過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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怒りについて

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壊れる
Miamisburg, Ohio USA


「形があるものは必ず壊れる」 と古くから言われてきたのは、あれは仏教から来たのか儒教の思想なのか知らないが、このことがなぜか僕の内部ににいつの頃からかしっかりと棲みついてしまったようだ。
何事につけても壊れるよりは壊れないほうが良いに決まっている。 でも、もし壊れた時に、「いつかは壊れるさ。それが今壊れるか、先になって壊れるかの違いだよ」 と僕はいとも簡単に事実を認めるというか、諦めが早いというか、あまり腹が立たないのである。 腹を立てても壊れたものが元に返るわけでもないので、それならさっさと事実を認めてしまったほうが精神的にもずっと健康である。

いつだったか、帰省していた娘がキッチンで洗いものをしていて、僕が長年愛用していたショットグラスを割ってしまったことがあった。 
そのグラスはクリスタルでもなければ高価なものでも何でもなく、ピエワン・インポートの安売りで一個だけ残っていたものを3ドルで手に入れたものだったが、その薄手の縁が口に当たる感触と角度や、ほんの少しだけ裾がつぼんだようなデザインと、全体に微かに見せる飴色が僕はとても気に入っていたから、自分以外には誰にも使わせないで大事に使っていた。 それを知っていた娘は僕の顔をまっすぐに見れないほど悪がって小さくなっていたけれど、僕はほんのちょっとだけ悲しかったが、「よく今までもったよなあ」 の一言で終わりだった。

またある時は、購入して三日目の新車を息子に貸してやったら、さっそく片方のフェンダーを石垣にこすって30センチほどの大きな傷をつけてしょんぼりと帰って来た。 息子はオヤジからものすごい雷が落ちるのを予想してビクついていたのだと思うが、僕としては自分でも驚くほど平静で、
「ばか、もっと運転に上達しろよ。」 それだけで終わってしまった。 

こんなことを書いていると、僕という人間はとても温厚でカドのとれた、いかにも好ましい性格だと思われるかもしれない。 ところが実はまったく逆なのである。 腹がたたないのはあくまでも「形あるもの」に関してであって、形のないもの、たとえば人の言葉だとか行為だとかに対しては、僕は許容度があまりない。 
もちろん最初からいきなり怒りをぶつけるということはなくて、自分なりに抑えて抑えて我慢したあげく(そんなに長い時間ではないにしても)、相手がなお僕の感情を逆撫でし続けると、そこで僕はキレてしまう。 
つまり僕が内部に抱えている爆弾は導火線が普通の人よりもかなり短いようで、一度火を点けられると爆発するまでにあまり時間がかからないのだ。 
そして爆発の危険は自分でもよく承知しているから、おい、なんだか危なくなってきたぞ、お願いだから導火線に火をつけてくれるなよ、と相手に対して思う気持ちは、それは祈りと言うよりも哀願に近いものだった。 それにもかかわらず非情にも小さな炎が点火される。 ジージージーと導火線の燃えてゆく音が僕には聞こえている。 しかしまだ遅くはない。 線を手早く切断すればいい。 だがそれは自分にはできない相手の仕事である。 そして・・・・
爆発。

昔付き合っていた女性にも 「絶対に怒らない」 ということを誓わされていた。 そして僕がその誓いを破った時に、僕らの関係は終わりになってしまった。 終わりにしたのは僕の方からではあったけれど。


人に対して怒りをぶつけることは、
灼熱した石炭を掴んでその人に向かって投げつけようとするようなものだ。
火傷をするのは自分自身である。
仏陀





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コメント:

*

なーる。

私も香港で働いていたときは、中国人の女性と喧嘩して相手を泣かしてしまうくらい怖い人になっていました。もともと気は強かったのですが、更に油を注がれてしまい。
(あ、でも1番喧嘩しづらいのは日本人なんですが。)

といって、環境のせいにするのは良くないことですね。
2012/09/18 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micio さん

1番喧嘩しづらいのは日本人
ということですが、これってすごく気になる言及なのです。
もう少し説明を加えていただくとすごく嬉しいんですが・・・・
2012/09/18 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012/09/19 []  # 

* Re: No title

鍵コメさんの言葉に120%合意します。
いや、もっと言えば
私が昔日本を離れた理由はそれだったのかもしれない。
今の自分にはもう戦うつもりがないので
許容出来るのだと思っています。
2012/09/19 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

地雷原のような夫と暮らしているのですが、彼の怒る基準がイマイチつかみ切れていませんでした。この記事を読んで、はたと思い当たるところがありました。
物損や、不可抗力によるミスにはとても寛大な彼ですが、ちょっとした言葉遣いや感情のかみ合わなささから、突然烈火のごとく起こり始めます。ガスバーナーのような点火っぷりです。
「その言葉を選んだのは、自覚の有無に関わらず、心の底に悪意があるからだ」と断定して、糾弾の手を緩めません。そういう風に無意識にまで言及して怒られると、自分がとても嫌な奴のように感じられて身の置き所がありません。
かくいう私は怒るタイミングを逸しがち。怒るタイミングを逃すと、ずーーーーっと怒っている羽目になるんですよね(^^; まるで炭火のようにいつまでも怒っていて、ある時突然発火するので、これはこれで周囲の人に驚かれます。どちらがいいんでしょうねぇ。怒りの表現に中庸はあるのでしょうかねぇ。
2012/09/20 [nico] URL #KqigePfw [編集] 

* Re: No title

nico さん

まるで自分のことが書かれているような気がして思わず笑ってしまいましたが、
当のnicoさんにとってはもちろん、笑い事ではないことはよくわかります。

怒っている当人にとって一番聞きたくない言葉で
それを聞くとこちらの怒りがとたんに何倍にも膨れ上がってしまう言葉は
「何をそんなに怒っているのかわからない」 という反応でしょうね。
物を壊したり失くしたりして怒る場合なら原因がはっきりしているだけ
怒られる方でも問題はないのでしょうが、
無意識にしてしまう言動に対しての怒りは、怒られる方にとっては納得がいかないと思います。

その時のご主人や私が思っているのは
相手に対しての思いやりや優しさがもう少しあれば、あのような言動は無意識にでもできないはずだ。
という自分勝手と言ってもいいような論理なのです。

まあ第三者から見れば夫婦間のそういう機微は
どちらもどちら、ということになってしまうのでしょうけれど。
当の私達にとってはそう言って済まされることではありません。

nicoさんご自身の怒りについては私も思い出したことがあります。
といってもnicoさんと同じケースではないかもしれませんが。
最初の結婚がまだ健全だった頃
二人で何気ない話をしていてたまたまそれに関連したことを女房が思い出すと、
それであらためて昔の怒りが蘇るらしくて、
いきなりまた怒り出すのですね。

その時私は、女性とは不思議なものだと思いました。
何年も前の怒りがそのままどこかにしまってあるようです。(笑)
2012/09/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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