過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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海辺のワークショップ (1/2)

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軌跡
New York City, USA



ある年の夏、写真雑誌を見ていて一つの記事が目に止まった。 メイン州のロックポートという町で、《Photo Essay》 というテーマで1週間のワークショップが開かれるという記事だった。 メイン州といえば僕の住むボストンからそんなに遠くはないうえに、講師になるジョン・ロンガード (John Loengard) という名に僕は強い興味を覚えた。 ジョン・ロンガードといえばあの歴史的な写真雑誌 『ライフ誌』 の写真家として、ユージン・スミス、ロバート・キャパ、ゴードン・パークス、など数え切れないほどの世界的なフォトグラファーたちといっしょに仕事をした人である。 そして1972年のライフ誌の廃刊後は、同じタイム社が始めた週刊誌 『People Magazine』 の最初のピクチャ・エディターとして、有名無名の写真家たちをアゴで使っていた人だった。

そのころの僕は相変らずの貧乏生活を送っていたが、このワークショップには何とかして参加したい、という強い気持ちが湧いてきていた。 そこで、思いきって選考のためのポートフォリオを提出してみることにした。 提出したあとで知らされたのは100人以上の応募者の中から10人だけを選考するという。 (これはまずダメだろう) と思った。 でもダメなら無理をして金の工面をする必要も無くなるので、かえってほっとするかも知れないとも思った。

ところがその選考に通ってしまったのである。 規定の期日までに必要な金を入金しろ、という通知を受けとった時、僕はまず働いていた日本レストランのオーナーに給料の前借をした。 それだけでは足りないので、妻と別れた時に指から抜いて長いあいだ引き出しに放りこんであったプラチナの結婚指輪をゴソゴソと探し出して、それと愛用のダンヒルのライターとをいっしょに、ポーンショップに売りつけて残りの費用をつくった。 そして、グレーハウンドのバスに何時間か揺られて、メイン州の海辺の町、ロックポートまでやって来たのである。

(続)

 

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コメント:

*

この写真のシャドウは不思議な感じがします。
アイアンテーブルの網の目までくっきり出ているということは
太陽は真上なんでしょうね。にしても影はファジーという認識を
大きく覆すような写真です。
2010/12/18 [matsuURL #TY.N/4k. [編集] 

* Re: No title

Matsuさん、これはニューヨークのMOMAの内庭です。
ものすごく暑かった真夏の正午ごろでした。
実体とその影が、見ているうちにどちらが影でどちらが実体なのか見分けがつかなくなるような奇妙な情景でした。
2010/12/18 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

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