過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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あけおめです

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利き酒
鳥取県境港市


正月を迎えてもアメリカの僕の家ではおせち料理があるわけでもなく、屠蘇を飲んで祝うこともない。
そのどちらも、懐かしいとは思うけどもとくに死にたいほど賞味したいというものでもないから、そのかわり正午すぎにシャンパンを開けて好きなチーズをむしゃむしゃ食べて満足しているうちに元旦は終わってしまった。
子供達が幼い頃はそれでも正月にはお年玉を与えていたけど、なにしろつい数日前にクリスマスという超弩級の祝日があったばかりで、子供達は山のようなプレゼントやお小遣いがもらえるアメリカでは、お年玉も影が霞んでいつのまにかしなくなってしまった。
もともと僕は、日本に古くからはびこる慣習は美しいけれども実際的ではないという点と、生来の怠け者のせいで、年初めの年賀状なども電話とかメールで済ませてしまうことに、特に罪悪感を持ってはいない。

メールの年賀状といえば、数年前のことだけど知り合って間もなくわりと親しくしなった40代の日本人女性からもらったメールを思い出す。
「あけおめです。 今年もよろしく」 で始まって、それから最近のあまり見通しの明るくない世相などをひと通り嘆いたあと、最後に、「でも、あなたはネアカだから大丈夫」 で終わっていた。

僕は日本を離れてから40年以上異国の地に住んで、もちろん何度も日本に帰ってはいるが、ふだんは日本のテレビや新聞雑誌など見ることはないので、いわゆる日本の現代の文化に関してはまったく無知といっていい生活を送ってきた。
だから、日本語を忘れることはもう死ぬまでないとは思うけども、言語のように常に変わりつつあるものにはどうしても後れを取ってしまうことになる。
先のメールも、「あけおめです」 は 「明けましておめでとう」 のことだと直ぐにわかったが、最後の 「ネアカ」 にはまいった。
まさか、僕が寝垢にまみれている、という意味でも無いだろうし、さんざん首をひねったがどうしても見当さえつかなかった。
そういう時に僕がいつも助けを借りるのは、以前に僕の仕事場でアシスタント(今はもう秘書とは呼ばれない)をやってもらっていたK子さんだった。
「それは、根が明るい、ということですよ」 とK子さんは即座に答えた。

僕は思わずうなってしまった。
以前に 「苦労したあげく、ようやくゲットしました!」 という表現を読んで面白いな、と思ったことがある。 「ようやく獲得しました」 というより、ずっと現実味があって、第一、文の響きが新鮮だ。 書く方も読む方も急変する流行の最先端を行っている、という満足感もある。どうだ、あなたたち古い世代はついて来られないだろうと、知ってるもの同士が隠語をしゃべるときのような、優越感さえ感じられる。 だから、使いようによってはこの言い回しは面白い効果があるな、と思った。 つまり僕は古い世代のひとりとして日本語の堕落を嘆くだけではだめで、変わりつつある言葉はある程度受け入れなければならないのでは、と思う。
自分が使う使わないは別として、人の言うことは理解しなければ生きて行けないから。

たとえば 「あけおめ」 についていえば、「明けましておめでとうございます」 とていねいに言うことが何となくかしこまっていて照れくさいので、親しい間柄なら 「あけおめです」 になるというのなら、その効用はたしかにある、という気がする。
しかし、ネアカは困る。 これは完全にルール違反である。 根が明るい、ということをここまで縮めてしまう必然性もなければ、その効果も無いように思われる。

最近ひとのブログなどを読んでいてよく思うのは、知らない言葉に出会った時にいちいちK子さんに連絡を取るわけににいかないから、すぐに引けるような 「日本語の新語造語辞典」 のようなものが出版されていれば、ぜひゲットしたいと思っている。




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コメント:

* 日本語俗語辞書

新年おめでとうございます

当方は雪も無く穏かなお正月をすごしております
さてお悩みの辞書
書物ではなくてネットにあります
日本語俗語辞書 で検索してください
書物ではないので更新が早いし使えますよ
2013/01/03 [のさ] URL #6Q0aW8YQ [編集] 

* ことよろ

私は毎年、日本時間が元旦を迎える頃に実家に電話をしています。今年は電話口に出た70代の母から「あけおめ」攻撃されました。お返しに「ことよろ」と言ったらしっかり理解していました。時代は変わりましたね。

今年もよろしくお願い致します。
2013/01/03 [Endless] URL #d2yN2EXI [編集] 

* Re: 日本語俗語辞書

のささん、

新年おめでとうございます。
こちらの正月は雪はないけどものすごく寒いです。
今朝は零下11℃です。

お勧めの辞書、さっそく見てみました。
あ~、いいですね。
これは私にはとても役に立つと思います。
ありがとうございました。
2013/01/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: ことよろ

Endless さん、

新年おめでとう。
ことよろです。(笑)

ずいぶん気の若いお母様のようですが、
娘さんとそういう会話を持っている場面は想像すると微笑ましくなりました

実は・・・
上の記事に書いた、私をネアカだと云った女性というのは
Endlessさんが以前にすぐそばで仕事をしていた人なんですよ。

今年もお互いに一生懸命に生きましょうね。
2013/01/03 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

あの方の逸話と聞いて、もう一度読み返してみたら
状況が目の前で繰り広げられているような錯覚に
陥りました(笑)
2013/01/04 [Endless] URL #d2yN2EXI [編集] 

*

新年おめでとうございます。
新語はあっというまに古くなるので、
いまや「あけおめ」は盛りを過ぎました。
若い人から順繰りに伝染するせいか今使っているのは若くない人です(笑)
「ネアカ」「ネクラ」はめでたく定着したようです。
美形のいい男を称して「イケメン」とういうんですが、
最初すごく抵抗があったのに今では自分が使っている事に驚きます。
こちらへ来て「イケメンですね」と言われてもびっくりなさいませんように。
2013/01/04 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* おめでとうございます

私は逆に正しい日本語を使えなくなってしまった自分が情けないです。ブログを書くのも日本語の練習になってるのかもしれません。今年もどうぞ私の日本語をよろしくお願いいたします。
2013/01/04 [ineireisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: No title

Endless さん、

彼女も日本を長く離れている人なんだけど
その彼女にあんな現代語を教えたのはまさかEndlessさん、あなたじゃないでしょうね。

2013/01/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

あけましておめでとう。

そうですか、若い世代が創造する日本語を
古い世代はワンテンポ遅れて使っているわけですね。

「イケメン」ですが、
私が時々この言葉を使うのは
それに相当する言葉が見つからないからなんですよ。
美形、美男子、いい男、は何となく古いし、
ハンサムは近いかもしれないけど、英語の'handsome'とのギャップを無意識に感じるし、
英語の'Good Looking'に一番近いのがイケメンというわけです。

だけどこのイケメンは男子に限るのでしょうか?
女子の場合は何と言うのでしょう?
ムーさんのような女性を「いい女」と私は呼びたいのですが
でもこの言葉は、容貌だけではなくて全体の雰囲気や性格までも含めた
もっとずっと深い言葉ですよね。
それにくらべると、「いい男」は顔つきだけに限るようです。
2013/01/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: おめでとうございます

ineireisan さん、

新年おめでとう。
ことしもよろしくお願いします。

私がブログを始めた一つの(大きな)理由は、
忘れていた日本語を取り戻したいということでした。
そしてようやく少しずつ日本語が自分に返ってきたと思ったら、
こんどはその自分が日本へ帰りたくなってしまったのは皮肉なことです。
2013/01/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

あけおめです。

アメリカでも、
日本のように造語や略語がありますか?

そうだったらいま大学でやる英語のはあまりにも実用性がないですね・・・
2013/01/05 [mao87URL #- 

* Re: No title

mao87 さん、

新年おめでとうございます。

アメリカで今非常に盛んな通信形態は携帯電話間のテキスト通信でしょう。
メールと違ってアドレスが必要でなく電話番号があればテキストが打てます。

テキスト作成の時間を短くするためにいろいろな略語を使うようです。
特に若い世代が使う略語はわれわれが戸惑ってしまうものが多く、
私はそのたびに息子に訊いています。

誰もが使っている典型的な略語の例は、

BTW (by the way)、「ところで・・・」
IMO (in my opinion) 「僕が思うには・・」
LOL (laugh out loud) これは日本語の(笑)に相当します。
OMG (Oh My God!) 「ホントかよ、信じられない!」

でもふだんの話し言葉や書き言葉では
日本語のような極端な造語・略語はないと思います。






2013/01/05 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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