過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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陰影礼賛・・・写真のレシピ(3)

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密会
Somewhere in USA


今日はフラッシュの話しをしよう。
新しいカメラを手に入れたら、まず最初にすることはフラッシュの自動発光機能をオフにすること。 最近のコンパクトカメラはたいがい自動フラッシュがオンになっているから暗いところでは勝手にフラッシュが発光するようにできている。 それを止めさせようというわけだ。 フラッシュは使いたい時にだけ使えるようにする。(それがどういう時かはのちほど説明) 
暗い場所ではフラッシュを焚かないと写真が撮れない、とあなたがもし思っているとしたら、あなたは間違っている。 すごく間違っている。 September30は耄碌したよぼよぼのアル中だと思うくらいに間違っている。 (そう思ってたでしょう?)

そのかわり、最近のカメラはその場の状況で感度が自動的に変わる機能がついているからそれをオンにしてやればいいのである。 ふだんはISOを100に設定しておいても周りが暗くなれば感度は自動的にISOが200、400、800、と増してゆく。 たいていのカメラなら1600とか3200まであるだろう。 そんな自動機能がついていないカメラならその場その場でISOを設定してやればいい。 繰り返すけど、フラッシュは必要ではない。 フラッシュはすべての悪の根源なのだ。 これはちょっと言い過ぎかな。

『光と影』があるから写真が存在する。 
フラッシュという前世紀の誰かが発明した機器は、その『影』の部分を一瞬の閃光でもって、容赦なく完全に殺戮してしまう。 そしてその跡に残されるのは残酷なほど扁平にデフォルメされて死んでしまった被写体なのである。
鼻をつままれてもわからないような暗闇(僕も表現が古いなあ)で写真を撮る場合は別として、普通ならそこに何かの光源があるはずである。 室内なら窓の外からの光、電灯の光、ろうそくの光、夜の戸外なら街灯の光、月の光。 そんな淡い光源が創り出す何ともいえず味のある陰影を大切にしたい。・・・・・つまり、谷崎潤一郎の言う 『陰影礼賛』 である。

ところが、このあまり融通のきかないフラッシュさんに御登場を願いたい状況がないわけではない。 それはカンカン照りの日中の戸外。 頭上に太陽があると、あなたの愛しいご主人の顔に醜い影ができてしまうし、夕陽など背後から陽が射していれば(いわゆる逆光線) 愛しいご主人の顔が真っ黒に潰れてしまう。 そんな時に暇を持て余しているフラッシュさんに発光をお願いすることで、ご主人の端正な顔立ちを浮かび上がらせることができる。 これはプロが「フィル・イン」と呼ぶテクニックです。 これはぜひ試してみて欲しい。 最近のカメラには必ずフィル・インのフラッシュモードがついているはずだから、それをオンにしてやるだけの話しだ。  
「うわあ、これほんとにあたしが撮ったの?」 とびっくりすることを保障します。  
つまり要約すると、フラッシュは暗い所で使うものではなく、明るい所で使うものなんです。

***

ところで、この写真の男女は若い人達ではない。 そしておそらく夫婦ではあるまい。 夫婦にしては彼らの周りに漂う緊迫感はどこか危険な匂いがしていた。 
この時のカメラのISO設定は6400だった。


写真のレシピ(1)
写真のレシピ(2)


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コメント:

*

とても参考にさせていただいてます。
決定的瞬間を見極める目や、効果的な構図を捉えるセンスはないけど
こんな色んなヒントを得て、実践すれば、少しでも進歩するのではないかと。
先日は、めぼしい写真を片っ端から白黒にしてみたり。
でも、そしたら一層アラが目立ったり。

ISO6400とは、すごい!私は使った事無いです。
2012/06/22 [わに] URL #- 

* なんだか

September30さんが直接教えてくれるのは貴重ですね。
小さなことを知らずに、ただとってるだけじゃだめなんですねよね・・・
最近のミュンヘンは夕立続きなのですが、雨って写真に写りこむんですかね。効果的な方法ってあったりしますか?

光と影といえば、最近の私はそんな生活の繰り返しです。さっきまでは、叫びたかったり、まじめに8時間すっと洗物をさえられたり。。しかしあまりにも周りが見えてなくて、根本的な世界を忘れていたようです。このお話を読んで思い直しました。
どうもありがとうございます。
続編楽しみです。




2012/06/22 [ineireisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: No title

わにさん、
白黒にして一層アラが目立ったら、
唇に人差し指を当てて、「しーっ」と言ったあと慌ててカラーに戻しましょうね。 (笑い)

一眼レフの高級機になるとISOは25600まではついているでしょう。
ニコンのD4など、204800まであるのですよ! 
(24800の間違いではありません)
マッチ1本の光で部屋中が写るというわけです。
2012/06/22 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: なんだか

ineireisanさん、
『陰影礼賛』はあなたのブログのタイトルでもあるので、
この言葉にはきっとあなたなりの思い入れがあることと思います。

雨の写真ですが、
雨の情景を撮るのに降っている雨粒が写真に写りこむ必要はないんじゃないですか。
路面に跳ね返る雨足だとか
窓ガラスに流れる水滴だとか、
暗鬱な空だとか
遠くに霞む風景だとか
びしょ濡れのレインコートだとか

誰が見ても「ああ、雨だな」とわかると思います。
こんなぐあいに
http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-238.html
2012/06/22 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* ドラマの切りとりかた

september30さんの写真にはいつも濃いドラマが存在します。

この写真はその典型かもしれません。当レシピシリーズが「技術的」な傾きのものだとすれば、
以下の質問は見当外れかもしれませんが敢えてお聞きします。

september30さんはドラマを発見した瞬間、躊躇なく立ち上がってベストポジションに赴き、
撃つようにシャッターを押すのでしょうか?

今回の写真はまるで仏映画のワンシーンのようです(女性の横顔はB・ストライザンド似だけれど)。
これが演出でなく、フォトグラファーが偶然写真的瞬間に出会って、相当な暗がりにもかかわらず
こんなにくっきりと(正確なフレーミングで)情感たっぷりにその瞬間を写せるなんて! ちいさな奇跡ですね。

愚問かもしれませんが、シャッターを押す瞬間、密会する2人へのためらいのようなものはなかったですか?
人間が撮れないでいるビギナーからの切なる愚問をお許しください。
2012/06/22 [centerfield] URL #8bsxoj2c [編集] 

* Re: ドラマの切りとりかた

centerfieldさん、
最初のご質問ですが
「september30さんはドラマを発見した瞬間、躊躇なく立ち上がってベストポジションに赴き、
撃つようにシャッターを押すのでしょうか?」
原則的にはそうだと思います。
昔は外に出る時はカメラなしで出かけることはありませんでした。
たとえ近所の店へ歩いて行く時でも必ずカメラを提げていました。
仕事でも車の中には必ず入れていました。
現在はもうそこまでする事はありません。 これって堕落? (笑)
でもカメラを持っている時なら周りに何かが起こるのを
無意識に期待しているようですね。

ただ、この写真についていえば、
このカップルはたまたまレストランで私の向かいにいたのです。
そうでなければ、わざわざ席まで出向いていって撮ることはまずできなかったでしょう。
場所柄エチケットに反するし、私はパパラッチではないので・・・
いずれにしろ被写体の人物に許可を得て撮る場合も多いですし、
そうでなければ、本人が不快感を感じるようなことは絶対にしません。(つまりいつも本人の気づかない盗み撮り)

ですからこのショットも幸運の結果に過ぎないと言ってもよいでしょう。

「シャッターを押す瞬間、密会する2人へのためらいのようなものはなかったですか?」
実は今回の写真を載せるにあたってちょっと心配したのは
肖像権の厳しい日本の読者から異議が出るかもしれない、ということでした。
それで少し説明を加えますと、
アメリカでは公共の場所(レストランもそれに入ります)では肖像権はありません。
ですからどこで何を撮ろうと、基本的には撮影者の自由です。
撮られたくなければ公共の場所に出てくるべきではない、というのが原則になっているようです。
ただし、撮った映像を営業的な目的(新聞に載せるとかプリントを売るとか)に使う場合は
法的に必ず本人のモデルリリースが必要です。
日本のように街角で写真を撮っていたら誰かが警察に通報した
というようなことはこちらではありません。

この写真のカップルが密会していたのかどうかは誰にもわかりません。
私がそう感じただけかもしれないし、
彼らはただの夫婦、友人、兄妹、同僚、だったのかもしれません。
もし二人が明らかに不倫とわかるような状況で、性的な行為でもしていたら
私は写真に撮ったとしても(たぶん撮ったでしょう)インターネットに載せることはなかったと思います。

また、私のブログが日本語で書かれていて日本人相手のものでなければ、
この写真も載せるのは遠慮したでしょう。

つまり
この『密会』は私の創作です。
私の写真はドキュメンタリーではありません。 
私は舞台の演出をしているわけで、
そこに出てくる人たちは全員が私の役者なのです。
タイトルは『対話』とか『あるデート』とか『コンサートのあとで』
とかでもよかったでしょう。


長くなりましたが、質問の答えになったでしょうか?
2012/06/22 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* いろいろスリリング…(笑)

伺いたかったことをcenterfierdさんがすべて訊いてくださったので、らっき♪
そうか、これは密撮(笑)だったのですね。
Septemberさんの写真には珍しく被写体の輪郭が朧にみえるのは、ISOというものの効果だったのだ。
でもその少しぼーっとした感じが、得も言えぬムードをかもし出してますよね…

役者的見地で言わせていただくと、この身体の表情が、「密会」、まさしくと思います。
ことに男性の手の、口元を隠しているのと、強い力で頬を支えている指の緊張加減が、
密談を思わせますねぇ。
女性の方は、ちょっと酔ったような男性の話にけなげに食いついているのかなと思ったのですが、
よく見ると、かなりしっかり腕を組んでいるんですね。
惚れた男にこの態はするかなぁ、、、初めて口説かれているのかも。
あるいは、
どっちかがCIA?(笑)

楽しいですね。
なんだか、ヒッチコックの『裏窓』を思い出しました。
演出家の策にすっかりハマって、何度もやってきてはじーっと診ちゃいましたヨ。(笑)

2012/06/23 [belrosaURL #- 

* Re: いろいろスリリング…(笑)

belrosaさん、
さすがは本職の役者さんです。
痛いところを衝かれてしまいました。
脱帽です。
女は不倫の最中に腕は組まない・・・
(経験のないうぶな私にはそこまで見えませんでした)
これからはもっと勉強します。
でも
彼女には役を降りてもらうしかないようです。

2012/06/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

september30さん、ご返答ありがとうございます。

プロの実作の瞬間を知りたい、というのが質問の主旨でしたが
「たまたまレストランで私の向かいにいた」というくだりまで来て少しだけ得心いたしました。

よく見れば、この写真のアングルは立った位置からではなくほぼ横からの目線ですものね・・・。

ご教示を一読し、なぜ僕が人間を撮れないのかがわかったような気がします。僕は多分、人間を
恐れているのだと思う。人と関わることへの恐れともいいかえられます。そのためらいが、
どうやらシャッターを押すことのためらいに通じていそうです。

「私は舞台の演出をしているわけで・・・・」の一節は、まさに写真術ですね。
なぜこの人の写真(文章も!)からはかくも輪郭のくっきりした人間のドラマが聞こえてくるのか?
という疑問が(これも少しだけだけれど)氷解しました。

だからといって、僕が写真を撮れるようになるわけではありません・・・高峰遙か、です。

タイトルは、やはりこのままがいいと思います。
音楽はミュートのかかったトランペットの乾いた音・・・といきたいところだけどイカニモ過ぎる
気もします。お時間があれば、脱線好きの生徒のリクエストにお答えいただき「密会」の
ドラマを完成させてください。厚かましいお願いだったらゴメンナサイ。

2012/06/23 [centerfield] URL #8bsxoj2c [編集] 

* Re: No title

centerfieldさん、
そうですね、ドラマに音楽は欠かせませんね。
私がブログの副タイトルに「写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの・・・」
と書いたのはまさにその理由です。

それからいつもそうなんですが、
プロと呼ばれるのに私はいつも抵抗を感じるんですね。
どうも日本とアメリカではプロとアマチュアの定義が大幅に違うような気がします。
そのことはいつかブログで記事にするつもりです。
2012/06/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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