過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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クロップの勧め・・・写真のレシピ(4)

T07Italy0178-blognew.jpg

明け方の逢ひびき
Venice, Italy


クロップ(crop) というのは写真用語で画面を切り取って構図を整えることをいう。 日本ではトリミングと呼ばれるらしいけど、同じことだから言葉にはこだわらない。 

カメラのシャッターを切る時点でファインダーの中で(あるいは液晶モニターで)、構図をすみからすみまでキッチリと決めてやることができれば理想的なんだけど、これは易しいことではない。 第一、そんなことをしている間にかんじんの被写体がどっかに行っちゃうもんね。 静物写真や風景写真なら被写体が逃げてしまうことはないけど、それでも写真を撮る時にいつもはっきりしたアイデアがあって撮るとは限らない。 
そんな時に僕がやるのは、目の前にあるものを少し余裕を持って画面に入れてやる、ということをする。 あとでクロップをすることを予想に入れているわけだ。 画面に写っているものはあとで切り捨てることができるけど、画面に無いものは付け加えることはできない。 「大は小を兼ねる」 なんてうまいことを言ったのはシェークスピアだったか、孟子だったか・・・

僕は撮った写真を家に持ち帰ると、まずそれをフォトショップに取り込む。 それからやおら階下のキッチンまで降りていってウォッカのマテニーかスコッチの水割りを作る。(この段階は必ずしも必要ではないです)
それから人にも犬にも邪魔をされないように、部屋のドアをぴったりと閉めたあと、再びPCのモニターの前にどっかりと腰を落ち着ける。 今日撮った写真を1枚1枚モニターに呼び出して、ドリンクを啜りながら丹念に画像の編集をする。 僕にとっては何よりも一番しあわせな時間だ。 ひょっとしたら写真を撮ることよりも、好きかもしれない。 だってこれなら酒を飲みながらできるし・・・

クロップは必要が無ければやらないにこしたことはない。 クロップをやればやるだけ画像はどんどん小さくなっていくから(当たり前だよね) それに連れて画質はどんどん低下してゆく。 でも今は画質を心配するのはやめよう。 なにしろ苦労して撮った写真が傑作になるかボツになるかの瀬戸際だから、画質などと贅沢なことを言っている場合じゃないんだ。 

下の写真がrawのフォマットで撮ったオリジナル。 フィルムカメラでいうとネガに相当する。
  
T07Italy0178B-w.jpg


普通ならこれほど極端なクロップをすることはほとんどないんだけど、今日のレシピの好例になると思ってこの写真を選んだ。
僕がこの絵の主体にしたかったのは 1.赤いボート 2.白いイス 3.右側の壁のテクスチャ(材質感) 4.水面の反射、と決めたあと、余計なものをどんどん切り捨てていったら、結局冒頭の写真のようになってしまった。 そのあとは明暗だとか、コントラストだとか、色温度だとか、ボートの赤の強調だとか、いろいろやって、最後に水面と背後の建物に紗をかけてぼかしたりして、結局ドリンクを三杯お代わりするまでには、なんとか自分の頭の中にあった情景をモニターに引き出すことに成功した。

今日の僕が言おうとしているのは、写真の編集にはドリンクが必要だ、ということではなくて・・・
クロップをすることで写真がスッキリとして、画面の中の一番大切なもの(人)に誰もの目が向くようになるのなら、要らないものは躊躇しないでどんどん切り捨てよう。 という話でした。 まあ見れば見るほど役に立たない不必要なものがごちゃこちゃとあるものです。 あなたの家の物置のように。


写真のレシピ(1)
写真のレシピ(2)
写真のレシピ(3)


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コメント:

*

写真のレシピ、楽しみに拝見しております。

写真の編集にはドリンクが必要なこと
改めて思い知りました。
これは暗室であろうがデジタルであろうが
絶対条件と確信しているので私はドリンクなしでは
編集は決してしていません。
2012/06/28 [foto_cychedelicoURL #fZQeSxjk [編集] 

* ほんと、ドラマ・メイカー

ああー、なるほどこれは、どのぐらい‘演出’がほどこされているかよくわかる。
この舟の赤さが…
タイトルと相まって、いきなり色っぽい目撃写真に変わった感じで。
ルージュを連想しました。

ベネツィアなら、明け方の逢ひびきも出来そう。
音もなくスーッとしのびこむ…みたいな。
でも注意をはらわないと、水鏡で窓を視ている誰かがいるかもしれない。。。


愚問なのですが、前に被写体にうんと寄れって仰いましたでしょう?
クロップという手もあるから、ものによっては寄らない撮り方でもOKということでしょうか?

デリコさんのご登場に、わっ!と思っちゃいました。
September30さんとfoto_cychedelicoさんは、あこがれの殿方おふたりなのです。
でへ。
2012/06/28 [belrosaURL #- 

* Re: No title

foto_cychedelicoさん、
暗室の中では気をつけてください。
まちがえてフィクサーを飲んだりしないように・・・
そういえば昔、いろいろな液がまだ新鮮かどうかをみるのに
指先につけて舌で味わうというのが我々プロのやりかたでした。
それを何年も続けたのでたぶん脳にきてしまって、今の私になってしまったようです。
2012/06/28 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: ほんと、ドラマ・メイカー

belrosaさん、
この赤いボートの写真は私と伯爵夫人のフランチェスカとの情事の名残です。
旦那が家を空ける時に彼女が窓の外にイスを出すのが
私達のあいだの秘密の合図。
それで私は赤いボートに乗って・・・
なにしろ携帯電話も、いやふつうの電話さえなかった、
17世紀の話ですから。

あなたの質問は愚問ではありません。
撮りたいものがはっきりとしていれば
どんどん近寄って撮るべきだと思います。
そうでない場合に・・・・・ 
というぐあいに考えてもらってもいいでしょうね。

それから撮りたいものがはっきりしていても
たとえばその背景に何を入れたいかによって
自分の立ち位置を決めるのに選択肢は無限にあるわけです。
そんな時に少しゆったりと構図を取れば
あとで編集をする時にいろいろな可能性があると思います。

2012/06/28 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 目からウロコ

cropという言葉にとても納得しました。

いままで「トリミング」は罪悪、必要悪と(教えられ)思い込んできたので、それをあらかじめ回避するために
撮影時は構図にこだわりすぎてシャッターチャンスを逃すこと多々だったのです。

黄金比を直感的にとらえて、撃つように、切りとるようにシャッターを押せと・・・そんな教えでしたが
うまくいくのは1000回に1回くらい?でした。

これからはもう少し打率が上がりそうです。とても実践的なレシピ、ありがとうございます。
それにしてもcropとは言い得て妙ないい方ですね。

2012/06/28 [centerfield] URL #8bsxoj2c [編集] 

* Re: 目からウロコ

centerfieldさん、
「トリミングは罪悪」と考える宗派に属する信者は多いようです。
でも「なぜ?」と訊くと納得のいく答えは返ってきません。
私に考えられる唯一の理由は記事に書いたように画質の低下ですが、
これとて、
巨大な画素数を持つカメラがどんどん出ている現代では問題にはなりません。

第一、私に言わせれば、現実世界を切り取ってカメラに収める、
つまり、写真を撮る、という行為自体がすでにトリミングではありませんか?
2012/06/28 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* ウロコもうひとつ

september30さん

真面目(?)な性格と愚鈍が重なって教えをスクエアにとらえすぎてしまいます。
トリミングは罪悪、というのもその一つだと思います。

でも言葉は偉大で、cropという金言に出会ってから、カメラをもつ手が呪縛から
解き放たれて自由になりました。初心者なりに、突破口をいただいたと
思っています。ありがとうございます。



2012/06/29 [centerfield] URL #8bsxoj2c [編集] 

* Re: ウロコもうひとつ

centerfieldさん、
そう言っていただけると嬉しいです。
レシピの作者としてはますますやる気が沸いてきました。
2012/06/29 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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