過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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海の旅 (1/2)

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Miami, Florida USA


豪華客船のクルーズ、というものを一度だけやったことがある。 といってもよく旅行社のパンフレットで見る 『地中海を巡る十日間の旅!』 とか 『ヨーロッパの島巡り、夢の中の二週間!』 とかのわくわくするような贅沢なクルーズというわけではなく、アメリカのマイアミ・ビーチから中米のバハマまでの二泊三日の船旅だった。 それも自分が計画したのではなくて僕の勤める会社が招待してくれた旅行だった。

マイアミで乗船してすぐに非常時の避難訓練というのがあり、船客が全員ライフジャケットを着けさせられて上下二つの甲板に出てきた。 その数はホワイトハウス前に集まった反戦デモの大集会を見るような、うんざりするほどの群衆だった。 それが訓練が終わってそれぞれのキャビンへ引取ると船中がひっそりとしてしまうので、いまさらに船の巨大さを実感してしまう。 こんな巨大な鉄の塊が水に浮かんでいるということを僕はどうしても理解することができない。 理解できないといえば、あの飛行機という乗り物だって鳥のように羽ばたくことなしに空を飛ぶということが不思議でならない僕なのである。

船の中には、まあなんともありとあらゆるものがあった。 無いものといえば(そしてむしょうに懐かしくなったのは)土の地面くらいだろう。 大小無数のレストラン(鮨の屋台まである。不味い!)、カジノ(あっというまに金をすられる)、劇場(二流のダンシングチーム)、チャペル(船が沈まないようにお祈りをした)、エクササイズルーム(見ているだけで痩せる)、ミニゴルフ(ここまで来てなぜゴルフを?)、プール(泳ぎたいのなら船なんかに乗らないでビーチへ行けばいいのに)、等々々・・・
上のデッキに出て雄大な海原を眺めるのは気持ちのよいものだけど、何時間も変わり映えの無い海を眺め続けるわけには行かない。 しかたなくまた下へ降りて金を使うようなシステムになっているようだ。

ディナーの時間までまだずいぶんあるので、結局僕は自分のキャビンへ戻ると最初の寄航地のナッソーの酒屋で驚くほど安く手に入れた英国産の極上のモルト・ウィスキーを開けて、A.E.ホッチナーの『パパ、ヘミングウェイ』を読み続けた。  
ヘミングウェイがスペインの小さな町の裏通りのバーに入ってマテニーを飲んでいたら、となりにいた旅行者が彼を見て
「こんなところであの世界的大作家のヘミングウェイがマテニーを飲んでるなんて、まったく信じられないな」 と連れに言ったら、それを耳にしたヘミングウェイが言った。
「じゃあ、何を飲んだらいいんだね?」

こんな気の利いた言葉がサッと出てくるような人間になりたかったなあ。

(続)


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コメント:

*

マイアミから船ですか〜。Septemberさんは色々な旅されてますね!羨ましい!
ボクは取り敢えずマティーニがメニューに載ってる船に乗ことからですねぇ。^^

それにしてもいつもナイスな写真。
これがどこから撮られたのか気になって仕方がありません。^^
2012/05/12 [tra] URL #CxmuEvOE [編集] 

* Re: No title

traさん、マテニーは酒を出す場所ならどこでも必ずあります。 ふつうはジンをベースにするのですが私はもっぱらウォッカ・マテニーです。 昔はベルモントを数滴垂らすだけの超ドライで飲みましたが、歳をとるにつれてそうではなくなりました。

この写真は停泊中の自分の船から向かいの埠頭に入ってきた客船を撮ったものです。
2012/05/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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