過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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庭は荒れ庭、秋は落ち葉

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かさこそ
Dayton, Ohio USA



寒くなった。 今朝などは零下1℃から一日が始まった。 僕が仕事場にしている部屋の窓のすぐ外に隣家の柳の木があるので、窓のそばに机を置いている僕はその柳を眺めながら毎日を過ごしていることになる。 持ち主である隣人よりも僕のほうが、一年中を通してずっとこの柳とは親しいに違いなかった。 今朝見るとその柳がもう完全に裸になったまま、枯れ木のように震えていた。 この柳はけっこう大きな樹だからずいぶんの量の葉を落としたに違いないが、それはもうきれいに搔かれて地面には一枚も残っていなかった。

この隣人夫婦はまだ若くてふたりともそれぞれ外に仕事を持ちながら、ふだんから庭の手入れは生半可ではない。 冬以外の季節なら芝の手入れとか木々の剪定とか花の育成とかで、その姿を見ない日はほとんどなかった。 なかでも芝刈りはまるで日課のように毎日とか一日おきにやっている (ちなみに我が家では、芝刈りは一週間に一度やればいいほうである)。 ご主人は仕事から帰宅すると何よりも先にまず庭に出てきて芝刈りを始めるのは、僕が家の中のどこにいても芝刈り機のあのおどろおどろしい音ですぐにわかる。
そしてタンポポのような雑草を一本でも見つけるともう大変である。 まるで自分の腸にしこりが発見されたかのように、家族をあげての大騒ぎだった。 僕などは庭じゅうにタンポポの黄色い花がいっぱいに咲き乱れるさまを想像すると、なかなかいいものだと思ってしまうんだけど、あの可憐な花をあそこまで憎むことができるのは不思議だった。

夏が終わり秋に入り、それから冬が近づいて来ると、もう芝刈りの必要がなくなるので僕はほっとする。 ほっとするというのは、僕自身がその労働から開放されるということと、それから隣家の芝刈り機の音を毎日聞かなくてすむという、その両方である。
秋が深まってきた頃の、地面に敷き積もる厚い落ち葉の絨毯が僕は好きだ。 歩く時に足の下で鳴るかさこそという音が好きだ。 しかしそれはここでは許されない。 この季節になると隣人の仕事は芝刈りから落ち葉搔きへと移る。 電動ブロウアー(芝刈り機ほどうるさくない) や熊手を使って丁寧に一箇所に集められた落ち葉は、幾つものビニールの袋に詰められて町の焼却場まで運ばれる。 落ち葉の絨毯が取り去られたあとの冬の芝生は、疲れたように色が褪せて魅力を失っていた。 この町では焚火は禁じられているから、あの懐かしい落ち葉の焼ける匂いを嗅いだり、立ち昇る蒼い煙を見ることはもうなかった。

庭は荒れ庭、という僕の夢はこの国に住む限り実現することはないようだ。


雑草とは?
その美しさをいまだに見出されることがない植物である。

Ralph Waldo Emerson



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コメント:

*

自然をあるがままにいい感じに放っておく、ワイルドな日本庭園が私は好きなのですが、September氏もそういうところがあるのではないでしょうか。
2011/12/03 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* はじめまして

メールありがとうございました。コメントの管理がよくわからなくてこちらにメールしました。September30さんのブログは写真も文章も別格といつも思っていました。ほめ過ぎのコメントをいただき恐縮しております。ありがとうございました。また素敵なブログを楽しみにしております。
2011/12/03 [しばふURL #- 

* Re: No title

micioさん、そのとおりです。 キチンと綺麗に整った庭も良いものですが、鬱蒼と草の茂る庭にいるとなぜか居心地がいいですよね。
2011/12/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: はじめまして

しばふさん、これからも引き続き拝見するのが楽しみです。
2011/12/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 晩秋の落葉を観賞・堪能できるのは、平和な証拠です

September30さま

 何時も美麗な写真に、気の利いた文章の上梓掲載、有難う御座います。米国中部の平原地帯では、晩秋の住宅街はこうなっているんですね。納得です。
 本日も、こうして地面にウズ高く積もった落葉、色とりどりで眼にも鮮やかな配色、楽しませて貰って居ります。そして、晩秋の落葉をユッタリと観賞できる9月氏の平和にして平穏な生活環境を羨望しております。

 当地にありましては例の福島第一原発の暴走が未だに収束せず、当事者である電力会社の広報担当者の松本何某が「原発の原子炉からメルト・アウトした核燃料は、(地下で)自発的な核分裂反応を継続している」等と、公然と嘯く始末。
 先行きは全く予測不能であり、不気味な師走を迎えている日本列島です。

 当地にて紅葉狩りを楽しんでいられるのは、能天気にして幸福な一般大衆くらいのもので、紅葉や黄葉を眺めても、乾燥したその葉には種々の放射性物質が濃縮・凝縮しているのですから、暗澹たる想いに囚われ、出るのは溜息ばかり。
 9月30日氏のサイトを覗いては、暫し安らぎのひと時を得て小康を保っております。どうぞ今後とも、ご活躍下さい。
 
2011/12/05 [Yozakura] URL #Y2lB8pKc [編集] 

* Re: 晩秋の落葉を観賞・堪能できるのは、平和な証拠です

Yozakuraさん、ありがとうございます。
日本の原発問題はいつになれば解決するという問題ではないうえに、逆に次から次へと醜い事実が明るみに出てきているようで、Yozakuraさんのように心から将来の日本を憂うひと達にとっては暗い毎日であろう事はよくわかります。
といって、われわれのような一般民衆にはできることにも限りがあるのでしょう。 Yozakuraさんもどうか一度愁眉を開いて、まだ壊されていない美しい日本の風土を見廻していただきたいと思うのです。
日本に住まないからそんな能天気なことが言えるのだ、とおっしゃるかもしれませんが、日本を憂う気持ちは私も同じです。
2011/12/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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