまたま私が電話で義弟と話していたら、ミサは9時半だったのですよ。
すんでのところで、彼女は3660回目の過ちを犯すところでした。
2011/06/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* はじめまして♪

ごく最近になって訪問させていただいています。久しぶりにおもしろいブログと出会えた気分でウキウキです。特に「モナとその周辺」を・・・。
奥様だったんですね~。3659回もスケジュールを間違えられたとはすごいですが、そうやって奥様なりのChoiceで人生をドラマにされてこられたんですね~。だって、奥様が時間通りに現れたとしてSeptember30さんはその後も同じ展開だったとおもわれますか?
2011/06/02 [Sally] URL #- 

* わあ。

そんなに回数が多いのですか?ほぼ毎週な感じなのでしょうか?
最後の言葉結構好きです。

最近の私は自分から選択していくように心がけてます。
2011/06/02 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: はじめまして♪

Sallyさん、はじめまして。
彼女が時間通りに現れたとしたらたぶんその後の展開には変わりがなかったかもしれません。
ただ、現れなかったことで私のchoiceをテストしたのかも知れません。無意識のうちに。
2011/06/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: わあ。

inei-reisanさん、ほぼ毎週です。おかげでスリルに満ちた毎日を過ごしています。
次には何が起こるかまったく予想がつかないという生活をもう永い間続けているのですよ。
2011/06/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Green eyes

今回の話は非常に興味深く、September さんが実は私と同じようなことを毎日のように感じていることを驚きと共に嬉しく感じました。Green eyes は実に私の相棒に似ている。かなり超越したところなどがそっくりで、お互い大変な毎日ですねえ。しかし、やりますね、Green eyes、 September さんをデートに誘うなんて!
2011/06/03 [yspringmindURL #UOM.WK7I [編集] 

*

そんなSEPTEMBERさんは今も相手の出方をうまく待っている。そんなフリのできる男性になっているんですね。
消極的に見える男性は内面は燃え盛っている生き物なのでしょうが火をつけられるのを待機できる男性は長く相手とつきあっているそんなものなのでしょうね。
2011/06/03 [kp] URL #- 

* Re: Green eyes

yspringmindさん、そうですか、ご主人に似ていますか。自分はもともと決してきちんとした性格ではないのに、相棒が自分よりひどいからしかたなく責任を持たされているのでしょう。そうしないと悲劇ですから。
2011/06/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

kpさん、消極的になってしまうのは自分に自信がないからです。それと、"No" と言われたときに傷つく自分を知っているからでしょう。
2011/06/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* お久しぶりです。

この記事に対するコメントが大幅に遅れてすみません。

話はズレますが、奥様がワインを飲みながらカメラ(の向こうのSeptember氏)を見ている写真を観て
まさしく、”おんなの目”だなあ。と思いました。
女性が愛する男性に向ける官能的な眼差し。

時間を間違えることなど些細なことに思えるくらいに、この美しい目にヤラれてしまったのではないでしょうか。September氏。

しかし、愛って不思議なものですね。
なーんつって。
2011/06/11 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: お久しぶりです。

micioさん、お久しぶり。
そんな素敵なことを言われると、私は年甲斐もなくほんのりと頬を紅く染めてもじもじしてしまうのです。(笑)
それにしてもあのころの私は今はどこに行ってしまったのでしょう。
2011/06/13 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

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