過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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カマルグの白い馬  (4/4)

120707

母親と子供たち
Saint Maries de la Mer


そして、昨日とくらべると嘘のような快晴となった。  
僕らはカフェテリアに集まるとクロワッサンとジャムとカフェ・オレとフルーツの朝食をゆっくりと取ったあと、稲田荘を引き払った。 それから昨夜の Stes Maries de la Mer にもう1度帰って町を歩き回ることにした。 この町は古い巡礼のメッカだったらしいが、近代になってからはヘミングェイとピカソの名が浮かんでくる。 二人ともこの町を愛してここに住んだ事があった。 そうだ、それからあの 『銀の手』 もこの近くに生まれ住んだジプシーだった。

今日はわれわれ一行はこのあとさらに西へ移動することになっていた。 目的地は、パチさんが今回希望した唯一の場所、詩人であり偉大な知識人だったあのポール・ヴァレリーの墓がある Sete である。 今日は僕が車のハンドルを握る事になっていたが、カマルグを離れる前に、地中海をまだ見た事がない、というパチクリ夫妻のために町の最南端まで行ってみることにした。




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地中海


ここがヨーロッパ大陸の南の果てだ。 この海のかなたはアフリカなのである。 それにしてもなんというブルー! 空には雲ひとつない。 海の色が遠くではっきりと二色に分かれているのはきっと潮の関係にちがいない。 このあと、これも海沿いの町セッテまではずっと地中海沿いにドライブをすることになるので、海は常に見えつ隠れつしながら視界に入っていたが、この時ほど水に近寄れたことはなった。

われわれは再び車に乗り込むと、行き交う車のまったくない平原の野道を幹線のルートまで引き返した。 気温は快適で紺碧(こんぺき)の空が頭上にあったが風は強く、その風は潮の香りを含んでいた。 その時、ちょっとした事件が持ちあがった。 パチさんが小用を催したというので、僕は車を道端に停めた。 あたりは背の低い潅木類が地面に這っているなだらかな丘の中腹である。 パチさんが車を降りていったあとしばらくして、何気なく外を見たY子さんがいきなり驚愕の表情を露(あら)わにして大声で喚(わめ)いた。
「パチクリ!!  だめ、だめよ。 馬鹿! 向こうを向いて! 向こうを向いてしなさい!」
見ると、車の後方で彼はこちらを向いて気持ち良さそうに悠々と放尿をしている。 その彼のすぐ背後まで1頭の白馬が寄ってきて、首をかしげて彼の姿を眺めていた。 車内が一瞬、悲鳴と爆笑で沸きかえる中で、僕はすかさず証拠写真をばっちりとものにしていた。 
車に帰ってきてY子さんに散々叱られながら、もぐもぐと言い訳をしようとするパチさんに僕は男同士として助け舟を出す。
「Y子。 お前さんは男の身体を知らないな。 この強い風の中で向こうを向けば、パチクリは全身びしょ濡れだよ。 彼としては選択の余地はなかったんだ。 もっとも女性ならその心配はないだろうけどね」

このチン事はいまだに時々話しに上る。 僕の撮った証拠写真はもちろん公開される事はなかった。 (終)



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コメント:

*

白いお馬さんに、ひっかからなくて良かったですね。馬は人を見抜くので(私はバカにされて、後ろを向いたときに肩を噛まれそうになったことがあります。)、パチ氏は温厚な人柄だとわかったのでしょう。
ところで私は昔、シルクロードのゴビ砂漠のだだっ広い平原で用を足したことがあります。
地平線のほうまで走りました。(それでも、丸見えなのに)
2011/05/17 [micio] URL #- 

*

オチがそう来るとは!
とても素敵な旅行記でした。私も、そんな旅がしてみたいです。
2011/05/17 [わに] URL #- 

* 笑

なんだか楽しい旅仲間でしたね。ワインの回し飲みで苦笑し、最後で爆笑してしまいました。。
車でのんびりする旅なんて今の私には贅沢な話ですが、あのフランスや、ここドイツで運転をするというのも恐怖を感じるのです。
2011/05/17 [inei-reisan] URL #rayiHRxo [編集] 

* Re: No title

micioさん、広大なゴビ砂漠の中の白い点描はさぞかし美しい風景だったでしょう。(笑)
2011/05/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

わにさん、一人旅もよいものですが、気の合った人たちとの旅ほど楽しいものはありませんよね。
2011/05/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 笑

inei-reisanさん、好きなところで停まり好きなだけ時間の取れる車の旅は、私の一番好きな旅のスタイルです。とりわけヨーロッパのように簡単に隣の国へ行けるのは、アメリカに住む私たちには夢のようですね。
2011/05/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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