過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

Profile

September30

Author:September30

Visitors Counter

Search form

日本人と英語 (2/2)

T01milan30-blognew.jpg

日傘の日本人
Milan, Italy


前回に続いて、日本人の英語がアメリカで通じないという話。

2. RとL の使い分け。 SとTHの使い分け。
日本人にとってはRは問題ないようだ。 日本語の 「らりるれろ」 と違って舌が上顎の奥にくっ付くことはないからいわゆる巻き舌にならないのだけれど、たとえ巻き舌になってしまっても英語としてちゃんと通じる。 ロシア人の話す英語など日本人以上にべらんめえ口調になっている。
問題はLである。 舌先をすぼめて前に伸ばして、上顎の歯茎に当てて発音するなんて日本語にはないからだ。 light(光)とright(右)はカナで書けば両方ともライトだからちゃんと区別して発音をしないと会話がおかしくなってしまう。 long(長い)とwrong(誤った)もそうだしliver(肝臓)とriver(川)も同じ。 そのためには英語のスペルを知っていなければならないから話しは厄介になる。 『リズム アンド ブルース』  のブルースは英語では blues(ブルーズと語尾が濁る) なんだけど、アメリカに来たてのころの僕はミュジシャンとしてしょっちゅう使ったこの言葉を純日本式に Bruce と人名のように発音するのでバンド全体が混乱してしまった。
ただ僕の経験では、上の例のように頭にRやLがくる時とか、単語自体が短い場合は別として、長い単語の中ほどに出てくるRとLは、少々取り違えて発音をしても何とか通じてしまうことが多いようだ。

SとTHも同様で、Sはわれわれにはまったく問題ないのに、舌先を上下の歯のあいだに突き出して発音するTHは、難しくはないけどつい横着になってしまう。 だから "I think"(われ思うに)が "I sink"(われ沈む)になってしまうのだ。 song(歌)と thong(女性下着)とか sin(罪)と thin(薄い)とか、"thank you"(ありがとう)と "sank you"(お前さんを沈めちゃった)とか・・・
THの発音で日本人への僕のアドバイスは、恥ずかしがらないで舌を歯の間からうーんと外に突き出すこと。 アメリカ人を見ていると舌の半分近くは外に出ている。
そしてこれも長い単語の途中なら間違えてもたいていは許してもらえて相手はわかってくれる。 語の綴りがSやTHで始まる時に気を使えばいいのである。

3. アクセント
これは単語のどの部分が強く発音されるか、ということ。
言葉の発音さえ正しければアクセントが少々ズレてもたいした問題じゃないのでは、と思っている人がいれば、その人は実に大きな間違いを犯している。
たとえば僕の好きなビールにメキシコ産のコロナ(Corona)というのがある。 このビールをレストランやバーで頼む時に、日本式にロナと頭にアクセントを付けて言ってごらん。 そんなものは無いと言われるのは絶対に間違いがない。 これは賭けてもいい。 それをコナと言い直すととたんに相手はニッコリする。 同じような例は挙げれば限り無いほど多数にある。
日本人はつい、インディアナ州の州都をインディアナリスと言ってしまうが、これが絶対通じないのは不思議なくらいである。 これはインディアポリス。 おなじみのマクドナルドはマクドルドではなくてマクナルドだし、ヒステックはヒスリックとなる。
日本にいて英語を勉強する日本人には、アクセントの問題は他の何よりも難しいかもしれない。 丹念に英和辞典を見るようにするしか方法は無いだろう。

***

以上そんなに簡単ではないことをかなり簡単に書いてしまった。でも日本人がなかなか英語がうまくなれない本当の理由は他にあるような気がする。 概して日本人は知性があり過ぎるのだ。 なまじっか大学まで行って英語を勉強したばかりに、(間違ったら恥ずかしい) とか (笑われたくない) などと余計な気を使ってつい言葉も少なくなってしまうようだ。 僕の友人のお母さんは中学以上の教育は無くて永年大阪でお好み焼き屋をやっていた。 根っから陽気な性格で人と話をするのが何よりも好きだった。 それがひょんなことから60歳を過ぎてから店をたたんで息子夫婦のいるアメリカへ来てしまった。 まわりをアメリカ人に囲まれて、耳からだけ学ぶメチャメチャな英語を物怖じせずに話すうちに彼女はどんどんと英語がうまくなっていった。 彼女にとっては英文法などというものは存在しなかった。 現在完了形も三人称単数形も間接話法も二重否定も関係代名詞も関係ない。 LとRもまったく区別が無い。 アクセントって何?   という調子である。  それでいて彼女はまわりのアメリカ人たちと立派にコミュニケートをしている。 100%のコミュニケーションではなくて多分60%だろう。 あとの40%はコミュニケートしたいといういじらしい情熱以外の何者でもない。 そしてその情熱を相手のアメリカ人はちゃんと感じ取って、敬意を払ってくれるのである。
ある時シーフードのレストランで彼女が 「おしたし」 を注文した。 僕は一瞬あわててしまった。 そしてそれがすんなりとウェイターに通じた時に僕の人生観が変わってしまった。
「おしたし」 は oysters(牡蠣)のことだった。



にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ
スポンサーサイト

コメント:

*

今回もとても楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます。

わたしの記憶では、アイスクリームのバニラが通じなかったことを覚えています。
ニラではなく、バラでした(笑)
2011/07/01 [fumie] URL #LGP0CJfA [編集] 

* Re: No title

fumieさん、私もヴァニラではまったく同じ経験があります。それからアイスクリームで思い出したのは、ストロベリー (strawberry) ってけっこう難しいのですよね。日本語のままで発音するとまず通じない。それが、前述の友人のお母さんは何の支障も無くいつもすんなりと通じていました。
彼女は 「七郎兵衛」 と言っていたのです。
2011/07/01 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

スウェーデン人と仕事をしていたのですが、彼らはチェックをシェイクと言うので、”シェイクって、何を振るのだろう?”ととまどったことがあります。あと、Jを発音しないのでジャパンがヤパンになり、ケンジさんはケンニさんになってしまうのです。ちなみにサムライの綴りはSamuraji。
それを聞いていたイギリス人が、”スウェーデン人の英語は分かりづらいよ。”とボヤいていました。
それぞれの国の訛りがあるのだなあと思いました。
2011/07/01 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

*

滝Waterfall=綿降る(わたふる) のようなものですね。
語学はやはり環境ですね。
英語は中学生レベルのままですが、ほとんどできないドイツ語でも耳で覚えたので、こちらが言うことが通じなかったことはあまりないです。ただし返されるとわからないのが難点です。
Septemberさんに英語を教わろうかなあ。

ちなみにワタシはいわゆるマンダリン(北京官話)が一番美しい言葉だと思っております。聞いていて気持ち良いのはイタリア語ですね。
2011/07/01 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

*

大阪のおばちゃん、すごいですね!

わたしも神戸のおば(あ)ちゃんですが、彼女みたいにブロークン英語を 機会があれば 恥ずかしがらないで 使いたいです。

この記事でなんだか勇気が出ました(^u^)
2011/07/02 [okko] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: No title

micioさん、そのイギリス人のいわゆるBritish English も米語との発音の違いで戸惑うこともありますね。
アイルランドの映画なんか見ていると、時々まったく聞き取れないことがあります。
2011/07/02 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、耳に響く美しさという点では、中国語は私のリストの3番目に来ます。2番目はイタリア語。
残念ながら日本語はリストに入っていません。
2011/07/02 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

okkoさん、今の日本では英語を使える機会はその気になればいくらでもあるのではないのですか?
教養も知性もすべて捨てて、積極的にアプローチしましょう。相手もきっと大喜びですよ。
2011/07/02 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

面白い話を有難う。私のイタリア語は多分大阪のお好み焼きやのおばさんと同じでしょう。学校には行きませんでしたから家で自己流に勉強したのをベースに生活環境から耳から入る言葉、目に飛び込んできる新聞の文字、テレビや映画が教科書であり先生でした。言葉は相手とコミュニケートする為の道具。黙っていたら先に進みません。なーんて偉そうなことを言ってみました。
2011/07/02 [yspringmindURL #UOM.WK7I [編集] 

* Re: No title

yspringmindさんの性格を知る私から見るとうなづけるコメントです。
ところでふと思ったのは、yspringmindさんは今ではもう英語を話すことはほとんど無いのかな、ということです。
確か最初のころはご主人との会話も英語だったと言っていた記憶があります。
2011/07/02 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

人生の半分以上をドイツで暮らし、お金も時間もたっぷりかけて学んだドイツ語が
最近はどうも「大阪のおばちゃん」化してきてちょっとヤバイです。

ドイツで知っている日本人は結構の数になりますが
例えば Berlin Köln München を綺麗に発音できる人をあまり知りません。
それに R の発音はオーストリアや南ドイツと私の住むあたりではかなり違いますしね。
方言も混じると、夫でもケルン辺りの地元の人同士の話は難しいというくらい。

しっかりスペリングを頭に入れていないと
今日は schwül と言うつもりが schwul になってしまってよけいに汗をかいたりしてしまいます。
ちなみに Berlin の市長さんは schwul で先日のパレードでも行進に加わっておられました。

このテーマは2/2 でお終いのなのですか?
2011/07/03 [のほほん] URL #- 

* Re: No title

のほほんさん、私も人生の半分以上をアメリカで暮らしてきたのですが、お金も時間もまったくかけないで学んだ英語が最近ちょっとおかしくなってきた、というのは妻の意見です。このところ日本語にどっぷりとはまり込んでしまって、日本語を書いたり話したりする時間が急激に増えてきたせいです。

schwül と schwul の区別は辞書を見て初めて知ったわけですが、アメリカではつい数日前にニューヨーク州でゲイ・レズビアン同士の結婚が法的に認められるという歴史的なニュースがありました。

『英語と日本語』 のテーマはまた違う形でたびたび書くことになると思います。
2011/07/04 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

トラックバック:

>>>> http://blog1942.blog132.fc2.com/tb.php/216-22b47e44
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)