過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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歌を忘れたカナリヤは・・・

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冬の桜
Oakwood, Ohio, USA


今年は隣家のしだれ桜がとうとう花を咲かせること無く夏を迎えてしまった。
「そんな、馬鹿な・・・」 と僕は絶句した。
花や植物のことを何も知らない僕は、春になれば花は咲くものと信じて疑わなかったからだ。昨年の記事 『しだれ桜』 に載せた満開の桜は4月の19日に撮影していた。それが今年はもう6月となって、しだれ桜は青々とした豊かな葉を茂らせている。それなのについに花は咲かなかった。この2ヶ月の間、僕は桜が咲くのをじっと待っていたのに、いったい何が起きたのか?
毎朝ベッドから起きるとまずサンルームへ行って窓のすぐそばの桜の木を見るのが習慣になってしまっていた。ある朝、2つ3つの小さな蕾を見た時は、喜びの余りまだ眠っている妻を大声で呼び起こした。ところがその蕾は翌日にはもう消えていた。

樹に花が咲くのをこれほど気にかけたことが、今までの自分の人生であったろうか、と思う。
それはまるで、浮気者の愛人が自分の元へ戻るのを今日か明日かと心待ちにする気持ちに似ていた。この単調な繰り返しに過ぎない日常の生活の中で、それは一つの生きる目的でさえあった、と言えば笑われるかも知れない。しかしそれほど僕はこの花がいつか爛漫と青空に咲きほこるのを待ち焦がれていたのだ。

そしてある日、一通のメールが届く。
差出人は日本に住むB子さんである。 桜が咲かないのを僕と同じくらい心配していたB子さんが、あれこれネットを漁った結果わかったのは、今年はオハイオやミシガンなどの州では異常な寒さのために桜が咲かなかったそうだ。たしかに今年の冬の寒さは厳しかったが、それで自然の摂理が曲げられるなどと思ってもみなかった僕は、いつまでも帰ってこぬ愛人をいじらしく待ち続けていたことになる。そんな無知で純真な僕を哀れに思ったB子さんが、優しい、そして残酷な宣告をくれたのだ。
「あの女(ひと)は今年はもう戻っては来ないのよ...」


桜は繊細な花に違いない。日本人のように・・・
隣家のしだれ桜は、その傍でふてぶてしく白い花を満開しているマグノリアを見ながら、どんな想いでいるのだろうか?

そんな桜の木に僕は声に出さないで語りかける。
お前も僕も、歌を忘れたカナリヤだけど
それでも
こうやってちゃんと生きているんだよ。




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コメント:

*

そんな、マグノリアをふてぶてしいなんて(笑)
普通、花木の花は一度低温を経験してこそ綺麗に咲きます。
桜もバラも同じ(桜ってバラ科なんですよご存知でした?)
植木屋さんは早く咲かせる必要があるときは冷蔵庫に入れて、
ほーら寒いよー。と錯覚させるんですけど、
桜は騙されないんだそうです。
素晴らしい!

で、今年は日本でも大雪でした。
山梨のバラのナーセリーでは沢山のバラが枯れこんだそうです。
こんなことは初めての経験だそうです。

オハイオ在住の知人もバラの木が枯れた・・・とショックを受けていました。
September30さんの桜は青々した葉を茂らせているんですね!
枯れなくて本当に良かった。

今年は大雪に阻まれて来れなかったけど、
来年はいっそう美しくなってSeptember30さんに会いに来ることをムーさんが保証します!




2014/06/02 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

ムーさん、

楚々とした桜の花と並ぶと
大抵の花はふてぶてしく、図々しく見えませんか? (笑)
桜は自分の美しさを知らない稀な花の一つです。
バラ科だとは、この数年来の勉強でちゃんと知っていましたよ。

今年の雪と寒さで我が家の庭のラベンダーが全滅しました。
それから数年前に柵際に自然発生したカエデは
玄関前のカエデの芽が風に飛ばされてそこへ落ちた結果らしいですが
1メートルくらいまで伸びていたのが枯れてしまった、
と思いきや、地面に近い部分はちゃんと生き残っているのです。

来年はいっそう美しくなって私に会いに来てくれるというムーさんの保証ですが
かんじんの私がここにこうして居るかどうか・・・
2014/06/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

2010年の4月でしたが、桜の花の上にどっさり雪が降って、所々枝が折れたことがありました。それでも心配をよそに桜は咲き続けて・・・・・なにがあっても咲くのが桜なんだと、思ったことでした。
今年は
戦争があった国から原発があった国へと桜咲きつぐ
などと詠んでいましたが、桜を咲かせない春の寒さというものがあるのですね。でも来年はきっと、2倍美しい花が咲くと信じます!
2014/06/03 [いらくさURL #- 

*

そうだったのですか。春は短いとは聞いていたけれど、春に気づかないうちに、すっかり夏のようになってしまったな、と、不思議に思っていました。

ワシントンDCの桜は、日本から来た桜も含めて、何やら日本の桜のような楚々とした風情を失い、はらはらと散る儚い風情もどこかにやってしまって、すっかりアメリカンな桜だと思っていましたが、オハイオの桜はそうでもないのですね。
 来年には、ぜひ、オハイオの桜に出会いたいものです。
2014/06/03 [わにURL #LkZag.iM [編集] 

* Re: No title

いらくささん、

私も長い間そう思っていました。
繊細で根強い日本人を象徴するのにぴったりの花ですが
時には自然に打ち負かされることがあるのですね。

来年はまたちゃんと花を咲かせることを信じています。
2014/06/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

わにさん、

数年前のことですが
私の住むデイトンの町を抜けている "Little Miami River" の河畔に
100本の桜の木を植えようというプロジェクトが市と在住日本人のあいだで計画されて
私もチームの1員でしたが
資金が得られないままに挫折したことがありました。
残念なことです。
2014/06/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* かけひき

気負ったデートをすっぽかされてしまったようなご様子に思わずにやにやしてしまいました。桜は寒い地方のものほど大きく育ち美しい花を咲かせるとはいえ、あまりの寒さに体力を温存したのでしょうか。
そういうこともあるのですねぇ。
きっと来年は美しい花をたくさん咲かせてくれますよ!

私事ですが、ふと思い立つことがあり、40の手習いで新しい分野の勉強を始めました。来年はボルダーに勉強にゆくつもりでいますが、さて、どうなることでしょう。
日常的な英文は読めば理解できても書くとなるとうんうん言い、話すとなると貝になってしまう私。この年齢になって英語でしか学べない何かを学ぼうと挑戦することになろうとは、人生はおもしろいものですね。
2014/06/06 [nico] URL #- 

* Re: かけひき

nico さん

一昨年nicoさんに教えて頂かなかったら
私はいまだにしだれ柳と思っていたことでしょう。
桜と知って親近感が倍増したのは、やはり私は日本人でした。

ボルダーとはコロラド州のBoulderだと思いますが
そこで勉強といえばあのコロラド大学かな、と勝手に推測しました。
何の勉強でしょうね?
私はそのすぐ近くのデンバーへしか行ったことがありません。

40なんて私から見ればまだまだ可愛い少女ですよ。(笑)
でもこんな大きな生活環境の変化を予定されたということは
お身体の方も今は心配無いということなのでしょうから
その点、とても嬉しかったです。
2014/06/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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