過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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イタリア映画 『軌跡』 について

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再会
映画『軌跡』(1970) のシーン


時は1940年ごろ、アメリカ娘キャサリンはボストンの大学でフランス語を習得したあと、スイスのロザンヌに英語の教師として赴任する。 そしてそこでの二年目の夏にたまたま休暇で通りかかったイタリア人の若い兵士ロベルトと知り合い、ふたりは熱い恋に陥る。
戦争が激しくなってきて、ヨーロッパ中の町が燃えているような緊迫した状況の中でふたりはパリに愛の逃避行を試み、そこで目くるめくような甘い五日間を過ごしたあと、ロベルトは属する軍の駐屯地であるナポリへ、キャサリンはスイスへと、引きちぎられるような辛い別れをすることになる。 わずか数ヶ月の、一夏の情事といえるような短くそして激しく燃焼した恋であった。
そして戦争終結の直前のヨーロッパをあとにして、キャサリンは両親に呼び戻されてアメリカへ帰国したのだった。

それから三十年が過ぎる。
幸せに結婚してふたりの子供を持つキャサリンが、息子の留学するソルボンヌを訪ねて一人でパリにやって来る。
そのパリのメトロで、今は初老となったキャサリンとロベルトは奇跡のような劇的な再会をするのである。
そのあと物語りは意外な方向へと進展して行く・・・

上のスチル写真はこの『軌跡』の一場面で、パリのメトロで二人が30年ぶりに再会するあの感動的なシーンを覚えている人も多いと思う。(ニーノ・ロータの音楽が実に泣かせる)。 映画制作の当初、キャサリンの役はキャンディス・バーゲンに行ったが、同じタイミングで制作が始まろうとしていた『カーナル・ナリッジ』で、キャンディスがジャック・ニコルソンとアート・ガーファンケルとの共演を優先して『軌跡』の役を降りてしまった。
監督のアントニオ・ピリオーニがそこで見つけてきたのが、ニューヨークの無名の舞台女優であったこのメアリー・マーフィだった。
映画として大成功であったと言えないのは、たまたま同年に封切られた巨匠ヴィットリオ・デ・シーカの『ひまわり』 (マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン) に完全にくわれてしまったからである。 しかし『ひまわり』と違って『軌跡』は同じ戦争下の恋物語でありながら、異国人同士の恋を描いたということと、過去の物語が現在まで続いているという点ではユニークであったと言わなければならない。

***

以上に書いたことは、まるきりのデタラメで、最初から最後まで(写真を含めて)全部僕の創作である。
このメトロの二人は実は僕らの友人で長年の旅行仲間であるM夫妻であった。 ただしデタラメの中にも幾らかの真実は入っていて、たとえばM夫人は事実ロザンヌで若いころに教師をしていたことがあるし、ご主人はピッツバーグに移民をしてきたイタリア人の両親の間に生まれて、純粋なイタリア人の血をひいている。

一枚の写真からひとつの物語を引き出そうとしたわけだけど、あまり良くできた物語ではなかったことを認めます。 それにしても窓際に立ってカメラを見ている男のうさんくさそうな表情が良くないな。
僕が監督だったらあの俳優は降ろしてしまったと思う。


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コメント:

*

ええっ?!初めて聞いた映画だな、是非見たい!って思ったのに。
クビにされるうさんくさいおじさん、写真の中ではキャラが立っていますね。目立ちすぎ。
2012/09/05 [わに] URL #- 

*

わあ、ヤられた!
アントニオ・ピリオーニ監督もメアリー・マーフィさんもSeptemberさんが付けた名前ですか?
思わず検索しちゃったじゃないですかっ(笑)

この、‘発掘された舞台女優’と『ひまわり』のくだりがリアルで、
またこのご夫妻が…おきれいですよね、俳優っぽいんですもの本当に。
M夫人、キャンディス・バーゲンに似てらっしゃるし、確かに舞台女優の匂いがするし、
ご主人も油の抜けたマストロヤンニみたいにも見えてくるし(笑)
すっかり信じちゃいました。

『ひまわり』といえば、なんといってもリュドミラ・サヴェリーエワの儚いうつくしさが印象に残っています。
今みればきっと、ソフィア・ローレンに感情移入するんでしょうけど、
あのときは、マストロヤンニがロシアに戻ってくれてよかった…と思いました。
雪原での出逢いのシーンの、リュドミラの無垢な笑顔が忘れられません。

ところで、問題の(笑)カメラ目線の男は、実は重要な脇役なんですよ。

ロベルトは軍務放棄して向かったキャサリンとのあの逃避行の罪を赦してもらうことと引き換えに、
ナポリである危ない橋を渡らされたんです。
そのことは30年たった今も禍根になっていて、このうさんくさい男は彼を追う組織の人間なんです。
それでこんな鋭い貌をしているんです。
間違いありません。
だからSeptember監督、おじさんを降ろさないであげてください。(笑)

2012/09/06 [belrosa] URL #- 

*

へ〜、知らない映画だなぁ。キャンディス・バーゲンが・・・なんて思って検索してみようと思ったら。またやられてしまいました。
2012/09/06 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

*

belrosaさんの、二段落目にかなり同感です。それにしても、メアリジョじゃなかったM夫人、どうして地下鉄路線図を見ながらああも幸せな表情が出せるのでしょう。
ところで話題騒然のジョージ・コスタンザ(Seinfeldのメインキャストの一人)似の男、彼の左肩にかけられた白い紐状のものが手前右の少女の右腕あたりにつながっているように見えるのは僕でしょうか。心配性のお父さん?いや、二年前に見たスウェーデンの吸血鬼映画「僕のエリ 200歳の少女(ひどい日本語タイトル、英語タイトルでは、Let the Right One In」に出てくる、吸血鬼少女に自分が死ぬまで仕える運命の哀れな中年の召使の表情もいつもこんなだった。
2012/09/06 [November 17] URL #- 

* このコメント欄

のみなさまの想像力に再びふき出してしまいました。確かに本当にキャラが濃い人がそろっている写真だーー。しかもナポリでてくるし!私はこの路線図が気になってしょうがありません。どこかでみたことがある気がするのですが・・パリのあのへんではないですか?
2012/09/06 [ineireisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: No title

わにさん

ふふふ 引っかかりましたね。
この男
カメラを見てなければいいのに、これでは誰が主役かわかりませんよね。
2012/09/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

belrosa さん

あはは、検索して何が出てきましたか?
でも舞台女優の方は彼女の本名にごく近いんですけど。

夫人の幸せいっぱいな笑顔と旦那が照れたように目をそらせているこの写真をあとで見て
真っ先に思ったのはこれって映画のシーンそのものじゃない?
それでこのデタラメを創作せずにはいられなかったのです。

『ひまわり』は実は私も昔見た時に、ソフィア・ローレンの凄みのある美しさ以上に
リュドミラ・サヴェリーエワに感情移入しました。
彼女がバレーダンサーであったということもひとつの理由なのだろうな。
今見たらどうだろうか、と考えてみましたが
これはやはり今でも変わらないだろうな、という気がしています。
私はきっとbelrosaさんとちがって、成長してないのでしょうね。

ところで問題の男は、主役の存在を脅かさないという脇役の常道を見事に外しているので
やはり降りてもらいました。
そのかわりアメリカのプロデューサーに紹介してやったので
テレビの連続ドラマに出ることになったようです。
(下のNovemberさんのコメントを見てください)
今度はニューヨークで、彼は今日もこんな顔をしてメトロに乗っているのでしょうかね。
2012/09/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

川越さん

普段は赤裸々な告白に満ちている私のブログなので、
たまには息抜きも許してください。(笑)
2012/09/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

November さん

楽屋ネタがバレているNovemberさんのような読者はどうもやりづらい。

ところで
写真のジョージ・コスタンザがかけている白い紐。
私も気がついていたのですが最初は盲目の人が持つ杖かな、などと思ったり
それにしてはその杖が前の女性の肩にかかっているというのもおかしい。
第一、この男しっかりとこちらを見ているのは盲じゃなさそうだし・・・
とすると?
まったく不可解です。

あとはNovemberさんがしたように、豊かな妄想を膨らませるしかないですね。
2012/09/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: このコメント欄

ineireisan さん

クールな夫妻と、対照的な正体不明の男と、どちらを狙って写真を撮ったのか
自分でも覚えていないのですよ。(多分両方)

この年のパリの滞在はモンパルナスだったので
メトロもそこを起点としてあちこちへ行きました。
だから路線図もあの周辺のはずです。

楽しそうなイタリアの旅はからはもうドイツに帰って来ましたか?
2012/09/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

初めまして。旧記事へのコメントをお許しください。

こちらの文章がとても愉快で洒落てゐて、
ひとこと残さずにはゐられなくなりました。
ほんとに、うつかりと検索するところでした。

また伺ひます。よろしくどうぞ。
2012/10/01 [T-T.NURL #ODhh62Kk [編集] 

* Re: No title

T-T.N さん

初めまして。 私の狂気と妄執の世界へようこそ。
これからもよろしくお願ひします。
2012/10/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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