過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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肉食三昧

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イタリアン マーケット
North End, Boston


若いころに比べると、毎日の食事の中で肉類の占める割合がずっと少なくなってきている。 当然ながらその分、魚貝類や野菜が増えているわけで、魚なら毎日でも喜んで食べる。 それが一週間に一度は無性に肉が食べたくなるのは、体がタンパク質の補給を自然と求めているのかしらん、と思う。 おもしろいのは長いあいだ豚肉が特に好きだったのに、四十代で胆石の手術をしたら、それ以後まるでスイッチを切り換えるように肉の嗜好が牛肉に変わったことだった。
肉類のリストの中では僕の場合、鶏が最下位にきているけれど、それは鶏が嫌いというのではなくて、久しぶりに肉を食べる時にはつい牛や豚を選んでしまうのが理由のようだ。 アメリカ人の好きなターキー(七面鳥)は僕はあんなまずいものはないと思っているので、リストにさえ入っていない。 ダック(鴨)なら僕の大好物なんだけど、これはマーケットでもなかなか手に入らないし、レストランのメニューにもほとんど載っていない (中華でならあるけど)。 そういえばヨーロッパに行くたびに、僕はよく飽きもせずに毎日のようにダックを食べていた。 (プロヴァンスのオランジという町でランチに食べた切り身のダックほど美味なものは、あとにも先にもなかった)。

ボストン時代によく食べたのは鳩だった。 チャイナタウンに一軒だけそれを食べさせる店があって、高価な料理なので(店は小さくて貧弱なのに)貧乏な僕は金を貯めるとその店へせっせと通った。 唐揚げにされて出てくるその鳩は当然ながら食用鳩だと思っていたけれど、ひょっとしたらその辺の路地裏で捕まえた鳩かも知れなかった。 それにしてもうまかった。

昨年の感謝祭に招待された夕食会では例によってターキーが主役で、テーブルの真ん中にでんと置かれた巨大なターキーを見ただけで僕は食欲を失ってしまった。 ところがその横に判別のできない一皿の肉が置かれていた。 試しに一口食べてみるとそれがなかなかおいしいのである。 歯ごたえは豚肉に似ているけど独特な野生的な味があった。 パーティーの主に訊いてみるとそれは鹿肉だという。 鹿なら僕は前にも何度か食べたことがあるけど、かなり強い臭みがあって好きになれなかった。 今日の料理はその臭みがまったく抜けているのはたぶん料理の仕方によるのだろう。 アメリカでは鹿狩りを趣味にする人が多いから、肉屋の店頭に鹿肉が並ぶことはなくても一般家庭ではけっこう食されているのである。

ところで、ウサギの肉を僕は食べたことがない。 昔ボストンのイタリア人街をうろついていて、肉屋の軒に羊やウサギの毛皮が吊り下がっているのをよく見た。 中ではもちろんその肉を売っている。 またヨーロッパの作家が書いた小説の中には、ウサギの料理を食べる描写がよく出てくる。 それなのに実際にフランスやイタリアやスペインのレストランでウサギの料理をメニューの中で見た記憶が無いのは、たぶんウサギ料理というのはアメリカの鹿肉のように典型的な家庭料理なのだろうかと思う。

ちょっと調べてみたら、ウサギはすべての肉類の中でもっともタンパク質の含有度が高いだけではなく、コレステロール、脂肪、カロリーが最低だそうだ。 まるで健康オタクのための肉といえる。 そしてウサギを食する国民はフランスが世界第一位でイタリアがその次だという。 ヨーロッパからの移民が溢れているアメリカだから、ウサギの肉など当然どこかで手に入るはずだけど、僕の住む町にはイタリア人街もないし、その辺のマーケットで見かけたことはない。 また、夕食に招待された家庭でウサギの料理が出されたことなど今まで四十年のあいだ一度もなかった。 アメリカではウサギは愛玩用のペットと見なされているから(少なくとも都市圏では)、それを食べるというのは、犬や猫を食べるのと同じようなタブーとされているのだと思われる。
それにもかかわらず、もし機会があれば一度は試してみたいと思う食品の一つだ。




健康食品の店に買い物に来ている客を見たことがあるかい?
みんな青白く痩せて、半死人のように見える。
ステーキハウスの客を見てごらん。
壮健で血色の良い人たちばかりだ。
そしてなんと健康そうに見えることか!
もちろん彼らは死にかけてるんだけど。
Bill Cosby



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コメント:

*

そういえば、以前、コロラドに住んでいたとき、鹿やエルク、バイソンの肉は普通のスーパーの肉売り場に並んでいたのに、うさぎは見たことがありませんね。フランス料理店でも(あまり行った事はありませんが)、メニューの中に見たことがないような? こうなると、食べてみたくなりますね~
2012/01/30 [わに(肉がすき)] URL #- 

*

ウサギ美味しかったです。ポルチーニのソースが絶品で。

と、大声で言うとなんだか後ろめたい感じがするのは何故なのでしょうか。

カエルと蛇も食べましたが、こちらも美味しかったです。

と言うと、ゲテモノ好きな感じがするのは何故なのでしょうか。
2012/01/30 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012/01/30 []  # 

*

子供の頃にはニワトリだといって、ウサギの薫製が売られていた事がありましたが、ウサギ料理というのは確かにみかけないですね。私は新潟の友人宅でウサギの頭の鍋をいただいたことがありますが、恐くて味は全くわかりませんでした。身のほうは淡白で全く問題ないのですが、頭はちょっと。友人宅では熊の肉もよくいただきました。熊は生でも焼いても大好きです。

鹿肉も好きです。バーベキューでもシチューでも、ステーキでも刺身でも、クセもなく美味しいと感じます。ハトやウズラも昔は売っていた記憶がありますが、いまは見ないですねぇ。ハトは東京オリンピックの開会式に使われた競技用をたくさん飼っていた友人の家では、味噌漬けにして食べていたようですが、美味しそうでした。いまは相棒がキジバトを食べたがっているので、今年はなんとかしようと思ってます。

アメリカではウサギはペットが一般的ですか。それじゃあ食べ難いでしょうね。それにしても私の子供時代は食料が少なかったのか、牛やブタが高かったのか、食用ガエルや赤ガエル、ウサギにキジにヤマドリ、ハト、ウズラなどは珍しくなった気がします。それを思うといまの肉食は貧弱ですね。そういえば私はカンガルーの刺身も熊の刺身も食べたことがありますが、鯨はなかなか口にできなくなってしまいました。でもそのかわりにイノシシを食べたりできるのが嬉しいです。

すみません、食いしん坊なもので、ついついたくさん書いてしまいました。
2012/01/30 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

わにさん、やはりコロラドの方では鹿類の肉も肉屋で売っているのですね。
我が家の庭には野生の兎の家族が住んでいてしょっちゅう庭を走り回っているので、やはり食べるのにちょっと抵抗があります。 料理されたものが食卓に出てくれば食べられると思うんだけど。
2012/01/31 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

micio さん、後ろめたい感じがするのはやはり食文化の違いからくるのでしょう。
私はゲテモノ食いではないし、第一食通でさえないので、慣れない料理を食べるのにかなり勇気がいるのです。
フランスでカエルやカタツムリを何度か食べましたが私には合いませんでした。 
でも最近食べたカンガルーの肉はおいしいと思いましたね。
自分に合うとか合わないとかも、結局は料理のしかたによるんじゃないでしょうか。
2012/01/31 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

川越さん、鯨に関しては覚えていらっしゃるかどうか、以前のブログでコメントのやりとりをしましたよね。高知の料亭で出され鯨の料理を私も妻も食べなかったのは、捕鯨はするべきではないと信じているからだったのです。ポリティカリーにコレクトではないとささやかな反抗をしたわけです。(笑)
川越さんのような食通ではない私でも長い間にけっこういろいろなものを食べる機会はありました。
それで思うんだけど、上のコメントにも書いたように、どんなものでも結局は料理の仕方しだいだと思うんだけど・・・
2012/01/31 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

September30さん、今晩は、1週間前に日本から戻ってきました。
11月の帰国はは友人宅で、芸術的な牛肉のすき焼きをご馳走になったのですが、
今回は結局肉は全く食べる機会は無くて魚三昧でしたよ。

ウサギはドイツでは牛、豚、鶏、七面鳥ほどではないけど食べられています。
ウサギという 一くくりの言い方はなく、Hase又はKaninchen。
Haseは耳が長く、後ろ上肢が発達していて、ぴょんぴょんではなくて大ダッシュで走ります。
Kaninchenが一般に飼育されている方で、勿論野生もいますが、
耳はHaseに比べて短い、たらーんと垂れています、こっちがぴょんぴょんです。
近所で見るウサギは野生のHase。

味はHaseはやっぱり獣臭い、
養殖Kaninchenは淡白なのででオーブンで焼いたりして食べるのは私も好きですね、
ご馳走の部類に入りますよ。
本当に肉好きの人はHaseが好きみたいです。
夫なんかHaseまたは野生のKaninchenを好みます、やっぱり肉食のヒトです。

値段は他の肉に比べてちょっと高めなのですが、以前はKaninchenは貧しい人の食べ物だったのだとか。
庭にケージを作って飼ってよく増えるし、それを食べたのだそう、先ほど夫から聞きました。

母から聞いたのですが、女学校で解剖の実験でウサギを使用、その後ウサギ汁にして、
先生も含めて皆で食べて 美味しかったと。なんかすごい!

Bill Cosby の言葉、痩せていても、血色のいい人も
結局死にかけているんでしょうか?




2012/02/01 [のほほん] URL #60nqeuCY [編集] 

*

September30さんのおっしゃるとおり、やはりお料理の仕方によると思います。
実は私、ウサギ肉が大好きなのです。
イタリアンレストランで、メニューに載っていたら、大抵オーダーします。
Micioさんのおっしゃるように、ポルチーニのソースに供されて出てきたら、
もう、赤ワインのすすむこと、すすむこと(笑)。
September30さんに、一度食べさせてあげたいです。

うずらだとか、ウサギだとか、鳩だとか、といった小さい動物は、食養生の観点からいうと、
牛や豚よりも、体にいいのだそうです。
(と健康オタクが言ってみる。)

ちなみに、私の場合は、ウサギを食べても後ろめたさがないのですが、なぜでしょうか...?

鳩は食べたことがないのですが、ボストンのお店の詳細、よろしかったら教えてくださいませ。
行ってみたいと思います。

2012/02/01 [けろっぴ] URL #- 

* Nouth End

10年くらい前にWEST END(MGHの隣)に娘家族が住んでました。
HEY MARKETを通りNOrthEndに散歩に行ったことをおもいだしました。
歩いている人が 見るからにイタリア系の人が多かったし
そこで食べたイタリア料理やケーキ、美味しかったです。

春休みに孫とボストンにいきます。
時間があればノースエンドにも行きたいのですが・・・・
孫がNYに行きたいというので・・・・ボストンは2泊なってしまいました。
だから、、ノースエンドへ行くのはむりかも・・
私はこの街の雰囲気がすきです。
2012/02/01 [okko] URL #mQop/nM. [編集] 

* 肉食三昧

そういえばアメリカには旅行鳩というのが昔はいて大変美味であったのであらかた食い尽くされて絶滅してしまったというのを本で読みましたがその肉は今や一切手に入らないのでしょうかね。
また西部劇では馬に名前を付けないのは非常時に食するためだなんて聞きましたが本当かな?
2012/02/01 [ja1ecg] URL #Hb8WYnzA [編集] 

* Re: No title

のほほんさん、おはようございます。お帰りなさい。

ドイツでのウサギに関する食事情のコメントはとても嬉しいです。 こういった外国での日常文化の情報はとても興味深くて、たぶん他の読者の人たちにとっても有益な知識になるでしょう。

Bill Csoby の引用句は、健康オタクの人たちは半死人にように見えながら長生きするのに比べて、肉食を好む人たちは健康そうに見えて実は死にかけているんだ、ということでしょうけど、私の翻訳が十分でなかったようです。
2012/02/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

けろっぴさん、これで、ウサギを食べるならポルチーニのソースが最高、ということが定番になりました。
後ろめたさがあるかないかは、その人の生活環境や子供の時の育ち方なんかと関係があるのかもしれません。 私は幼い頃ウサギを飼ったこともあるし、現在でも我が家の庭にウサギの一家が棲んでいたりするので、後ろめたさのようなものがちょっとあります。 それにもかかわらず、やっぱり食べてみたい。

ボストンのチャイナタウンの店ですが、メインストリートの中ほどにあったという以外は、名前もなにも覚えていません。 現在でもまだ存在するかどうか。 なにしろ35年も前のことですから。
2012/02/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: Nouth End

okkoさん、あの一帯は私も好きだったのでよく歩き回りました。 何十年も昔のことなので、今はすっかり変わってしまっているような気もするし、あの辺はどうしても変わりようがないような気がするし、いつか帰ってみたいです。

NYに行かれるのでしたら、North End の代わりに Little Italy に行ってみたらどうでしょう?
2012/02/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 肉食三昧

ja1ecgさん、旅行鳩というのは知らなかったので調べてみました。 アメリカの東海岸に18世紀から19世紀にかけて生息した鳩で、絶滅する最後の一羽は私の隣町のシンシナティの動物園で1914年9月1日に死んだそうです。
日本在住のja1ecgさんに逆にアメリカの歴史を教えていただきました。 ありがとう。

西部劇の馬の話も実は知りませんでした。 でもどこかで読んだのは、動物に名前を付けるのは愛玩しているからなので、そういう動物を食べるのはやはりタブーとなっているそうです。 この話と関連がありそうですね。
2012/02/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* これは Petra なの?」

もう随分前でしたが、アメリカの古い映画でしたがクリスマスの頃にテレビで見ました。

大家族の農家で、子供たちがアヒルだったか、鴨だったか可愛がっていたのです。

クリスマスの食卓の真ん中にトリが焼かれて乗っていて皆でわいわい食べ始めたのですが、
誰かが子供たちに大きく育ててくれたお礼を言ったものだから、
子供たちが 「これは Petra なの?」と、わーっと泣きだしたのです。
名前までつけて可愛がっていたのですね。

題名も覚えていない古い映画です。
2012/02/02 [のほほん] URL #60nqeuCY [編集] 

* 美味しかった記憶が

ウサギは美味しいです。
マカオのマカオ料理レストランで食しました。
肉の繊維が細かくて食感はホタテの様だった記憶があります。
部位で違うのでしょうけれど...

2012/02/02 [MasaURL #HfMzn2gY [編集] 

*

September30さんのご指摘のように、ウサギは飼ったことがありません。
のほほんさんの仰る映画、私も観たことがあります。
たしかに、自分が可愛がっていたり、身近にいて、交流のあった動物は食べることはできませんよね。
それが高じてベジタリアンになった人を、たくさん知っています。
2012/02/02 [けろっぴ] URL #- 

*

うさぎはあまり油分がなくおいしいものではないですねえ。
まずくはないですが、料理法にもよるんでしょうが淡白すぎて。
2012/02/02 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* Re: これは Petra なの?」

のほほんさん、親としてはなんとも非情なことを子供にしたわけだけど、昔の農家なら(あるいは今でも?)考えられる事です。その子供たちはきっと成長してからもトリを食べるたびにそのことを思い出したのではないでしょうか。
つい最近のテレビのコマーシャルで、経済的にちょっと苦しい中流家庭で食費節約のために十代の子供が飼っていた金魚を子供には内緒で唐揚げにして食べるというのがありました。 何のコマーシャルだったのか思い出せないのですが、残酷で悪趣味なのに驚きました。
2012/02/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 美味しかった記憶が

Masaさん、こんにちは。
それは旨そうですね。ますます食べてみたくなります。

ところで、遅ればせながらMasaさんのブログをリンクさせていただきました。
2012/02/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

けろっぴさん、飢餓というのは人間からすべてのプライドや尊厳を取り除くようです。
大岡昇平を含むいわゆる戦記ものの小説を読んだことがありますが、これはフィリッピンやニューギニヤで死んだ戦友を食べるという想像を絶するようなものすごい話なのです。
どうか読まないでください。(笑)
2012/02/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、おいしいという人とおいしくないという人と、二通りあるようですが、これは私の鹿肉の経験と同じで、仰るように料理の仕方によるのだと思いますね。
2012/02/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

リンクありがとうございます。
拙いブログですが...(^^;;
2012/02/08 [MasaURL #HfMzn2gY [編集] 

* Re: No title

Masa さん、こちらこそどうぞよろしく。
2012/02/08 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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