過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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わたくし的なポートレート・・・写真のレシピ (14)

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優しい時間
Franklin, Ohio USA


「はい! 撮りますよ、いいですか?」 ---‐ パシャリ!
というポートレートは撮るのも撮られるのもどうも苦手だ。
昔から写真を撮られるのが嫌いな僕は、面と向かってカメラを向けられるとつい緊張して顔も身体もこわばってしまう。 じっとこちらを凝視して冷たく光るレンズが、まるで処刑される自分に向けられた銃口のように見えて恐怖に襲われる。 自分がそうならたぶん他の人たちも同じだと思うと、逆に自分がポートレートを撮る側にいる時は、ファインダーの中に見えている被写体に強い同情を覚えることになる。
そんな時、僕はふだん二つの方法を取ることにしている。

① 何気ない会話を始めて被写体になる人をリラックスさせるようにする。

相手に何かを尋ねられると、大抵の人ならその答えを探す時に無意識に緊張を解いてしまうものだ。
「出身はどちら?」、「兄弟とかはいるの?」、「ここにはもう長く住んでるの?」、とかなんでもいい。 大事なのはファインダーを覗きながらもその会話を続けること。 そして会話のあいだにシャッターを切リ続ける。 相手の笑顔が欲しければそれを引き出すような軽い冗談を言ってみたり、真面目な顔を撮りたければ少し堅い話をすればいい。 ただ、どんな場合でも、「はい! 撮りますよ、いいですか?」 の状況をできるだけ避けるようにすることだ。

② その人がふだんから慣れ親しんでいる環境の中に被写体を置いてやる。

単色の背景の前で、完璧に調整された照明を浴びながらまっすぐカメラを見つめているようなポートレートは、スタジオ写真家に任せておけばいい。
それより、自宅だとか仕事場だとか戸外だとか、その人のふだんの生活が垣間見えるような状況の中での自然光撮影は被写体自身がリラックスできるものだ。 しかも、周りの背景からその人の生活や仕事や趣味の一端が伺えて、意味の深いポートレートになるだけではなくて、本人にとっても貴重な記録になるだろう。
僕はこの手法をカルティエ・ブレッソンを始めとするマグナムの写真家たちから学んだ。 英語で "Environmental Portrait" (環境的肖像画)と呼ばれるこの手法は、1枚の写真で可能な限りの情報を伝えたい報道写真家にとっては当然の手段なのだ。

***

今日の冒頭の写真は、義妹のジェーンが姪のキャサリンの子守をしながら、森の中で静かな夏の午後を過ごしている愛らしい風景だ。 犬を含めたそれぞれ三様の目線と自然なポーズに、17,8世紀に描かれた古典絵画を連想していしまうのは僕だけだろうか?



そして下の写真。 世界中でもっとも僕が愛する人たちのひとり、詩人のパチクリさんが自宅の書斎で仕事中の記録である。 酒に酔うと子供のような素晴らしい笑顔を見せてくれる彼が、酒無しで詩を書くときにはこんな厳しさが表れる。


T99japan067bw-blog.jpg

書斎の渡部兼直氏
米子市旗ヶ崎


このテーマの参考になるかもしれないと思い、過去の記事から幾つかを拾って見ました。

サムとパイプ
タイムマシーンに乗って
スウィングがなけりゃ意味がない
陽気なジル
ヴェネツィアのマヤ


過去のレシピ

写真のレシピ(1) 「カラーかモノクロか」     
写真のレシピ(2) 「ポイントを決めよう」
写真のレシピ(3) 「陰影礼賛」    
写真のレシピ(4) 「クロップの勧め」
写真のレシピ(5) 「続・クロップの勧め」
写真のレシピ(6) 「群集劇のおもしろさ」
写真のレシピ(7) 「ミニマリズム」
写真のレシピ(8) 「警告!」
写真のレシピ(9) 「芸術写真?」
写真のレシピ(10) 「ユーモア」
写真のレシピ(11) 「被写体はどこにでも」
写真のレシピ (12) 「フレームの中のフレーム」
写真のレシピ (13) 「パターン」





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コメント:

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2013/06/16 []  # 

*

September氏の写真をみていると、物語が浮かんでくるのが好きです。
解説でウソを言ったとしても、写真ではウソをつけないし。
(以前、幼馴染ふたりを浜辺で撮った写真にSeptember氏が勝手に物語を作っていましたが、なんとなく違和感がありました。(笑))
2013/06/16 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

鍵コメさん、

お話を聞くと、写真嫌いは私よりもかなり重症のようです。
仲の良いお友達に写真家がいたら、きっと治療されていたと思うのですが、
今からでも遅くありません。
奥様に写真家になってもらう、という手もあります。(笑)
2013/06/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

micio さん、

物語の浮かぶような写真を撮りたい
というのが究極の夢です。
あの浜辺の写真は私に浮かんだ物語を書いたわけだから当然ウソなんだけど
あまり上手なウソではなかったみたいですね。(笑)
2013/06/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 渡部兼直さんのシャツの謎

Septemberさん、

僕の視点はテーマ(の本質)と外れたところにいってしまう傾向があり、恐縮です。以前のクイズの答えに、写真が左右反対になっているってのがありましたが、この写真も意図的にそうされたんでしょうか。それとも、たまたま「右が上になる」シャツを着てらっしゃったとか。

では、Happy Father's Day!
2013/06/16 [November 17] URL #- 

* こんにちは!

September30さん、こんにちは!

私は笑っちゃうほど小さいカメラでヘタな写真を撮っているのですが
生意気にも「写真のレシピ」を楽しみに読ませていただいています。
今回のポートレートのレシピもとても勉強になりました。
自然体で写っているポートレートを見ると素敵だな、
と思わずにはいられません。

因みに、若い時は写真を撮られることに抵抗はなかったのですが
年を重ねた今は・・・あまり写りたくないです(笑)
2013/06/17 [Mika] URL #GmSQBN1s [編集] 

* Re: 渡部兼直さんのシャツの謎

November さん、

この写真はもちろん元のままで、いわゆる「裏焼き」ではありません。
ということは、パチクリが着ているのはグレーのシルクの女性用のシャツ(ブラウス)です。
なにしろ彼は、郷里の町では「Y市の三奇人」のひとりとして伝説的な存在なのです。
私?
私なんか三奇人の殿堂に加えられるにはまだまだ若造で、パチクリに傾倒する鼻垂れ小僧にしか過ぎません。
2013/06/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: こんにちは!

Mika さん、 こんにちは。

私は良い写真を撮るのにはカメラや器材は関係ない、
と信じるマイナリティーのひとりです。
携帯電話のカメラでさえなければ、どんなカメラでも
良い写真が撮れない口実にはならない、と長年思っていたのですが、
最近のスマートフォンなんかの画像を見て、その画質の高さにびっくりしました。

ですから、もっと高価なカメラを持っていれば自分も良い写真が取れるのに
なんて思ってはいけませんよ。(笑)

最近写真に写るのが嫌いになったというのは
若いころの無邪気さがなくなって、あの自意識という名のお化けが現われたのではありませんか?
子供の心に帰りましょうよ。

ニセ心理学者のDr.September30のアドバイスでした。
2013/06/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

そうなんですよね。
父親がカメラが趣味で子供の頃は撮られるのが好きだったんです。
自意識が出てきてから大嫌いになり今に至っています。
「私ってブスだったのねー」って写真で確認するのがイヤ!
2013/06/17 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

大人になってから自意識を持たない人はいないそうで
大抵の人ならその中にコンプレックスが入るので
写真を撮られるのが嫌になるらしいのですが
美女と呼ばれるごく少数の人たちが逆に写真を撮られるのが大好きなのは
あれは自意識がないのではなくて
逆に自意識が異常に過剰だからだそうです。
と、ニセ心理学者のDr.September30が言っていました。
2013/06/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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