過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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神々の黄昏

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出雲大社 神楽殿


十月のはじめのある暖かい秋の日に、僕はコータローに連れられて出雲大社に参拝した。 日本中に散らばる神々 (日本書紀の統計によるとその数は800万と言われる) の中で出雲大社の大国主大神はそのボスというか、ゴッドファーザーというか、組合の総元締めのような存在なのである。 その彼が何といってもパワーを発揮するのは、人と人との縁結びだそうだから、僕はもっとずっと昔に参拝をしてしっかりとお願いをしておけばよかったと思う。 そうしたらきっと若い頃、次から次へと縁の薄い人たちばかりに出会うことも無かったにちがいない。 僕が前にここへ来たのは小学校の一年生の時だったから、いくら早熟だったとはいえ 「素敵な女性に巡り会えますように」 なんて祈願をしたはずはなかった。

この大国主大神のリビングルームの壁にかかっているカレンダーには、十月のところに赤いマジックで大きな〇が付いている。 それはこの月に一年中でも特別に重要な予定が入っているからだった。 つまり、ふだんは日本中に分散してそれぞれ地方行政に明け暮れる八百万(やおよろず)の神々が、毎年十月になるとここ出雲まで出張してきて大カンファレンスとなる。 日本中の神社からすべての神々がきれいに姿を消してしまう。 だから全国で神無月と呼ばれるこの十月を、出雲の人々だけが神在月と呼ぶのは、科学的というか非常に現実に則した理由があるのだった。 そしてこの巨大なカンファレンスは出雲大社の大本殿で行われるが、そこで大国主大神が部下からのレポートを聞きながらの神議が31日間続くわけだ。

昼間はそうしてまじめな神議をする大集会が、周りの杜に夜が落ちてくると、席は大本殿から隣の神楽殿に移されて大宴会となるのが普通だった。 酒肴が供され、どこからともなくコンパニオン(巫女たちは現在ではそう呼ばれる)が現れる。 彼女たちは酒の相手をするだけではなくて、歌舞を演じて神々を楽しませる。 夜が更けるにつれて酒席は少しずつ乱れてきて、神々は唄を歌ったり (カラオケの発祥はここだといわれる) 酌をする巫女たちに色っぽい話をしてからかったりする。 しかし謹厳な彼らは明日の神議の場に二日酔いの頭を抱えて出席をしたりはしないから、ほどほどに切りあげて宿舎である周囲の奥深い杜へ、スーっと音もなく引き上げて行くのである。

しかし今は気持ちの良い秋の日の昼間。 今日この神楽殿に集まっているのは、きりりと帯を締めた何百人という着物姿の女性だった。 恒例の大茶会が進行しているのだ。 茶人であるコータローの奥方 (僕はこのひとの大ファンなのだ) もこのだだっ広い板の間のどこかにいるはずだった。 そしてコータロー夫妻の二人の娘さんの婚儀があったのも、やはりこの神楽殿だったそうである


女が良いものであったなら、神も結婚しただろう。
Georgian Proverb



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コメント:

* 注連縄

september さん、またお邪魔します。
ど迫力の注連縄のアングル、流石と思いました。
東校に行く途中の境線の踏切の傍に、大社教があったのを覚えていますか。我々夫婦はそこで挙式しました(月下氷人パッチさん――妻の一族が尼子十勇士(山中鹿之助等)の一人の末裔で、大社教の信者です。ですから墓も仏式ではありません)。コータロー氏の娘さんと同じような挙式ということです。
お盆の墓参りなども仏式とは少々異なります。
2011/11/09 [pescecrudo] URL #j9tLw1Y2 [編集] 

* Re: 注連縄

Peさん、境線の踏み切りの傍というのは博労町の駅の奥だと思うんだけど、あそこにあったのは寺院だとばかり覚えていました。 あれは大社教だったんですね。 今回も車であの道を通って東校を見に行きました。
ところで、奥様の怪我のぐあいはどうですか?
2011/11/10 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/11/12 []  # 

* Re: はじめまして

鍵コメさん、はじめまして。
返信を私信で送りました。
2011/11/13 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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