過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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レディファーストの国 アメリカ

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少女たちの夢
Dayton Art Institute


先日のこと。 近所に住む知人の中学生になる娘さんが、町の催し物の一部として美術館でバレエを踊るというので、出かけてみた。
美術館の正面入口で重いガラスのドアを引いた時、自分のすぐ後ろに幼児を抱いて小さな子供の手を引いた日本人の女性がいるのに気がついて、僕はそのままドアを支えると彼らを先に中に入れてあげた。 「ありがとうございます。」 とその若いお母さんに日本語で感謝されたのはともかく、5,6歳の男の子が大きな声で 「ありがとう」 と言ったのに驚いた。 そして微笑ましいと同時に嬉しくなって、僕は思わずニコニコとしていたようだ。

女性や子供、老人のためにドアを引くことなどアメリカでは日常茶飯事で誰でもしている。 電車の中で席を譲るのも同じで、若くて元気のいい女性ならともかく、老人や子供連れの母親には即座に誰かが立って席が譲られる。 だからどこかの国のようにシニアの専用席だとか、女性専用の車両とかは全く必要がない。 誰もが意識することなく自然とそうしてしまうのである。 またそうされた方でも "Thank you!" と感謝しながらためらわないでその見知らぬ人の好意を受け入れる。 これはどこでも見られる日常の光景だ。 
古いアメリカ映画でよく見るような、食卓で女性のために椅子を引いたり、女性が席を立つたびに同席の男が全員立ちあがる、というのはさすがにもう見られないが、部屋に入る時、エレベーターに乗る時、電車に乗る時など、一緒にいる連れが女性の場合に男性が先にたって入る、ということは今でもまず絶対にないといっていい。

これはレディファーストなどと格好良く呼んでるけれど、実はアメリカという国の男尊女卑の表れ方のひとつに違いないと思う。
西部開拓時代の昔から女性はか弱いもの、非力なもの、俺たち男が常に危険から守ってやらないと何もできないもの、という通念が、そのまま今でも残っているのである。 それだけではなく、女性というものはしおらしく男の後をついてくればいいのに、家庭内ではいっぱしの母権を主張してガミガミとうるさいことを言うから、まあ外に出た時に人前で上げてやれば機嫌も良くなるだろう、と一種のおべっかの意味もあるのかもしれない。

現代のアメリカも紛れなく男尊女卑の世界だ、ということは毎日のニュースを見るとわかる。 
会社で男性の同僚と同じ仕事をしているのに女性の給料が低い。 男性より仕事ができるのに昇進は男性に先を越される。 そういう女性がこぞって会社を相手に起訴を起こす。 そして莫大な慰謝料を勝ち取る。 雇用者側でもそれを恐れて最近は、少しづつ改善されてきているようだ。
(とくにアメリカの場合は男女差別に加えて人種差別が大きく絡むから、ことは何倍も複雑になってくるのだが・・・)

だから現代の「すべてに男女同権」を主張する女性たちにとっては、レディファーストの習慣など真っ先に拒否をしたくなるものじゃないか、と思うんだけど実際にはそういう女性たちも日常の生活では、レディファーストを古き良き習慣として素直に受けているようだ。
今夜のテレビでも、オバマ大統領がローズガーデンから屋内に入る時に、夫人のミシェルのためにドアを開けてやっていた。

また、これは女性や老人とは限らず相手が誰でも同じだが、路上や店内でお互いにぶち当たりそうになった時など、必ずといっていいほど双方が顔を見合わせて微笑をしながら "エクスキューズ・ミー" と謝る。 誰かの前を横切るときも "エクスキューズ・ミー" だし、誤って人の体に触れてしまったりした時も "エクスキューズ・ミー" である。 
だからアメリカではどこへ行っても、サンキューのキューとエクスキューズ・ミーのキューが、キューキューと響いているのだ。 人間同士が誰とでもうまく暮らしてゆきたい、というアメリカ人の生活の知恵と言えるかもしれない。

日本ではどうなのか?
それは僕なんかよりは読者の方がよくご存知だろうと思う。



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コメント:

*

日本はもう手遅れになりつつあります。
自分たちさえよければ。いつから何が原因でこんな国に
なってしまったんでしょう。自分たち(大人たち)の
保身のためだけに平気で子供たちに放射能を浴びせる事が
できるのです。ドアは自分が通れればそれでいいのです。
2012/10/02 [ダイムラー] URL #- 

* Re: No title

ダイムラーさん

私はまだ諦めてはいません。
長い年月異国に暮らして、様々の国や人を見て、
日本人ほど良識を持った優しい国民はいない
と悟ったからこそ、
私は自分の晩年になった今、日本に回帰して、もう一度住んでみよう
と決心したのです。

私はまだ諦めてはいません。
2012/10/02 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

お誕生日のお祝いを言い損ないました。
台風騒ぎで30日が通りすぎちゃった。
2日遅れですがあらためて「おめでとうございます」

日本のニュースを見てて思うのですが日本人て悲観的です。
円高でも円安でも嘆いています。
海外にお住まいのかたに日本の良いところを指摘されて、
そう思ってみればスポーツでも日本人選手は卑怯なことをしません。
近隣の国とのゴタゴタにしても、
国旗を踏みにじるとか略奪を行うようなことを日本人がすることはありません。
落とし物も届きますし、夜間の外出も恐くありません。
(恐いとしたら増えてきた外国人・・・)
それが普通だってことが素敵です。

レディーファースト?
そんな子供扱いされなくて大丈夫です。
だって男だからって熊のように強いわけじゃない(笑)

帰国を諦めないで!茶飲み友達になりましょう!

2012/10/02 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

驚きました、帰国される予定なんですね。
この国を愛せていない僕には複雑な気持ちです。
僕自身もあきらめていませんよ、基本的に人間嫌いですが
これからも人間に興味を持ちつつ愚痴をぶつぶつこぼしたいと
思っています。
優しい国民…。日本中旅して周りましたが沖縄を
思い出します。体からにじみ出てくる優しさを。

2012/10/03 [ダイムラー] URL #- 

*

September30さん、
遅くなりましたが…お誕生日おめでとうございます!

アメリカでキューキュー響いているというのは面白いですね。

日本人は…
謝ったりお礼を言うことをあまりしない民族なのかもしれない、と
思わざるを得ません。

実際、暮らしてみると
道幅の狭いところで自転車ですれ違う時によけて待っていても
何も言わずに通り過ぎて行く人が多いことに驚きますし、
ぶつかりそうになっても謝る人にも出会えません。

電車やバスで快く席を譲る人もほとんどいないし…。
忙しすぎて大切な何かを忘れてしまっている気がします。

もちろん、そうでない方もいらっしゃると思いますが。
2012/10/03 [tony] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: No title

ムーさん

言い損なったままでも良かったのですが、ともかく、ありがとう。

レディファーストは世の日々の営みをなんとなく住み易くするための
潤滑油のようなものかもしれません。
男だって熊のように強いわけじゃないとムーさんは言いますが
強くないからこそ西部劇の男たちは銃を持ち始めて
それが現代の社会の大きな癌として残ってしまったのです。

茶飲み友達ですか?
うーん、
お互いにまだそんな歳ではないし、
それで満足できるかなあ。(笑)
2012/10/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ダイムラーさん

日本を愛せるようになるのに
ほとんど一生をかけてしまいました。
これからはその愛を実らせる時期です。
たとえそれが、自分の中だけの小さな日本であるとしても。

もし帰国したら必ずもう1度行ってみたいのが沖縄です。
50年近く昔にしばらく住んだ返還前の沖縄の話を前に書きました。
http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-23.html


2012/10/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

tony さん

ありがとうございます。

思うんですけど
日本人は自分の感情を素直に表現するのが
あまり上手ではないような気がします。
表情も変えないし Body Language もほとんどありません。
そういうことを表に出さないのが美徳なのだ
と何百年来思われてきたのでしょうね。

記事の冒頭の日本女性のように
子供にきちんと躾ができている家族を見て心からほっとしました。
そこにはいないご主人の人柄さえ偲ばれるようでした。
2012/10/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

“日本を愛せるようになるのに
ほとんど一生をかけてしまいました”
あーそんな気持ちになれるのか。そんな時が来るのか。

ところでレディーファーストとは元々騎士が自分の盾にするために女性を先に行かせていたということを聞いたことがあります。
あながち嘘でもないと思います。レディーファーストの正体見たり枯れススキ。
しかし現代のレディーファーストは気を使わない日本人社会には浸透した方が良いと思います。
2012/10/08 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん

騎士が自分の盾にするために女性を先に行かせた、という考察は
米国が以前の戦争で、黒人を危険な前線に先に送って盾にした
という話(本当なのか嘘なのか)を私に思い出させました。

現代の日本ではレディーファーストがあってもいい
というのには賛成です。
でも、
「男はそんなことをすべきじゃない」 という意識って
なかなか根強いと思いますね。
2012/10/09 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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