過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

Profile

September30

Author:September30

Visitors Counter

Search form

ボストンのこと、小澤征爾さんのこと

T75church-blognew.jpg

クリスチャン・サイエンス教会
Boston, Massachusetts USA


ボストンにあるクリスチャン・サイエンスのマザーチャーチは、毎年一回のコンベンションに何万人という信徒が世界中から集まって来て、ボストン内外の主なホテルを完全に借りきってしまう。 古都ボストン周辺には大小の美しい教会が数え切れないほどあるなかで、この教会の建物は巨大な灰色のコンクリートの塊という感じがした。 古い教会の持つあの荘厳さのようなものは感じられないが、その仰々しさに圧倒されることは確かだ。

この教会からマサチュセッツ・アベニューをはさんだ向いにあるのがシンフォニーホールだった。 アムステルダム、ウィーンのそれと並んで、世界の三大コンサートホールといわれるらしいが、ここのホールは開かれたのが1900年だから、何世紀もの歴史を持つヨーロッパのそれとは比較にならないほど新しいわけだ。 このあたりはボストンのバックベイと呼ばれる地域で、シンフォニーホールのすぐ裏手には著名な音楽学校のニューイングランド・コンサーヴァトリ-があるし、近くにはボストン・コンサーヴァトリー、バークリー音楽院、などもある。 それ以外にもボストン内外には大きな大学の音楽部やプライベ-トの音楽アカデミーなどをいれれば、音楽家になるための教育機関が実に多い。

このシンフォニーホールをホームグランドとして世界中に知られているのがあのボストン・シンフォニーとボストン・ポップス・オーケストラ、それにヘンデル・アンド・ハイドン・ソサイエティである。 ここでのコンサートはクラシックと限られておらず、それほど多くはないけれどジャズのコンサートもあって、僕はオスカー・ピーターソンのトリオをバックにエラ・フィッツジェラルドが歌うという豪華版の演奏を聴きに行ったことがある。

ちょうど僕がボストンに来たばかりの1970年代のはじめに、小澤征爾さんが新しくボストン・シンフォニーの常任指揮者として着任して来た。 その頃はボストンでもまだ日本人の音楽留学生は数が少なかったから、あちこちのサークルに顔を出しているうちに自然と小澤さんとも知り合いになった。 一介の音楽学生であった我々からみれば小沢さんはそれこそ雲の上のスーパースターであったが、ふだんの小澤さんはまったく気取らない優しい人だった。 ボストン・シンフォニーのオープンリハーサルは切符を買えば誰でも聴くことができたが、経済的に余裕のある留学生が多かった中で、小澤さんは貧乏学生の僕をいつも楽屋口から入れてくれて、美しい入江美樹さん(小澤さんの奥さん)の横で演奏を聴いた。
それより十年ほど前に日本に帰った小澤さんが、N響を指揮して団員からボイコットされるという事件が起きた時に僕はまだ東京で大学に行っていた。 その真相は忘れてしまったけど、自分のワイフを気軽にリハーサルに連れていくというような風習を持たない旧弊な日本の音楽界で、小澤さんは異端者扱いをされたようなところがあったようだ。 その事件のあと、彼は 「石をもて追わるるごとく」 アメリカに帰ってきた。
小澤さんはボストン・シンフォニーの常任指揮者であるばかりでなく、タングルウッドの音楽祭のディレクターも兼ねていたから、ボストンの市民はこの若い日本のマエストロを熱狂的に愛した。 彼はボストン・シンフォニーを三十年ちかくも指揮したが、そんな例は世界の音楽の歴史にも珍しい。

数年前に健康を害した小澤さんは日本に帰って養生されていたが、最近はまた元気を取り戻して日本で活躍されていると聞くのは嬉しいことだった。 しかし僕の記憶に住む小澤さんはやはりボストン時代の小澤さんだった。 冬になると、踵(かかと)に届くほど長いシープスキンのコートをぞろりと着て、雪の降るニューバリー・ストリートの雑踏の中を歩く世界の「オザワ」を、行き交う人々は皆振り返った。


にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ
スポンサーサイト

コメント:

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012/02/20 []  # 

* Re: No title

鍵コメさん、いつも貴重な情報を頂いてありがたいことです。
このサイト、さっそく訪ねてみましょう。
2012/02/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

この場所知っています。
MGHへいく無料バスの停留所の近くだったので・・・
こういう教会だったんですね!

3月5日のニューベリーStも・・・
今月下旬には ボストンへいくよていので 10年前とどんなにかわっているのか・・・楽しみです。

今日 小沢征爾さんの一年間完全休養が発されました。
肺炎による体調不良を改善されるためだそうですよ。
2012/03/07 [okko] URL #- 

* Re: No title

okkoさん、10年ぶりのボストンは楽しみですね。行きたいところがありすぎて困るのではないですか。
どうか良い旅を。
2012/03/08 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

トラックバック:

>>>> http://blog1942.blog132.fc2.com/tb.php/319-ae8616e2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)