過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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人生いろいろ - 二人の男

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決闘
紀伊白浜


この二人の男たちは大学時代からの同級生であるばかりではなくて、共に青春をすごした仲間同士だった。 二人とも大学の付属高校から上がってきているから、そのつきあいはもう五十年になるのである。 この二人は長いあいだお互いに密かな確執のようなものを持ちながら今まで生きてきた、ということは仲間内で知らない者はいなかった。 確執といってもお互いに口をきかないとか口をきくと喧嘩になるとか陰で悪口を吐くとかそんな陰湿なものではなかった。 むしろ彼らは普段から親しくしていて、東京に住む二人は時々は会っていたし、それぞれが結婚して家庭を持ったあとは家族同士のつきあいもあった。 それにもかかわらず、彼らの内部のどこかに一種の 「わだかまり」 のようなものが常に存在していた。

話の便宜上、この二人を男A、男B、と名づけよう。
ことの起こりは・・・

大学の頃この二人は同じサークルに属していたのだが、そのサークルの中でA(写真手前) がとくに親しくしていた女の子がいた。 恋人同士と呼ぶほど真剣なつきあいではなかったようだが、あの子となら将来いっしょになってもいいな、とAが僕に洩らしたこともあった。 そのAは大学を卒業したときに、他の誰もがしたように就職をするかわりに、好きな音楽の道に進むことにしたのである。 楽な道ではないらしくて、僕は彼と会うたびにどこか落ち込んでいるAをひっぱって酒を飲みに行っては元気付けようとしたものだ。 そんな状態の中でAがまごまごしているうちに、その女の子は一流商社に就職していたBに求婚されてBと結婚してしまう。

話を25年後に早送りしよう。
二人の男たちは共に年齢も五十代になっていた。 それまでにAは同じ音楽業界にいた女性と結婚したあと、二人の娘さんが生まれた。 しかしその子供たちがまだ幼い頃、Aの奥さんは子供たちを連れて家を出ている。 活発な音楽活動を続けるAは、離婚後の独り暮らしのなかで、ある女性を好きになって深い関係におちいる。 25歳も年下のその女性というのがこともあろうに、Bの娘さんだったのである。

B夫妻が眉をひそめたのは言うまでもない。 我が子の恋の相手が、母親であるB夫人の昔の恋人だったからということもあったろうし、その親子ほども離れたふたりの年齢差のこともあったにちがいなかった。 なにしろAは自分の娘よりも若い女性と恋をしたのだから。 それは両親としては当然の心配だと思う一方、昔の恋人が生んだ女性に強く惹かれたAの気持ちも、僕にはわかるような気がした。
二人の男たちのあいだでどんな話があったのか、仲間内の誰も知らない。 我々が知っているのはこの恋はAの側から一方的に終わりにしたということだけだった。 それ以後はAは一度も結婚をしていない。

ここで話が現在に戻る。
仲間同士が12年ぶりに集まって来た紀伊の海岸で、長いあいだ、ほんとうに長いあいだお互いに確執を抱えて生きてきた二人の男たちは、雌雄を決する目的で決闘をすることに決めたのだ。 長年のわだかまりをきれいに洗い流して、残り少ない人生をお互い楽しくやろうよ、ということらしかった。 武器はカメラ、介錯は僕がふたりの写真を見て解釈をする。 勝負の結果はわれわれ三人以外には誰も知らせない。 という取り決めがなされる。 そこである日の夕方、血のような色をした夕焼け空のもと、紀伊白浜の海岸で両者が対決することになった。

***


一枚の写真からこんな途方もない物語をでっちあげるのは、ブログの作者とはなかなかたいへんなものなんだ。


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コメント:

*

こんにちは。凄い話しを創造するものだなぁとビックリしました。でも現実にはそんな話しもあるかもしれませんね。現実とは不思議なものです。
しかしこの決闘、2人のカメラの持ち方から想像するに、どちらもカメラぶれで相撃ちというところでしょうか?それともどちらのカメラにも、手振れ防止機能があって、やはり相撃ちでしょうか?
2011/12/15 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さん、この決闘に武器として二人が選んだのは、Aが買ったばかりのニコン、クールピックスのL120、Bはこれも新しいニコンD7000を持ちながらこの日は使い慣れたパナソニックのコンパクトを選んだようです。
もちろん両機とも手振れ防止機能はついています。
決闘の結果については明かせません。ご理解ください。
2011/12/15 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

どう見ても和やかで楽しそうな様子なので、人というものは計り知れないものだな。
と、一瞬思ってしまいました。

現実世界では、エリック・クラプトンとジョージ・ハリスンがひとりの女性を取り合って、でも仲良く一緒に来日したりしていたので(←???なぜ?)、なんだかよく分からないけれども男同士の関係というものはそういうこともあり得るのかもしれないですね。
2011/12/15 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

*

もーもーもー、
すっかり騙されたじゃないですかー。
以前もこんな具合に「してやられた」覚えがあります。

今日は4月1日か?
2011/12/15 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

micioさんのコメントで思い出したのは、子供の頃、仲の良かった友達のお祖母ちゃんの家へ遊びに行くと、お祖母ちゃんが二人いるのです。 まるで姉妹のように仲が良くて優しいお祖母ちゃんたちでした。でも姉妹じゃなかった。
少し成長してからわかったのは、亡くなったお祖父ちゃんの奥さんとお妾さんがいっしょに暮らしていたのですね。
2011/12/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、そんなに怒らないでください。騙すという意図ではないのです。
だって、映画や小説はすべて作り事なのにムーさんはいちいち怒りますか? (笑)
記事の最後の一行はほんとうは必要ないのだけれど、これを書いておかないと、本人たちに迷惑がかかるかもしれないからね。
2011/12/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

まったくうそにも思えない話ですねえ。
本当は実話だったりして。
2011/12/16 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/12/16 []  # 

* Re: No title

上海狂人さんはさすがに鋭い。
2011/12/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

あがた森魚と緑魔子が夫婦だった頃、緑魔子は石橋蓮司と出会ってしまい、それから三人で同棲していたと聞きました。

みんな、Septemberさんが日本を出た後のお話。
ちなみにあがた森魚は歌手、緑魔子と石橋蓮司は俳優です。
2011/12/16 [みん] URL #6moyDOY6 [編集] 

* ふっふっふ

この物語は、そういう生き方もしてみたかったという
September30 さんの潜在願望 というのは当たっていませんか?
2011/12/16 [のほほん] URL #60nqeuCY [編集] 

* 私も

すっかりだまされました。本当のことなんかよりそんなお話を作り出したSeptember30の心境がちょっと気になります。
なにか昔のいい思い出でも思い出したのでしょうか?
2011/12/17 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* でっちあげ

ということがフィクションだったりして…
September30さんならやりかねないかナ、なんて(笑)

はじめまして。
3月以来、こちらを拝読・拝見させていただいております。
きれいでせつなくて、ほろ苦い、September30さんの世界に魅了されてまいりましたが、
ついに今回はコメントをお届けしたくなってしまいました。

姉妹のようなお祖母ちゃんふたりの“フィクション”も、知ってみたいです。
2011/12/17 [belrosa] URL #- 

* Re: No title

みんさん、歌手や俳優というのは常識では測れない変則な人種なのか、それとも、セレブリティだからというだけで同じ事をしても人に知られるのか、似たような話しはあなたの知らないまわりにあるのかもしれません。
どちらにしても芸能人のやることに私はあまり興味がありません。
2011/12/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: ふっふっふ

のほほんさん、そうかなあとも思います。 だって、自分を捨てた恋人の娘と結ばれるなんて、因縁というか怨念というか、奇跡というか軌跡というか、これだから人生はおもしろい、という気がします。
2011/12/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

私も 上海狂人さんやbelrasaさんと同じようにおもってました。

そんな風に思っている方が多いとおもいます。
それだけ septemberの文章に迫力があるということかしらv-10
2011/12/17 [okko] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: 私も

inei-reisanさん、そういうわけでもないのです。 実はこの写真が自分でもすごく気に入って (そんなことはあまりない) ぜひブログに載せたいというところから、こんな話になりました。 ふつうなら文章がまずあってそれに挿絵をつけるのでしょうが私はその逆が多いようです。
2011/12/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: でっちあげ

belrosaさん、はじめまして。 コメントをありがとう。 これからもどうぞよろしく。
そういえば二人のお祖母ちゃんの話は、友人にいつか聞いてみたいと思いながらそのままになっていました。 今からでも遅くないのですが、それよりもこの二人の女性の写真を撮ることがもうできないのは残念です。
2011/12/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

okkoさん、写真は嘘をつかないけど文章は嘘をつきますから。 (笑)
2011/12/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

あ~楽しかった。 
私だったらAさんと娘さんを結婚させたと思いました。
今は仲良くみーんなで暮らしてますぅ♪って終わらせたとのだと思います。 

姉妹と結婚した男性知っています。最初は妹、次はお姉さんです。
10年も前に交流があった人々で今は連絡をとることもありませんが、全員が仲良しでした。 私はその時に 「妹さんと離婚して、次はよく似たお姉さんと結婚するのだから好みってのは変わらないんだ~また姉妹も同じ人を好きになるから良く似ているんだ!」 と納得しました。

コメント長くてごめんなさい。
2011/12/17 [アンリ] URL #0.M2lW/c [編集] 

* Re: No title

アンリさん、このふたりを結婚させてしまえばハッピーエンドで写真の決闘の意味がないじゃないですか。 (笑)
戦争直後はそういうことがよくあったそうです。 妻が、戦死した夫の弟と再婚すると言う話。でもこれは家を継ぐためにすることで恋愛の結果ではないでしょうけど。
2011/12/18 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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