過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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熱と原色の町から

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熱の色
Puerto Vallarta, Mexico


メキシコには一度だけ行ったことがある。
それもバカンスとかではなくて仕事の関係で招待されたのだった。 僕には世界中で行きたい国はいっぱいあるのだけれど、不幸にもメキシコはそのリストに入っていなかった。 だから自分の選択ではなくて行くことになってしまったこの旅行に、最初はあまり興味が持てなかった。 行く先はメキシコの西海岸にある有名なリゾート地で、周りのアメリカ人たちは 「お前さんはラッキーだよ」 みたいなことを言って皆うらやましそうな顔をした。 以前、僕がフランスの片田舎に二週間行ってくる、と言った時は 「へー、何しに?」 と不思議そうに聞き返した、その時と同じ連中である。
それでも出発の日が近づくにつれて、旅行をする前のいつもの興奮が少しづつ昂まって来て、写真機材の準備などを念入りにしていた。


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こんにちは 海から来た怪物さん


メキシコに来てまず最初に感じたのは「熱」それから「色」だった。
「熱」はとにかく暑い。 というより熱い。 今日の気温は40度だった。
町で行きあう人々(その100%が観光客)はまず一人残らず水のボトルを、まるでそれがこの国に滞在する免罪符であるかのように手にしていた。 そこら中で売っている一本3ドルもする水のボトルが次から次へとよく売れてゆく。 夏という季節を愛する僕は暑いのはまったく苦にならない性質だったが、この亜熱帯の太陽の下ではまるで頭髪が焦げてしまいそうな熱をまともに受けた。 けれど湿度が低いせいで、日陰に入るとひんやりとして汗がすぐに引いてしまう。

それから「色」
ここは、いくつかの原色の絵の具をチューブから絞り出して、それをそのままキャンバスに投げつけたような、プリミティブで挑発的な色彩の世界だった。 モノクロの写真が存在しない風景、それがメキシコだった。 実際には僕はモノクロをかなり撮ったけど。


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北回帰線


僕が滞在しているホテルは建てられてからまだそれほど経っていない、千近くの客室を持つ巨大で超近代的な建物だった。 ホテルの従業員はいうまでもなく全員が現地のメキシコ人で、何百人ものメキシコ人が何百人ものアメリカ人に仕えるさまは、これはさながら植民地の光景だった。 ヨーロッパでは評判のあまり良くないアメリカ人が、ここではまるで王侯のように振舞うことを許されていたが、アメリカ人でない僕は、一種の居心地の悪さを感じないわけにはいかなかった。
ホテルを徒歩で出て近辺をうろうろと歩き廻った時に(そんな事をする客は他に一人もいない)、何かを完全に遮断するように高く巡らされたコンクリートのフェンスの裏側を覗くと、そこには質素というよりも明らかに貧しいと言って間違いのない夥しい小屋が並び、そして確かにそこには人々の生活が営まれていた。 こんな形で、貧と富が隣り合わせに共存する光景を、僕はかつて何処でも一度も目撃したことが無かった。
そうか、アメリカ人がこの人たちの生活を支えているから、その代償として王侯のような奉仕を受けることを期待しているのかもしれない、という気がする。
底抜けに陽気で勤勉に働くメキシコ人たちが、客である僕らに一日中見せる笑顔の奥にはいったい何があるのだろうか? それとも何も無いのだろうか? 

メキシコにもう一度行きたいか? と問われたら、僕の答えはたぶん、NOだろうなと思う。

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コメント:

* 鮮やかな曖昧

ふしぎですね~、海から来た怪物さん。
タコのようにも見えるし、宇宙人のようにも神様のようにも。。。
この目の覚めるような海辺に忽然と立っているんですか?
怪物さん、なにゆえここに?(笑)

画家になった元劇団員から聞いたのですが、南仏プロバンスの光はそれはもう眩しくて、
色が本当にブライトに見えるのだと。
だからゴッホの色彩はデフォルメじゃないんだと。
イタリアに型と染料を持っていって友禅を染めたら、
驚くほどシャープな色彩が出現して、まさしくのイタリアン・モダンになった、
という話も聞いたことがあります。

気候が影響するということなのか、
原色の町に住んでいる人は、原色の割り切りもできるのでしょうか。
そう考えると日本とは、朧ろ霞や、ほの暗さや、
すべてにあえかな紗のかかった国なのかもしれません。

そんな想いがとりとめもなく頭の中にただよってきました。
戸惑うSeptemberさんは、やっぱり日本人なんですね。
これは褒め言葉ですヨ。(笑)


2012/08/25 [belrosa] URL #- 

* Re: 鮮やかな曖昧

belrosa さん

海から上がってきたこの怪物というか、妖怪というか、
でも怖い感じはしませんね。 
左のタコの精は中国の賢人を思い出させるし
右のは何だろう。豚さんのような鼻を持つ優しい女性のような気がします。、

こんなイマジネーションに富んだ彫像がこの海辺にはたくさんありました。
http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-230.html
http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-290.html

40度の熱気の中では生半可な色彩は霞んでしまいます。
色そのものが存在を主張するために
町全体が強烈な色彩を持つことになるのでしょう。
2012/08/25 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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