過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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爪を噛むのは・・・

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ウィンドウの女
Cambridge, Massachusetts USA


ボストン時代に撮った古い写真のコンタクトシートを今見ると、まるで昔の日記を読み返すようにその頃の自分が浮かび上がってくる。 アパートから妻が出て行ったあとの僕はどんどん孤独の沼に沈み込んでいって、いつもやみくもに町をうろついていた記録がそのまま写真になって残っていた。 
妻といっしょに暮らしたアパートに一人でいるのがいたたまれなく、といって他の場所へ引越しをするような余裕もなかったから、僕はカメラをさげてほとんどいつも外に出ていた。 そしてできるだけ遅くアパートに帰ってくると、酒を飲んでレコードを一晩中聴きながら仔猫のムチャチャを相手に夜を過ごした。
周囲にいた友人たちも僕の度重なる拒否に会ってしだいに寄り付かなくなり、ほんの数人の人にだけ僕は心を開いていたようだ。 

***

日本で昔 「同棲時代」 という言葉が流行ったことがあった。 そのころ聴いたこの歌はもう他界したヴァイヴの平岡精二が若いペギー葉山のために書いた曲で、まだ十代の少年だった僕は日本では珍しい洒落たシャンソン風の歌だな、ぐらいにしか思っていなかったと思う。 遠い将来に自分が似たような経験を持つことになるなんて夢にも考えていなかった。 と言っても爪を噛む癖が僕にあったわけではないし、妻もペギーさんのような母性的な女性だったわけじゃないんだけど・・・
そういえば、彼女の柔らかなアルトは、あのころボストンで僕に優しくしてくれた声楽家のアンの声にそっくりだ。


『爪』
ペギー葉山



古い日記から』 というより古いブログから。



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コメント:

* どこまでが虚だったのか

ペギー葉山さんって、こんなに艶のある声をしてたんですね、
近年の声しか聴いたことがなかったので驚きました。

『爪』、本当はこんな語り歌だったんだ、
『あなたの思い出』に乗り換わるアレンジがまた…
レパートリーにしたくなりました。

急に客演が決まったので、今夏のステージはおあずけになってしまったんですけど、
歌いたい作品が増えればそれだけエネルギーも溜まっていきますものネ、
よし、来年だ。(笑)

爪を噛むのをやめない男…いましたねぇ。
田舎の素封家の三男坊で、こっちに出てきて主演を張る舞台俳優になったけど、
頭にくるほど甘え上手で、あたしに怒られてもやさしくしてくれる女に困ることはなくて、
派手に遊びまわってばかりだったけど、台本を読んでいるときはいつも爪を噛んでた。
頬に触れられると痛いから、またそれで怒られて。(笑)
たぶんもう、彼の爪はきれいなんじゃないかと思います。
俳優をやめたから。

映っているのはどこまでが実なのか、
「ウィンドウの女」は、ちょっと自分と似ているような気がします。
なんてな。(笑)

2012/06/11 [belrosaURL #- 

* Re: どこまでが虚だったのか

belrosaさん、
『あなたの思い出』が最後に出てくるところなどなかなか趣味のよいアレンジですね。
ぜひレパートリーに加えて歌ってください。
爪に関してはどうやらあなたご自身の思い入れもあるようですし・・・

「虚か実か? それが問題だ」
とシェークスピアなら言うかもしれませんが、
「虚か実か? どちらも同じことだ」
とSeptember30は言いました。
2012/06/11 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 人生は舞台

ダメだなぁあたしは。やっぱりカッコよく持ったままじゃいられないや。(^、^;)ゞ

爪を噛むのをやめない男の話は、例の『貴方と嘘…』のエピソードのひとつなのです。
舞台俳優を歌手と、俳優をやめたからを‘人生を’に変えていただけると、
筋書きの一端が見えますか?

自分の実人生はとてもこんなドラマチックじゃないです。(笑)
Septemberさんの物語に乗ってみたくて、チョット悪戯をしちゃいました、ごめんなさい。
それがね、

「人生は舞台。男と女とりどりに すべて役者にすぎぬのだ」(意訳belrosa)

芝居のテーマがこれだったんです。
だからSeptemberさんからシェイクスピアの名前が出て、たまげましたよ、ここで出るか?!って。
なんだかもう…なんでもお見通しなんですね。(笑)

2012/06/11 [belrosaURL #- 

* Re: 人生は舞台

belrosaさん、
『貴方と嘘…』の筋書きがほんの少しだけ見えてきたようです。
この爪を噛む男は主役さんなんですね。
それでbelrosaさんの役は?

お芝居のテーマになったのはシェークスピアの言葉だったんですね。
彼の言葉で私の好きなのがあるんです。
「女でなければ気にすまい・・」
2012/06/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

爪を噛む男のイメージは、
ちょっと色っぽくて甘ったれな年下男って感じ。
経験無いです。

女性の柔らかいアルトの声って本当にいいです。
日本じゃ最近めっきりいなくなりました。
子供っぽい声ばかりになっちゃってる。
どうしちゃったんだろう。

声といえば、
小学生の頃転校してきた男の子に「甘えた声出すなよ」
と言われてびっくりしたのを思い出します。
ませた男の子だったんだー。




2012/06/12 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* 一場のまぼろしに命を懸けて

あたしの役は…
その男・鳴海に捨てられた、ナイトクラブのトップシンガー奈々子という女です。

振り回され待ち続けたその恋に懲りて、今は歌だけあればいいとステージに立っていて、
落ちぶれて13年ぶりに戻ってきた鳴海を激しく拒絶するのだけれど、もういちど鍵を渡したら、
部屋に来る途中で鳴海は倒れて、今度は永遠の別れになってしまった。

「二度もあたしを捨てた。頭にくるあの男。」と火のように慟哭するのだけれど、
店のオーナーには、
死期を悟って奈々子の心に一生消えない刻印を押しに戻った、鳴海のその残酷は、
本当に惚れた女にしか与えることのできない愛の証しだということが、解っていて。

奈々子は鳴海と生きていくんです。この店で。
フランス映画『髪結いの亭主』の衝撃的な愛のモチーフを、
長年あたためて自分なりに昇華させて生まれたのが、この男と女でした。


「女でなければ気にすまい…」

初めて聞きました、なんて謎めいたフレーズ、、、何を?え、どういうこと?
この前か後かに続く言葉はあるんですか? Septemberさんの心を掴んだ核心は?

女なので、気にしてます、かなり取り乱しながら。(笑)

2012/06/13 [belrosaURL #- 

* Re: No title

ムーさん、
ペギー葉山のこの歌はいまだにマザコンの私に訴えてくるものがあります。
女性とはこんなに優しいひとばかりじゃない、
と身に沁みてわかっているはずなのに・・・

ところでこの彼はたぶん若い女に惹かれて浮気をしたんじゃないかな。
それ以外にふたりが別れることになる理由を考え付かない。
彼はその傷を一生ひきずって生きることになるなあ。
2012/06/14 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 一場のまぼろしに命を懸けて

belrosaさん、
帰ってきた鳴海さんはどのくらいの年齢だったのかな?
年齢はこのお芝居では重要な要素だと思うのです。
13年ぶりということはそんなに老いていないはずですね。
私が24年ぶりに日本に帰ったのは50歳のときでした。

『髪結いの亭主の』のテーマはこのお芝居に確実に昇華されていますね。

「女でなければ気にすまい」 はそれほど深い意味はなくて
たしか『テンペスト』だったた『ハムレット』だったか・・・
前後の言葉も覚えていません。

これは便利な言葉なんです。
昔、男女間のいざこざがあった時にこの言葉で楽になりました。
今でも、家内があれこれうるさくてかなわない時に、
この言葉を噛みしめます。
私にとっては鎮静剤のようなものです。
2012/06/14 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* それがあたしたちの人生

鳴海は50にはなれなかった、その寸前で絶たれる設定でしたね。
30になってマスコミに発見されてブレイクして、4,5年は芸能界で調子にノっていたけれど、
カネと女にだらしのない甘い男なので、結局はくだらない女性スキャンダルで転落して、
世間から急速に忘れられていってしまった人で。

それが、脳腫瘍になっていろんなことが薄らぎはじめて、
記憶がある内にもう一度自分を取り戻したくて、足蹴にして出て行った店に戻ってくるので、
奈々子も含めその事情を知らない人々は穏やかじゃいられないわけですよね、
なんでチャーリーさん(オーナー)は今さら鳴海さんを許すんだ、って。

でも鳴海という男にはやっぱり魅力があるので、みんな負けちゃう。
店にはいろんな男と女がいて、それぞれが芸と恋の間でヒリヒリした痛みにもがきながら、
毎晩、ショーという絵空事に血道をあげる人生を送っているんですね。

この、お客さまにとってのおとぎ話は我々にはまぎれもない実人生である、という裏腹が面白くて、
どこかでこのことを書いてみたいとずっと思っていて、
これと『髪結い…』に対する自分の解釈が結びついた瞬間に、この物語が見えたのでした。

50って、他のトシにはない、何か別の章に入っていくようなイメージを感じていて、
だから鳴海には越えさせたくなかったんですね。
Septemeberさんの帰国には、この年齢が意識されていました?


「女でなければ気にすまい」は、女性との諍いのあとに自分を鎮める言葉…

これは、相手が女であるからこそ気に障るんだ、つまり愛しているってことじゃないか、
と自覚して鎮める方向なのか、
自分は女じゃないんだから気にするようなことじゃない、男に女の生理なんて解らないんだから、
と客観視して鎮める方向なのか、、、
まさか、
相手をもう(自分の)女として見なければ気にすることもなし、という方じゃないですよね?(笑)

って全然違ってる気がする(- -;) 英語だとどういうフレーズになるんだろう?
うーん、うぅーーン???
…今日は一日、思考の森にハマりこんでました。(笑)
2012/06/15 [belrosaURL #- 

* Re: それがあたしたちの人生

belrosaさん、

『あなたと嘘と・・・』の霧が晴れて少しずつはっきりとしてきました。
オーナーのチャーリーさんが彼を許したのは彼に起こったことのすべてを知っていたのでしょうね。
でもオーナーも鳴海もそれをなぜ奈々子に言わなかったのか?

私の帰国では自分の年齢をまったく意識しませんでした。
それどころじゃなかったのです。
日本に帰ってタイムマシンから降り立って最初に感じたのは
ここは日本じゃなくて日本にすごく良く似たどこかの惑星へ迷い込んでしまった、
という恐ろしいような感覚でした。
そう、玉手箱を開けてしまった浦島太郎だったのです、私は。

「女でなければ気にすまい」は
『自分は女じゃないんだから気にするようなことじゃない、男に女の生理なんて解らないんだから』
が1番近いかなあ。
いわば男尊女卑の精神。
あらゆるものの中で1番すばらしいものは女だ、と思っている私だから
これが許されるのですよ。
2012/06/15 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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