過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

Profile

September30

Author:September30

Visitors Counter

Search form

ポイントを決めよう・・・写真のレシピ(2)

2006mexico009-blognew.jpg

二つの白い椅子
Puerto Vallarta, Mexco



写真のポイントとは、
「いったい何を撮ろうとしたのか?」 あるいは 
「何に惹かれたのか?」 ということだと考えていいだろう。
だからシャッターを切る前に一瞬立ち止まって、この質問を改めて自分に投げかけてみることはとても意味のあることなんだけど、 といってもこれはそんなに易しいことじゃない。 人物だとかペットだとか花だとか、最初から被写体が決まっているものならまず問題はないとして、たとえば風景写真などで、「きれいな景色だから」というだけの理由でパチパチと写真を撮ってしまうというのは誰でも経験のあることだ。 そういうスナップショットに、その風景を見たときの自分の感動が表れるかというと、それはかなり稀なことである。 「あれ? こんなんじゃなかったのに」 とがっかりすることが多い。 撮った自分がそう思うくらいだからましてや他の人が見ればさらにその感動は薄れる。 その写真を見たあなたのご主人や会社の同僚が 「すてきだね」と言ってくれたとしても、それは大体の場合お世辞だと受け取ったほうがいいですよ。 
風景写真は難しい、といわれるのはそういう理由なんだ。

風景写真に限ったことではないが、もしシャッターを切るまえに最初からポイントが決まっていたら、そのポイントを強調するために幾つかのオプションがある。

・ ポイントにうんと近寄って撮る。 少しではなく本当にうんとである。 これは旅行先などでスナップショットを撮る人たちの頭に徹底的に叩き込んでおいてほしい。 「撮った映像が失敗に終わったとしたら、それは近寄り方が足りなかったからだ」 と言ったのはたしか戦争写真家のロバート・キャパだった。 こと写真に関する限りこれ以上の名言はない。 キャパはあまり近寄りすぎたために戦場で地雷に吹き飛ばされて死んでしまう。
・ 近寄れない場合には望遠レンズを使う。
・ ポイントが画面の中心近くにくるとか、画面内の大部分を占めるような構図を取る。
・ ポイントをシャープに、それ以外をボカす (レンズの被写界深度を利用するか、フォトショップ内での処理。 被写界深度のことは後日説明しましょう)
・ 構図内で色調や明暗や形がアクセントになるものをポイントとして選ぶ

この最後のオプションは、もともとポイントのない画面にポイントを見つけるというか、ポイントを創造するというか、なかなか興味深い作業だ。 上にあげた写真はその一例です。

オリジナルのカラー写真はこれ。

2006mexico009-blog2.jpg


見ればわかるように、これといったポイントもないし、何の変哲もないありきたりのスナップショットだ。 
前回の『写真のレシピ(1』で書いたように、このショットをモノクロにして眺めていた時に、アイデアが沸いた。 この2個の白いイスがポイントになるかもしれない、と。
あとは、フォトショップでコントラストを高くしたり、ポイントであるイスの白が浮き立つように全体を暗めにおさえたり、空の雲を焼きこんだり、そのほかあちこちをちょっちょっといじった結果が上のモノクロ写真となった。
それに偶然だけど、建物の影がまるで計算されたように、テニスコートの白線と正確に平行線を描いているのが僕はとても気に入っている。 なぜ? と訊かれてもうまく答えられないんだけど、僕にとってはとても意味があるように思える。 刻々と変わる太陽と地球の関係を、このラッキーな瞬間に記録した、ということになるのかもしれない。

果てしない亜熱帯の風景の中で無人のテニスコートにポツンと置かれた白いイスは、遠く異邦の地に来てそれを眺めている僕自身の孤独感を象徴しているような気がする。


にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ
スポンサーサイト

コメント:

* 「うんと」ためになりました

初めてこちらに投稿します。
前回(写真のレシピ1)からとても興味深く読ませていただいております。写真を撮りはじめた人間として、
このレシピシリーズはとてもありがたい内容です。September30さん、どうもありがとう。

カラーからモノクロへの変換術に触発されて僕もやってみましたが、レシピ例ほどうまくいきませんでした(苦笑)。

ポイントにうんと近づいて撮るというアドバイスは、目からウロコです。写真が成立するとはどういうことなのか、
そのイロハのイをわかりやすく教えていただいたような気がしています。これからもよろしくお願いします。

2012/06/15 [centerfield] URL #8bsxoj2c [編集] 

* Re: 「うんと」ためになりました

centerfieldさん、はじめまして。
このシリーズは細々と続けていきたいと思っています。
とくにテーマにして欲しいようなことがあればどうぞ遠慮なく言ってください。
2012/06/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

私も自分の写真の撮り方を改めようと
最近思っていたところなのでじっくり読ませていただきました。

写真に“心”が入らないことが多く、悩んでいます。

パソコンでの加工は何度か試しましたが私にはむいていないようです。
まずはポイントにしっかり寄ることから始めたいと思います。
続きも楽しみにしています。
2012/06/16 [tony] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: No title

tonyさん、
写真に心が入らないというのはどういうことなのか考えて見ました。
「撮りたい」と思って撮るのではなくて「撮るべきだ」と思って撮る
ということなのでしょうか。

私はパリでは「撮りたい」ものが角を曲がるごとに現れてくるので
まるでキャンデー屋に入った子供のように有頂天でした。

旅人の眼と住人の眼は違う
ということなのか、とも思います。
2012/06/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

トラックバック:

>>>> http://blog1942.blog132.fc2.com/tb.php/381-be538918
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)