過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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ユニークな学校は数多くあるけれど・・・

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蠍(さそり)
Yellow Springs, Ohio USA


僕の住む町デイトンから車で30分も行ったところに、イエロー・スプリングズ(Yellow Springs) という小さな町がある。
むかし僕が渡米してデイトンの名前もまだ知らなかった頃から、Yellow Springs の名は聞いていたのは、そこにあるアンティオク カレッジ(Antioch College) という小さな大学が、アメリカの教育史上では男女共学を実施した最初の大学だったからである。
1852年に創設されたこの学校は、当時のハーバード大学を筆頭として米国のすべての学校が、権威とか人種とか性別とかに大きく偏っていたのに対抗して、最初から完全な自由主義を掲げていた。 開設された時の9人の教授のうち二人は女性だったが、アメリカの歴史上、女性の教授を男性とまったく同じ資格で採用したのはここが最初であった。 当然ながら学生の選別も人種とか性別には左右されないことを、最初からはっきりと謳っていた。
そんなユニークが大学だったから全米に多数の賛同者があって、やがて、バーモント、シアトル、ロサンジェルス、南カルフォニア、テキサスの各地に、Antioch College の名で分校ができていた。 そして1978年には College(単科大学) から  University(総合大学) に昇格している。

鄙びて美しい自然に囲まれたこの小さな町は、19世紀の始めにもともと100世帯かそこらの家族が寄り合って 「理想郷」 を作ろうとして始まった集落で、人種差別がまったく存在しない、当時としては珍しい地域だったそうだ。 理想郷というのはたぶん、70年代のヒッピーのコミューンみたいなものだったのではなかったのか、と想像する。 これほどの急進的なリベラルな学校が創立されるのにはうってつけの場所だったのだろう。 その名残りは現在でもはっきりと存在していて、けばけばしい商店街とか新築の豪邸とかはいっさい見られず、質素で小さな家々の集落である。 そんな町で大学の近代的な建物も森の中にひっそりと隠されていて、うっかりするとそのまま通り越して町を出てしまう。 ここに住む人達の中にはアーチストや知識人たちが多いというのもうなずける。

このユニークな町のユニークな大学も、財政困難となって2008年に休校となってしまった。 閉校ではなくて休校ということは、いつの日かまた開くということに望みがあるのだろうと思っていたら、2011年に再び復活して、わずか35人の学生しか取らないこの大学に2500人の志願者があったそうだ。 そして米国でもっとも競争率の高い大学の一つになった。 学生たちは全員が学費免除という恩恵を受けるので、必要な出費は寄宿舎の滞在費だけということが大きな理由なのは間違いないと思う。 こんな方法で、最優秀な人材だけを集めているのである。

この町で年に何度か催されるお祭りやアートのショーには、周りの地域から沢山の人がここを訪れる。 その時だけは、この歴史を超越したような静かで小さな町が少しだけ活気を取り戻す。 隠れていたさそりがノソノソと出てきて街を闊歩するのもそんな時である。




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コメント:

* ありがとうございました

早速に「賞品」をお送りくださいましてありがとうございました。昨日、無事に届きました。お守りとして大切に飾らせていただきます。

ところで、私はかなり以前に1年少々バーモントに住んでいたこともあるのですが、アンティオクカレッジのことは全く知りませんでした。建学のいきさつがいかにもアメリカですね。運営資金や教員の確保が難しそうですが、このような大学が存在しうるというところに懐の深さを感じて、やっぱりアメリカって好きだなーと思ってしまいます。(こんなサソリを背負ったお兄さんが出てくるところはビミョーですけれども)




2013/06/06 [うらら堂] URL #- 

* さそり座の男ものぞいてみたオハイオの大学街

Septemberさん、
きしくもAntioch Collegeのことを書かれた同じ日の夜、オハイオ最大の、全米でも指折りにでかい(必ずしも大きさに比例して優秀とは限らない)オハイオ州立大学の学長が突然辞任を表明し、一夜明けた今朝の全米トップニュースはオハイオ発でした。なんでたかだか地方の州立大学の学長の辞任がそこまで話題になるのかは、長くなるので書きませんが、おっしゃるようにユニークな町がユニークな大学をつくるのか、ユニークな大学がユニークな町をつくるのかはさておき、大学の地域社会への影響力はあなどれません。

オハイオって、東海岸や西海岸の大都市が舞台の映画やドラマなんかで、都会生活に疲れた登場人物が戻ろうかと思案する故郷としてよく台詞にでてくるような気がします。それほどど田舎ではないけれど、都会の洗練さやときめきからは程遠い、凡庸さ(書いていて、自分のことを言っているような)。そんなオハイオで小さいながらも、個性で際立っている大学が、Septemberさんが書かれたAntiochとOberlin Collegeだとよくききます。

Oberlinは北に位置して、Daytonからはちょっと遠いですが、南北戦争の時代に黒人の女学生が卒業したといいますから、歴史的にそのリベラルさはAntiochと並んで、ずば抜けています。

観光客としてそれらの大学がある町を訪ねると、個性的なファッション、カフェ、レストラン、アートシアター、本屋さん、などなどが醸しだす雰囲気、ここまではどっこいとして、自然の豊かさでは、AntiochのあるYellow Springsに、僕も一票です。町を出たところにある、牧場の一部のD型ハウスを使ったアイスクリーム屋さんなんて、北海道で牧童をやったことのある僕(べこ好き)なんかにとって、感涙ものです。

2013/06/06 [November 17] URL #- 

* Re: ありがとうございました

うらら堂さん、

娘の嫁入りが無事に終わったような気がしてほっとしました。

バーモントにお住まいだったのですね。私にも懐かしい所です。
というのは友人がバーモントの北端、ほとんとカナダとの国境に近いところに別荘を持っていて
ボストン時代には何度も車で行ったからです。

資本主義、個人主義に徹していながら、こういうユニークな大学を閉鎖させないところは
さすがアメリカだ、と私も思います。
2013/06/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: さそり座の男ものぞいてみたオハイオの大学街

November さん、

オハイオ州立大学の学長の辞任はびっくりしましたが、
母校であるばかりでなく、現在もそのすぐそばに住んでいるNovemberさんへのインパクトは
ずっと大きかっただろうと想像します。

Yellow Springsのあの有名な(そして巨大な)アイスクリーム屋には、
子どもたちが小さい頃は夏の最中にはドライブがてらよく行きました。
Antioch大学で日本語を教える日本人女性と知り合いになり
彼女の家へ行ったことがあります。
庭には菜園があり数羽のニワトリを飼っていて、
野菜と卵は自給自足ということでした。

また、この町の小さな映画館は他で見れない映画をよく上映するので
わざわざここまで行ったりします。
なんとなくほっとできる町ですよね。
2013/06/06 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re:Re: さそり座の男ものぞいてみたオハイオの大学街

Septemberさん、

Yellow Springsのリトルアートシアター(そのまんまの名前)は、最近ずっと閉まったままと聞いてましたが、インターネットで調べると、基金が集まったおかげで改装され非営利団体としてもうすぐ生まれかわるとか。また初めて知ったのは、あの映画館はあんな小さな町で1929年から続いていたということ。うらら堂さんのコメントに対するご返答に同感ですが、弱肉強食のアメリカ社会で、Antioch Collegeのような大学やこういう小さな劇場が人々に支えられてしぶどく生き残っていく話しを聞くと、この国にちょこっと希望を感じます。

さて、ローカルねたに加え内輪ねたも好きなのは、僕の悪い癖ですが、10年以上前に、GreenEyesさんもご一緒にDaytonのアートシアターでSexy Beastって犯罪もの映画を見たの覚えてらっしゃいますか?ベン・キングスレーがギャングのボスを怪演しており、映画が終わってから、GreenEyesさんが、あれほどの名優がこんなに人に嫌悪を与える役を引き受けるなんてっとぽつり言われたのがなぜか印象に残っています。

四月のブログでSeptemberさんは、大好きなフランス映画Tous les Matins du Mondeが日本で劇場公開されていないことに驚いたと書かれていましたが、Sexy Beastも日本では同じ扱いを受けたようです。

僕たちが行った映画館はすでにかなり古びていましたが、まだ健在なのでしょうか。

2013/06/07 [November 17] URL #- 

* Re: Re:Re: さそり座の男ものぞいてみたオハイオの大学街

November さん、

そうなんですか。
ここ数年あの劇場に行ってなかったので閉まったのを知りませんでした。
中に入るとうちのリビングルームより狭いくらいのロビーの古い木の床がきしんだのを覚えています。

デイトンのネオン・シネマでSexy Beastを見たことを思い出しました。(すっかり忘れていた)
あの映画の前に(あとか?)すぐそばのダイナースで夕食をとりましたね。
ダイナースはもう随分前に閉まったままですが、ネオン・シネマは健在ですよ。
中も改装したりして、むしろ以前より客が入っているのでは?
あれは私にとっては貴重な映画館です。

Sexy Beastは最近またNetflixで見なおしたばかりです。
2013/06/07 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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