過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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ワンダーランドへ-倉吉 (1/2)

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玉川沿い Ⅰ


三朝で僕が「日本」を食べて満足した明くる日は、すぐ隣り町の倉吉へちょっと寄って、それから米子へ帰ることになった。 ところが倉吉の旧市街で車を停めて歩きはじめたとたん、僕は初めて訪れるこの町にすっかり魅了されてしまった。 まるで人気のない森の中で着物姿の麗人に出くわしたように。 結局僕らは午後の大半をこの街を歩き回って過ごす事になった。
倉吉は白壁の土蔵群に沿って水路が巡らされた美しい小さな町だった。 商店の一軒一軒に古い歴史が感じられる。 昭和の、明治大正の、中には江戸時代から続く商家もあった。 旧街道沿いに二軒の靴屋が向かい合って実在しているのに驚いた。 どこの町でもデパートに客をとられてとっくに無くなってしまった商売である。 


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玉川沿い Ⅱ


旧市街は驚くほどきちんと整備されていて、隅々まで住民の(あるいは市の) こまやかな配慮が行き届いているのが分かる。 目に入るものすべてが昔のままに (あるいは昔よりも綺麗に) 保たれているので、一瞬映画のセットの中を歩いているような非現実感を覚える。 無数の鯉たちが泳ぐ玉川の水は澄んで勢いよく流れていた。 それを見ながら、僕は自分が育った米子の町を思い出していた。 同じ城下町でありながら、あそこの掘割はいつも暗い水が澱(よど)んでいたという記憶がある。
アメリカやヨーロッパで偉大なる大河を見慣れた僕の目には、玉川は川と呼ぶにはあまりにもか細い。 そして優しい。 そうか、こういうのを小川と呼ぶんだ、と変な発見に納得する。 最後に小川を見たのは思い出せないくらい昔の事だった。



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玉川沿い Ⅲ


この周りには幾つもの寺社があって、僕らはその一つ一つをゆっくりと訪ねる。 散歩をするのにちょうど良い距離である。 路上で行き交うのはほとんどがバスで乗り付ける観光客で、ここに住む人達はひっそりと家の中で暮らしているような気配があった。 
江戸から明治にかけて建てられた建築群は、時代を超えて生き延びてきたたくましさを内に秘めながら、ことさら観光客に媚びる事をしない。 僕はほっとするような居心地の良さを感じていた。 アメリカに帰って来たあとで今度の目くるめくような日本の旅を思い起こす中で、この静謐な倉吉の町で過ごした半日は、まるで時間の割れ目からスリップアウトしてアリスの不思議の国へ迷い込んだような気がする。
あの町はほんとうに存在するのだろうか?

(続)

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コメント:

* 倉吉

おはようございます。
きれいな町ですねぇ!最初の写真を見たとき、岡山の白壁の町かと思いました。
川に鯉が泳いでいて・・・・
素敵な町を見せてくれてありがとう!
2011/11/06 [マコURL #- 

*

掃き清められているのに人の気配がない。
都会で育った私には、いっそのことシュールです。
お正月みたいな感じがします。


2011/11/06 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: 倉吉

マコさん、こんにちは。
この町は旧市街と新市街が分かれているところはヨーロッパの古い町と似ています。
またいつかぜひ行ってみたい場所のひとつになりました。
2011/11/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、あ、そういえば、元旦の朝外に出ると人通りもなく、人々が綺麗に掃除して騒音の消えた町並みが、まるで違う場所のように感じたのを思い出しました。子供の頃のことです。
2011/11/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 懐かしいです

母の実家が鳥取だったので、一回家族旅行をしたことがあります。
倉吉もたしか見て回りましたが、街のきれいさとか、そんなものを見れる小学生ではなく、ただ母が懐かしそうに自分の生まれた家を見せて回って、うらの蔵がねーって言っていた顔だけ覚えています。
それから朝鮮から帰ってきた祖父が借金を抱えてしまって家族みんなで東京に引っ越してしまい、鳥取とは疎遠になってしまったそうで、たぶんあのころの母は当時のごたごたも思い出していたのかなあと今は思います。
2011/11/06 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* 倉吉

september さん、こんばんは。
倉吉って、いつも素通りしていた。こんなに素敵だったとは! 一番目の写真を見た時、最初かつて訪れた益田市の山奥、山口との県境にある津和野かと思った。あそこにも江戸を思わす古い町並みがあった。
倉吉は今度必ず途中下車しなければならない。鳥取でもこんな素晴らしい街衢の記憶はないから、この県で最高の町並みということになるに違いない。
我々のバンドでヴァイヴを叩いていた山田の故郷でもある。
2011/11/06 [pescecrudo] URL #j9tLw1Y2 [編集] 

* Re: 懐かしいです

inei-reisanさんも鳥取に関係が無くはなかったんですね。いつか1度帰ってみてもいいでしょう。 「感傷旅行」 というのは私は好きです。
2011/11/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 倉吉

ペさん、こんにちは。
倉吉は鳥取や米子ほど町として大きくないから統制しやすいのでしょうね。 距離的にもちょうど先ほどの両市の中間にあるし、格好なオアシスとしてユニークな存在になると思います。

ヴぁイブの山田さんはたしか立教でしたね。 かまぼこ型の建物の中でバンドの練習をしました。

2011/11/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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