過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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ヌードに関する極端に私的な考察

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モナとモナ
South End, Boston, Massachusetts USA


最近はあいかわらず膨大な量の古いネガを漁って、今まで見落としていた画像をスキャンする、という作業を続けている。 以前に何度かくり返した作業だが、今回はひょっとしたら最後になるかもしれない、という気がする。 これは、年齢的に自分にはもう先が無いというようなこともあると思うけれど、それよりも、写真というものに対する自分の姿勢がなんとなく固定してきたように感じている最近、今回選ばない画像はもう再びピックアップする事はないだろうという、一種の自信のようなものが自分に備わってきたのかも知れない。

そんな中で一連のモナの写真に行き当たった。
彼女の事は以前に 『モナとその周辺』 に書いている。 30代の一時期、僕に一番近かった女性がモナだった。 彼女は僕の恋人でありモデルでもあった。 モナが衣服を脱いだあとの、あのたぐい稀に美しい黒い肢体を映像に残したい、という強い欲望に僕は逆らうことができなかった。 女性のヌードなるものを撮影したのは、あとにも先にもこの時だけである。 しかしあのころ無数に撮ったモナの裸像は、何十年を経た現在になって見てみると、美術館に飾られたブロンズの裸像のように固い殻をかぶっていて、僕の肌が覚えているあの柔らかい感触や興奮はもうどこにもなかった。 それはまるで夏が過ぎ去ったあとの蝉の脱け殻を見ているような、淡い哀しみを僕にもたらす。

この世で一番美しいものは女性の裸像だと僕はいつも思っていたし、現在でもそう思っている。 しかし女の肉体というものは、絵や写真などにして他人とシェアできる種類のものではなくて、生きものとして現実に自分の手や身体で触れてその不可思議な存在を確認し、賞賛し、耽溺するものではなかろうか。 少なくとも僕にとってはそうだと思う。 それは二人だけの秘密の世界であり、愛する女の美しさは、他人に見せるにはあまりにも私的でありすぎた。

写真にはいろいろな分野があるけれど、どうもヌードだけは僕には向いていない、という事をいつも無意識に知っていたような気がする。




男とはただの精神に過ぎない。
どんな顔をしていようとどんな姿をしていようと、誰が気にしようか?
しかし男にとって女の肉体は女そのものなのだ。
ああ、愛する女よ。そばにいてくれ。そしてどこにも行ってしまわないでくれ。
かの賢人も言っているではないか。
「触れることのできない女は、死んだ女も同然だ」
Ambrose Bierce




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コメント:

*

本当に稀なる美しさとは記録に残すことすら、畏怖に神々しく感じてしまうのでしょうか?
2011/05/27 [kp] URL #- 

* Re: No title

kpさん、その通りです。どんな巨匠が描いた絵でも本物の風景以上に美しくはならない、それと同じでしょうね。
2011/05/27 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

美しさは表現するより耽溺していたほうが幸せです。
2011/05/29 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

*

日本の若者の間で私的写真と言うのが流行っているようです。レンズ付きフィルムからの延長で単に友人達と写真を撮り合うだけでなく、それとアートとして見出す人々が多いそうです。グループ展や個展でもそんなのばかり。

ところがこれが面白いもので、私的過ぎたら誰も共感しない、これに気付いていない人が多い。September30さんも上で書かれている通り、まさに他人とシェアできる種類のものではないんですよね。

これは私的写真の先駆者であるアラーキーも同じ事を言っていたようです。ある種の距離感、緊張感がないと写真は駄目、そんな意味合いなのかもしれません。

変なたとえですが、買い猫をどんなに可愛く撮っても、野良猫写真には敵わない、それと類似している気がします。


2011/05/29 [BigDaddyURL #X.Av9vec [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、そして、耽溺できる美しさをいつになっても見つけることができる人もまた幸せです。
2011/05/30 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

BigDaddyさん、これは大変興味深い主題ですね。すべて芸術と名のつくのもは、美術であれ音楽であれ文学であれ、多かれ少なかれ作者の私的表現には違いないでしょう。それじゃあ、私的表現をすればそれがそのまま芸術になるか、というとそれは違うと思うのです。
芸術論は私は苦手なのですが、可愛い猫と野良猫のたとえはよく理解できる事ですね。
2011/05/30 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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