過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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プロヴァンスの旅 (1/2) Mont Ventoux

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Mont Ventoux, France


フランスのプロヴァンスにはモン ヴァントゥ(Mont Ventoux)というこの辺では一番高い山がある。
何よりもこの山を有名にしたのは、例の自転車レース、ツール・ド・フランス "Tour de France" だろう。 標高1912メートルだから、日本で僕の愛するふるさとの山、米子の大山より180メートルだけ高い。 しかも大山とちがってモン ヴァントゥは舗装された道が頂上まで通っていて車なら誰でも登れるのである。 もちろん自転車でも登れるわけだけれど、これは僕にとっては空を飛ぶのと同じくらいに不可能なことに思えた。

11月のある快晴の日に、僕の運転するメルセデス・ベンツの馬鹿でかいヴァンはわれわれ7人の一行を乗せて、 かなり険しい坂を喘ぎながら登り続けてここの頂上までやって来た。 運転する僕は山側のサイドなので気にしなかったが、逆のサイドに乗っている人達は、フェンスの無い道路を走る車の1メートル足らずのところに深い谷底が見下ろせて、生きた心地が無かったとあとで言っていた。 そういえば、車内がいつもと違ってなんとなく静かだったのはそんな理由があったのだ。
途中、色とりどりのレーシングスーツに身をかためたバイカーたちを何十人も追い越した。 中には明らかに60代、70代の年配のバイカーもいてそのチャレンジ精神に敬意をはらいながら注意深く彼らを避けて登った。 (自分に不可能なことができる人に、それがバイカーであれ芸術家であれ政治家であれ左官屋であれコンピューター技師であれ、多大の敬意をはらうのは僕の性癖なのだ。)

モン ヴァントゥの頂上からの眺めは、まさに絶景だとしか言いようがない。 ここに実際に立ってみた人にしかその美しさは理解できないだろう。 僕はこの広大なフランスの平野が360度見渡せる山頂に立って写真を何枚も撮った。 そして撮りながらこの雄大な風景が、シャッターを切るたびにただのこじんまりとまとまった、つまらない絵葉書の風景写真となってカメラに記憶されてゆくのをはっきりと感じていた。
名物の強風が今日も激しく吹いていて、風に向かうとそんなに体重の軽くない僕でさえうしろになぎ倒されそうだ。 子供ならそのまま風船のように吹き飛ばされて、あっというまに青空に舞い上がってしまいそうな激しい風だった。 そういえばモン ヴァントゥの Ventoux とは、強風という意味のフランス語だったのを思い出していた。
山頂に建てられた白塗りの測候所の壁の陰で一服しているパチクリさんの口から、突風が容赦なくタバコをもぎ取っていった。


(続)


人生とは自転車のようなものだ。
倒れないためには走らなければならない。
Albert Einstein
  



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コメント:

*

モンヴァントゥは私達自転車ファンにとっては馴染みの峠ですが、いつでもそんなに風が強いんですね。一度は上ってみたいものです(自転車で)。アイシュタインの言葉、自転車操業の私の生活では、ついつい納得してしまいます。
2010/11/04 [川越] URL #uvrEXygI [編集] 

*

フェンスのない崖の道・・・想像しただけで身震いしそうです。
人生が自転車だと、疲れちゃいますね~(笑)
私は汽車がいいです。
各駅停車で、時々途中下車したりして・・。
2010/11/04 [bluemillefeuilleURL #Xlf.8pIU [編集] 

* Re: No title

川越さん、そうでしょうね。自転車ファンにとっては一度は行ってみたい場所でしょうね。
その上、川越さんの好物の毒キノコも豊富にあるし(笑)
川越夫妻なら自転車で登るのは問題ないでしょう。
頂上の手前まで登ると上にいる連中が「アーレー、アーレー、アーレー」と声を合わせて応援してくれます。

2010/11/05 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ハナさん。
『人生とは汽車のようなものである。 もし乗り遅れたらその次の汽車に乗ればよい』 (September30)
2010/11/05 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

絶景ですね。
空も広くなにより荒涼とした眼下の山の連なりが旅情を掻き立てます。
フランスには思いのほか険しい道が多くうずうずしているんですよ。
2010/11/06 [とらURL #CxmuEvOE [編集] 

* Re: No title

とらさん、この山は世界的に有名なわりにはまったく観光地化されたところがなく、頂上にはキャンディを売る屋台がひとつ出ているだけで他には何もないのですよ。
ここは今回の旅行のハイライトの一つでした。
過ごした時間はわずか数時間なのに。
2010/11/06 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

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