過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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ワンダーランドへ-倉吉 (2/2)

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凧工房


凧屋というのは見るのが初めてだった。 この倉吉の旧市街にいかにもふさわしい商売だ。 中に入って見ると、表に凧を並べているけれどその奥はカフェになっていてお茶を飲んだり名物の蕎麦を食べたりできるようになっていた。 凧だけで商売になるとは思えないのでそれで安心をする。 明らかにアーティストのオリジナルとわかるさまざまの形と色をした凧を眺めていると、御主人が現れてそこで話が始まった。 もともとは米子の出身だと言う。 彼の中学の話が出たので思い切って訊いてみた。 僕の父は昔その中学校に勤めていたのである。 すると彼は僕の父をよく覚えていて、教室で習字を習ったそうだった。 半世紀も昔の知らなかった父の生活の一面を、知らない町で知らない人から聞くのは、糸が切れて飛び去って行った凧が、舞い戻ってきて再び糸に繋がったような不思議な気がしていた。



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白壁倶楽部


明治時代の国立第三銀行倉吉支店が、ほとんど手を加えることなくそのまま洒落たレストラン・カフェになっている。
表(おもて)に表示されたメニューを読むと、今週の白壁ランチは

かぼちゃコロッケ
エビとイカのゆず風味
ナスと甘長とうがらしのアマチリマヨネーズ焼き

上の三つをたっぷりと一皿に盛って1,180円で限定20食だという。 三朝で優雅な朝食を摂った我々はまだ腹が減っていないので残念ながら見送るしかない。 それでもがらがらと音をたてて左右に開くドアを抜けて店に入って行ったのは、コーヒーを渇望していただけではなくて中を見たかったからだった。



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レストランの内部はなるほど銀行だった。 二階の手すりや電話室もそのままである。マスターが出てきてちゃんと保存されている裏の金庫室や二階の重役室に案内してくれる。 重役室の壁には古い柱時計が掛かっていた。 時計は現在の時刻を示していて、時はここでも止まってはいない事を思い出させられる。 店に流れている音楽はマイルス・デヴィスの “Kind of Blue” で僕は嬉しくなってにこにこしてしまう。 石臼で挽くというコーヒーを飲みながら思った。 もし僕がこの町に住んでいたら、ここにはしょっちゅう来るんだろうなあと。
店にはちゃんとピアノも置いてあって週末には音楽のライブをやるそうだ。 この町の、この店の雰囲気の中で僕が聞きたい音楽は何だろうか、と考える。 ジャズも悪くない。 だけどバロックもいいかもしれない。 でもやっぱりジャズかな。 それじゃいっそのこと両方をとって 《スウィングル・シンガーズ》 ならどうだろう。 田舎にしては少し洗練され過ぎているこの小さな町に、バッハの清涼なフーガが流れる。 まるで白壁土蔵に沿う玉川の流れのように・・・




(終)

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コメント:

* ワンダーランド

PCのサイドバーのニューヨーク時間が一時間遅くなりました。
そちらは夏時間が終わったんですね。半日と二時間違い。
こんなに遠い地球の向こうとこちらで、仲良くコミニュケーションできる不思議!
それにしても、倉吉は素敵なワンダーランドですね。
Septemberさんのブログを読むと、誰もが行きたくなってしまいそう!
この美しい町並みが観光客で溢れない事を祈ります。
でも、私もいつか行こぅーっと!
2011/11/07 [みん] URL #6moyDOY6 [編集] 

* Re: ワンダーランド

みんさん、アメリカでは夏時間が8ヶ月、冬時間が4ヶ月、これは第2次世界大戦時のエネルギー削減政策の名残を今でもそのまま引きずっているのです。

倉吉の町は、われわれのように外から訪ねるだけなら、すばらしいところをエンジョイすればよいのでしょうが、いざそこで暮らすとなるとどうなのでしょう? 米子よりずっと旧弊な人情の町だと聞いています。
2011/11/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

こんにちは。
倉吉は本当に美しい町ですね。写真を見ただけでも、うっとりします。

私は白壁倶楽部にはChet Bakerが似合うかもしれないと思いました。
2011/11/07 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micioさん、こんにちは。
こんな美しい町が日本にはまだたくさん残っているのでしょうね。 いつか白い車にカメラ機材とパソコンと音楽のCDを積み込んで、北海道から沖縄まで気ままな旅をしてみたいです。泊まるのは古い旅籠やです。
2011/11/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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