
零下10℃の散歩
Oakwood, Ohio USA
この数日間、僕の住む地域は少し暖かくなって気温が昼間なら摂氏13℃くらいまで上がっている。 ところがその前の一週間が寒かった。 日中でも零下10℃以下の日がずっと続いていて、寒いのが苦手な僕にとっては、実に自殺したくなるほどの寒さだった。 暖かそうな毛皮に包まれた我が家の二匹の犬でさえ、急ぎ足でぐんぐんと僕を引っぱっていつもの散歩ルートの途中まで行って、そこでさっさと用を済ませると、回れ右してもう家に帰りたそうにしていた。
僕は寒いのは苦手なんだけど、雪は嫌いじゃない。 大雪に閉じ込められて外界と遮断された我が家で、暖かい暖炉のそばで酒を飲みながら、長い静かな夜を過ごすなんて、まるでおとぎ話のように素敵だから大好きなのだ。 ところがその雪が、今年はまったく降らないのである。 これではもう何のために生きているのかわからなくなってしまう。 雪のない冬なんて、金のない休暇のようなもの、醤油なしで食べる刺身のようなもの、雲のない空のようなもの、あるいはクライマックスのないセックスのようなものだ。
話はちょっと変わるけど、最近ある人のブログを見ていて、そこに載せられている一連の雪の風景に魅せられてしまった。 ブログの著者は北海道の旭川周辺に住む女性の方である。 毎日のように更新される北国の雄大な雪の平原の有様は、見ているだけでシンとした冷たい空気が、服の隙間から肌に沁みこむような気がする。 零下20℃の世界だそうだ。 冬山の写真などはどこにでもあって、僕なんかには全部同じ山のようにしか見えないのでつまらないけど、こんな雪原の世界が日本にあるなんて今まで気がついたことが無かった。 ゴミゴミした市井の片隅に生きる僕のような人間としては、写真を見るだけでゆったりとしたおおらかな気分になった。 そしていつか行ってみたいと思った。
それから、僕がこんなに北海道の雪の世界に惹かれたのは、このところ偶然にも、村上春樹の 『羊をめぐる冒険』 を読んでいたせいかもしれない。 主人公の「僕」が探し当てて閉じ込められる冬の山頂の屋敷は旭川の近くらしかった。 この長編小説の中で描写されている風景がブログの写真と重なってしまったようだ。
ともかく、キキさんのブログにはすばらしい雪の世界が開けているから、このブログぜひ訪ねてみてください。

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