過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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ヒッピーのころ

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Cambridge, Massachusetts USA


70年代初めのアメリカはヒッピーたちの天国だった。
とりわけ、100 以上の学校があるというボストン、ケンブリッジ界隈には町中に若い連中が溢れていて、彼らは謹厳でまじめな〈スクェア〉でなければあとは多かれ少なかれヒッピーのような生活をしていた。 「あいつはスクェアだよ」 とレッテルを貼られることは一種の仲間はずれを意味していたようだ。 街中どこを歩いてもどこからかマリファナの匂いが流れてくるし、公園や広場では数人が車座になってポットやハシシの回し吸いの最中で、そこへは老若男女だれでも自由に参加できて人種差別は一切なかったから、これは今では考えられないような偏見のない社会だった。
結婚生活に終止符が打たれていきなり独りになってしまった僕は、暗い心を抱えて毎日のように街を彷徨ったが、そんな僕を何も言わず何も聞かずに迎え入れてくれたのはこのヒッピーたちだった。 彼らのおかげで僕は悲痛な孤絶感などをあまり感じなくてすんだのだと思っている。 そういう自分だって、髪は肩まで伸びて、タイダイ(絞り染め)のTシャツにベルボトムのジーンズという格好をして外を裸足で歩きまわっていた。

その僕が毎週日曜になるとよく行ったのが、ハーバード大学の向いにあるケンブリッジ公園だった。 よくまあこれだけの人が集まる、と思うくらいに日曜になるとどこからか若者たちが集まってくる。 手作りのネックレスやサイフ、マリファナ用の短いパイプなどを売っているのもいれば、ギターを弾いたりパントマイムを見せたりするアーティストもいた。 僕自身も、そのころ稽古していた三味線を抱えて行って、あまりうまくない撥(バチ) さばきを群衆に見せたことも何度かある。 前に置いた紙コップがドル札や小銭でけっこう一杯になり、なるほどこういう生き延び方もあるんだと思った。
そういえば昔、東京で大学に行っていたころ、乞食(こつじき)は最も聖なる生業(なりわい)だと仏教に教えられて、友人とふたりで高田馬場駅前に座ったことがあるが、1日中座って誰も、ただの一人も金を置いてくれなかったことを思い出す。 それにくらべるとアメリカ人は、「恵む」 という精神がはるかに徹底しているようだ。

ところでこの三味線というのは、その頃同じアパートの同じ階に住んで同じ学校に通っていたK君がいて、彼の奥さんが、F流の長唄の家元の直系のお嬢さんだった。 彼女が僕のためにわざわざ稽古用の三味線を日本から取り寄せてくれて、1週間に1度か2度、そばに付きっ切りで稽古をつけてくれた。 現在では彼女は家元を継いで、日本中にいる何百人ものお弟子さんを教えるのに、飛行機で忙しく飛び回っているそうだ。

前回ボストンに行った時に(といってももう10年以上前の話になる) この公園まで足を伸ばしてみたが、遊園地で遊ぶ数人の母子を見ただけで、30年前の思い出のかけらはどこにも無かった。 すぐ近くのハーバード広場の雑踏は昔と変わらないけれど、人もファッションも店もすべてが変わっていた中に、ようやく見つけたビルの地下の懐かしいバー 『青い鸚鵡』 でビールを飲みながら、(この30年に自分に何が起こったのだろう) と考えていた。

あのころの僕の姿は、古い記事 『三味線とパイプ』 に見ることができる。



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コメント:

* 投稿を誘われているのでしょうか?

9月様

 この写真付きの記事、中々に力が入っていますね。しかし、その割には、何時もの常連投稿者からの投稿もなく、投稿欄も閑散とした儘です。文末には、態々3年前の記事「三味線とパイプ」にまでリンクが張ってあると云うのに、閑古鳥が鳴いた儘では寂しそうなので、投稿します。

 その、9月氏がヒッピー気分となって、或いはヒッピーの仲間入りを果たして心身の安定を得ていた頃に前後して、同様の体験を味わった人々の生活状況が纏められた記事をネット上に発見しました。
 ご関心あれば、貴方の自己責任にて以下のサイトをご覧下さい。

《昭和史再訪セレクションVol.127:ヒッピー・ブーム 高度成長の波、自然の中で抵抗》

朝日新聞ネット・全体で2ページ

http://doraku.asahi.com/earth/showashi/121220_02.html

 自らもヒッピー生活を送った作家・宮内勝典(みやうち・かつすけ)の談話も巻末に追加掲示されています。御参考までに。






2013/02/04 [Yozakura] URL #Y2lB8pKc [編集] 

* Re: 投稿を誘われているのでしょうか?

Yozakura さん、

「三味線とパイプ」 でYozakuraさんと交わした議論(?)を繰り返すことは避けましょう。(笑)
ただ言えるのは
60年、70年代のアメリカはベトナム戦争のさなかにあって
徴兵制度に戦争を強いられた若者たちは「殺す」「殺される」という状態がすぐ目前にあった、という点で
当時の日本のヒッピーたちとは根本から違っていたのではないだろうか、
ということです。

しかし私を含めた多くのアメリカの若い世代にとっては
ヒッピーは社会運動であると同時に、ひとつの独特なライフスタイルでもあった
と言わなければならないと思います。
2013/02/04 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい

Septemberさん、

五ヶ月も経ってからコメントしたりすると、なんだかYozakuraさんからのコメントみたいで、わくわくされるかもしれませんが、これから書く内容は、氏のそれとは違ってきわめて軽薄短小です(こうやってバランスの取れた美しい世界がつくられていく)。

明日からの週末、コロンバスで年に一度のコムフェストCommunity Festivalが行われることをお伝えしたく。今年で40回目を迎えるそうですが、Septemberさんは行かれたことありますか?市や企業がスポンサーにつかない100%地元住民主催のお祭りで、上の文章の3段落目までの70年代風の世界が三日間再現されます。ボストンなんかのそれと比較されると、辛いところですが、今日の中西部ではいい線いっているお祭りだと思います。

会場になっている、ダウンタウン近くの公園は、いたるところでマリファナの匂いが漂い、夕暮れ時から、それまでタイダイのTシャツに包まれていた、色とりどりのオッパイの露出が始まります。先週末はゲイパレードで、七色のブリーフが闊歩していて目のやりどころに困りましたが、今週末は日ごろ帳簿の見すぎで疲れ果てた会計士の目の保養になります。

ごみを最小限に抑えるため、大半の人はプラスチック製のビールジョッキを片手にぶらぶら、空になったら、ビールスタンドで補充して。

たまには、GreenEyesさんをデイトンに残して、カメラと三味線だけを助手席の乗せて、ふらりと来られませんか?僕も、サンチョパンサになったつもりでお供しますよ。フラッシュを使わずに自然光で撮ったオッパイは、写真のレシピとして後日アップしていただき。
2013/06/28 [November 17] URL #- 

* Re: 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい

November さん、

あの公園のお祭りには行ったことがありますが、Asian Festival でした。
まったく違う催し物だったのでしょう。
しかしなかなかおもしろそうな匂いがするのでぜひ見たいです。
行くとすればたぶん土曜日になると思うのであらためて連絡します。
2013/06/28 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: Re: 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい、そして僕らはカメラ小僧になって

Septemberさん、

違いますよ、会場の公園も、催し物そのものも。Asian Festivalは家族向け(ビールは飲めませんし、オッパイ出すと捕まります)、ComFestは大人向け(ビールはもちろん、タバコ吸い放題、マリファナは警備員や警察がいないところで)。

土曜日、Septemberさんが来られるかどうかは当日決められるとして、一足早く初日の今日、カミさんとコムフェストに行ってきました。雨上がりで涼しかったせいか、オハイオ女の方々の露出度はやや低めでした。Septemberさんがいたら、二週間前の写真のレシピのように、リラックスさせた上で、「さあ、もうこうなったら、思い切ってとってみようか」と言ってくださるかな。それとも、イソップの「北風と太陽」のように、照りつける太陽には勝てないのでしょうか。

今日の収穫は、公園に複数設けられたステージの一つで「バーレスク」ショーとやらを初めて見たこと。音楽にあわせ、次々と入れ替わりで女性が激しくおどりだし、徐々に衣装を脱いでいき、最後にブラをとると紐飾りのようなものがついており、オッパイをフリフリ揺らしながら、それをクルクルさせてフィナーレ。観客は、男も女も(親にくっついてきている子供たちも)総立ちになって大喜び。

でも、これって、どっかで見たことあるような、そうそう、アメリカ映画「卒業」の中で、人妻(アン・バンクロフト)に誘惑され、愛人になってしまったダスティン・ホフマンが、その娘(キャサリン・ロス)をデートに不承不承誘うはめになった際に、嫌われようとして連れて行ったのが、バーレスクショーではなかったか!フリフリクルクルやっているダンサーの手前で泣きだす純情なロスの美しさはおいといて、あれってなんの出し物かとずっと気になっていました。ちなみに「卒業」は来月18日の夜、オハイオ州立大学の屋外大スクリーンで無料上映されますので、フリフリクルクルを今日見たそれと比較してきます。

バーレスクを見た後公園を一回りすると、一番大きなステージではロックコンサートをやってました。驚いたことに、一時間ほど前にフリフリクルクルをやっていたバーレスクのお姉さんたちが、バンドのすぐ横で激しく踊っているではありませんか(ブラ着用)、まるで疲れを知らないこどものように(小椋佳)♪

てなわけで、Septemberさん、これでますますコロンバスに行きたくなられたと思います。コムフェストのホームページは下に。バーレスクは金曜だけのようですが、ビールとカメラを手にしたSeptemberさんのご登場が待たれます。公園にはカメラを手にしたポニーテール男は結構いましたので、三味線か尺八がないと目立たないかもしれません。

www.comfest.com
2013/06/29 [November 17] URL #- 

* Re: Re: Re: 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい、そして僕らはカメラ小僧になって

November さん、

昨日今日とデイトンは雨でちょっと心配しています。
雨宿りする場所もないような公園らしいので
女性たちも脱いではくれないだろうし
カメラや三味線も濡れてしまうし・・・

今、土曜日の朝にこの返信を書いていますが、しばらく様子を見ましょう。
2013/06/29 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: Re: Re: Re: 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい、そして僕らはカメラ小僧になって

Septemberさん、

(同じ時間帯に住んでいるとはいえ、これくらいの頻度で返信すると、同じ時間帯テキストメッセージやっているみたいで、他の読者の方々に嫌われますね、はは)

了解です、雨気にしちゃいますよね、風邪引くかもしれないし。もうすぐ、大学の図書館に出かけるので、Septemberさんが午後来られるだろうという前提で、ゴザと例の一升瓶、車に積んでおきます(公園には、アルコールのみ持ち込み禁止なのでお土産用、他の嗜好品はOK)。

親愛なる昔の上司にプレッシャーを与える気は毛頭ないのですが、オハイオ出身のジャームッシュ監督の映画「Ghost Dog」って映画があり、「葉隠れ」に書かれた武士道の教えが映画を通して引用されます。そん中に、出かける際は、「雨が降ったらどうしようと思わず、雨が降ってもかまわない」という気持ちで出よう、みたいなのがあります。これって、自転車やバイクで(徒歩でもかな)長距離旅行をする人が、雨模様の日に出発する際の考え方のようです。そんな日は、降りそうでも降らずにすんだり。

朝10時の時点では、コロンバスは晴れていますが、天気予報だと、夕立の可能性ありとか。Semtemberさんが来られて、雨になったりならなかったりすると、「雨男」「晴れ男」の判別にもなり、興味深いような。

では、またのちほど。
2013/06/29 [November 17] URL #- 

* Re: Re: Re: Re: Re: 今週末のコロンバス、ヒッピーもどきとオッパイがいっぱい、そして僕らはカメラ小僧になって

November さん、

昨夜はご苦労様。 お陰で楽しい一夜となりました。
私は雨男であることを見事に証明してしまったのですが、その御蔭で韓国料理を食べながら話が弾んで
楽しかったですね。

言い忘れましたが頂いた「初孫」は、
前回東京で仲間が集った料亭で出してくれて私は初めてだったのですが、寒い夜で熱燗で呑みたいと言ったら亭主が
「勘弁して下さいいよ。この酒は冷やで飲んでください」 と叱られました。
その美味しさに6人(その中二人は酒を飲まない)で2升を空けました。

旨い酒を贈ってくださる限り、私たちの友情は壊れることはありません。(笑)


2013/07/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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