過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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「イエス」 と 「ノー」 のあいだで

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おしどり夫婦
松江市 フォーゲルパーク


先日、シンシナティのイミグレーションのオフィスまで出向いた。 十年ぶりのグリーンカードの更新手続きのためだ。 アプリケーションの書類は今では自宅にいてインターネットですべてできるようになっていて、それが無事に承認されると今度は写真を撮ったり指紋採取のために最寄りのオフィスまで呼び出されるわけだ。 指定された日時にシンシナティのダウンタウンにある厳(いか)めしい連邦ビルディングまで行って、入り口で携帯電話を取り上げられたあとX線のゲートをくぐって中に入る。 僕の出頭すべき室が1524号室なので15階の24号室だろうと見当をつけてエレベーターに乗った。 乗ってから15階のボタンを押そうとしたら、なんとこのビルには15階が無いのである。 ギョッとしてホールでまごまごしていると警備員が近づいてきた。 それでわかったのは、僕が行くのは1階の524号室だった。

1524号室では受付の窓口に中年の女性がいて、ビジネスマンらしい日本人と対応していた。 聞くともなしに彼らの対話が聞こえてくる。
「アポイントメントの手紙を持参するようにと言ってあるんだけど、それは持ってこなかったんですね?」
「はい」
「じゃあそれを見せてください」
「だから、それは持ってこなかったんです」
「????」 と受付の女性は不思議そうな顔で彼を見つめる。

そうか、と僕は考える。 最初の質問に彼は 「いいえ」 と答えるべきだったのだ。 日本にいれば 「はい、持ってきませんでした」 で何の支障も無く通じるのだけど、英語はそうはいかない。 まったく逆になるのである。 「いいえ、持ってきませんでした」 と答えるべきだった。 決定的なトラブルになることはないだろうけど、そこで会話がちょっとだけつまずいて双方がいらいらしてしまうことになる。 いや、もしこれが法廷での証人尋問かなんかだったら、本人の証人としてのクレディビリティ(信憑性) を疑われてしまうというようなことは考えられる。

それではそういう僕自身はどうだろう。 同じ間違いを (というか逆の間違いを) 英語に慣れた僕が日本でやっているか、と考えてみる。
「日本での住所はお持ちにならないんですか?」 と関西空港内で携帯電話のレンタルの窓口で訊かれたときには、ちゃんと 「はい、持っていません」 と答えたと思う。 同じ質問を英語で訊かれたとしたら即座に "No, I don't" と言うところだ。
ということは僕は無意識のうちに二つの言語を使い分けているということになる、と思って少し安心をした。 そうでなくても普段おかしな日本語を口にしたりして、友人たちから 「お前さんはアメリカ人だからなあ」 と笑われる度に、ちょっぴりとだけ気分を害したり哀しくなったり、すこしづつ自信を失いつつある自分だったから。


* この記事と今日の写真とどんな関係があるかって?
う~ん。 こんなのはどうだろう。

「私は化粧っけもなくなって薄汚くしてるのに、あなたってますます妖艶ね。 近所のメス鳥たちが盛んに色目を使ってくるし。 あなた、お隣の奥さんのこと嫌いじゃないんでしょう?」
うん、嫌いじゃないよ。 きみみたいなおしゃべりで焼きもち焼きじゃないしね」

ちょっと苦しかったかなあ。


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コメント:

*

イタリアで宿の主人に明日はストライキで電車は出ないよと教えられたときに、思わず中国語で文句を言い出してしまい(それまでは簡単なイタリア語で会話をしていました)、
“一体きみはどこの国の人なのだ?”と、笑われました。
自分の奥底に刷り込まれている言葉は中国語なのだろうか?と、その夜は不安になって暫く眠れませんでした。
どちらの言語も流暢とはとても言い難いレベルです。

*ちなみに中国人もDon't you 〜、Can't you 〜クエスションには弱いです。
2011/12/20 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

*

オシドリですか。
仲の良いカップルの代名詞ですね。
でも残念でした。
やきもち焼きなのはオスのほうです。
メスを見張って離れないから傍目には仲よさそうに見えるんだとか。

すみません。夢を壊すようなこと言っちゃった。

2011/12/20 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

micioさん、実はこの記事を書いていたときに、ラテン系のの言語はたぶん英語と同じだと思うけど、中国語はどうなんだろうと思っていたので、micioさんのコメントがその疑問に答えてくださいました。

それにしても、怒ったときに無意識に中国語が出てくるのはすばらしい。 私は今でも喧嘩をするときに英語がしどろもどろになります。
2011/12/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、そうなんですか。ガックリです。でも人間界も同じかも知れないですね。 
やきもち焼きでも誠実なのはオスのほう。
いじわるなのはメスのほう。 (誰かさんみたいに)
2011/12/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

モノクロ写真が多いので、たまにカラー写真を見せていただくと、鮮やかさにはっとします。

私は怒ると英語が流暢になります。喧嘩に負けないためかしら?
2011/12/21 [わに] URL #- 

* Re: No title

わにさん、怒ると英語が流暢になる、というのはすごいです。
わにさんが冷静な感情の持ち主だからです。
私など怒ると、判断力も自制心も常識も羞恥も知性も、すべてがどこかに消えてしまって、あとに残るのは真っ赤に焼けた怒りだけです。言葉さえも壊れてしまい、私はただドモルだけ。
2011/12/22 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

”No” I don't.  この英語、私は毎回もれなく間違えます。
Yes, I don't と、答えてしまうのです。 
お、来たな!と思っても、間違えるんです(笑)
あっちむいてホイも弱いです。
2011/12/22 [アンリ] URL #- 

* Re: No title

アンリさん、たしかに難しいですよね。 いっそのこと "Yes" "No" を省略して "I do." "I don't." といったらどうです? (笑)
2011/12/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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