過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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人生いろいろ-紀州にて (1/2)

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円月島
紀伊 白浜


僕が関西空港から日本に入ることを知った大学の昔の仲間が十人、北は岩手から南は福岡までが紀伊白浜に集まってくれて、期せずして十二年ぶりの同期会となった。 同期会といっても我々はクラスメートというわけではなく、いっしょにジャズバンドをやった連中だった。 学年は同じだったけれども大学の専攻はまちまちだったから、それだけ違った色合いの若者が集まっていた。 東京の学生バンドの中では僕らのバンドはトップランクに置かれていたから、クラブとしては大所帯で、それだけに毎日の練習は厳しく、春夏の休暇には長期の演奏旅行があって日本中を回った。 そんな生活を通して、僕らはただの同期生というにははるかに強い繋がりで結びついていたようだ。 十三人のうち今回参加できなかったのは、新潟のSとハワイに住むYの二人だけだった。

今回、和歌山へやって来た僕はこの地域は初めてだと思っていたら、四十年以上前にすぐ隣町の田辺市に演奏旅行に来たことがあると皆に聞かされた。 そう言われてみると、僕の遠い記憶の中ではこれも演奏旅行で行った高知の桂浜の風景と、この白浜の記憶がいつの間にかごっちゃに混ざってしまっているようだった。 完全に忘れていたことをこうやって思い出させられるのは、失くしたと思っていたものを思いがけず屋根裏部屋の箱の底に見つけた時のような嬉しさがあった。

その夜、白浜の旅館でゆっくりと温泉に浸り、そのあとは浴衣姿の宴会となった。 尽きない話の中に、僕の目に十人がそれぞれ抱えてきた重い年月に昔の若い十人が重なっては離れる。 そこにはいろいろな人生があったのだろう。 それは今夜ここで口に出す必要のない事だった。
そのあと同じ旅館の中にあるカラオケバーに移動する。 カラオケの苦手な僕も今夜は逃げ出すわけにはいかなかった。 昔はカウント・ベイシーがああだとかデューク・エリントンとがこうだとか、あれほどジャズに入れ込んでいて、演歌や歌謡曲を嫌っていた全員が、今夜歌うのはすべて日本の懐かしのメロディーだったのには苦笑してしまった。 そう言う僕だって、無理やりステージに押し出されて、酔った勢いに釣られてしゃがれ声で歌ったのは、僕のたった一つの持ち歌、島倉千代子さんの 『人生いろいろ』 だった。




僕はこの唄を聴くたびに昔いっしょに仕事をした島倉さんの事や、彼女の華やかなステージや、それとは裏腹だった彼女の実人生や、その周りで消えてしまったり死んだり、今でも生き残ったりしている無数の芸能人たちの事を思い出さずにはいられない。 そんな世界をいやというほど見てしまった後に、僕は日本を離れたのだった。

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コメント:

*

私の人生は・・・なんとなく、「寝ているうちに過ぎてしまった」ようなつまらないものですが、September30さんはほんとうにいろいろな経験をされていますね。この歌、いつ聞いても滲みます。
2011/11/11 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さん、つまらない人生などというものが果たして存在するものなのかどうか、と考えてしまいます。ただ、我が家の2匹の犬を見るたびに彼らは退屈な人生、いや犬生を送ってるのだろうかと思うことがあります。
でも意外と彼らなりに幸せなのかもしれませんが。
2011/11/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

私は年寄りになってもカラオケでQueenを歌っていると思います。
2011/11/12 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micioさん、村上春樹さんがどこかに、「日本人にジャズはできるのか?」 というような興味深い文章を書いていたのを思い出しました。 もう1度読み返してみます。(見つかればですけど)
演歌に泣いてしまうようじゃ、ジャズをやったりQueenを歌ったりするのは無理かなあ。
2011/11/13 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

音楽と風土は密接に関係していると思いますので、日本人にオペラ(特にコメディ)は難しいのではないかと思われますが、ジャズは合っていると思います。

その延長線上で
イタリア人にヘヴィ・メタルはできるのだろうか
北欧の人にサルサはできるのだろうか
イギリス人にボサ・ノヴァはできるのだろうか
と考えることはあります。
2011/11/13 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micioさん、音楽と風土というのは深入りするとどんどん難しくなりますね。
どんなに民族性の強い音楽でもそれが他民族の心に訴えるという事は、音楽というか芸術には必ず普遍性というようなものがあるのでしょう。私にとってはタンゴやフラメンコがそうです。ジャズはもちろんそうです。そのくせ、アメリカのカントリーウェスタンにはほとんど何も感じないしフランスのシャンソンもそう言えるかも知れません。
2011/11/14 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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