過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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倒錯の世界へ

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男たちと男たち
Paris, France


パリに2週間ほど滞在したホテルの近くで、トランスベスタイト(transvestite)、つまり服装倒錯者たちのパレードに出くわしたことがある。
人気のあるコミックの役柄を模した奇抜な衣装もあれば、ムーラン・ルージュの舞台から抜け出てきたようなエレガントなダンサーや、あるいは普段着でちょっとそこまでショッピングに、というふうなパリジェンヌまで、なにしろわんさと100人くらいの美女熟女が通りを練り歩いていた。 そして彼らはその全員が男性なのだ。
中にはどこから見ても絶対に女性にしか見えないという完璧な人もいれば、化けそこねて男性丸出し、という人もいた。 
いや、化けそこねて、というのは正確ではない。 彼らには女に化けるという意識は最初からなくて、単純に女性の衣服を身につけることを楽しんでいる、という印象を受けた。
パレード終了後には一般の観客が混じって、衣装を称賛したり雑談を交わす場面があちこちで見られた。 あの、今は古典になったフランスのコメディ、"La Cage aux Folles" (邦題、Mr..レディ、Mr.マダム) に見るようなゲイの世界は、この町では舞台や映画の中だけではなくて、現実の生活の中に存在しているようだった。

それについて思い出したこと。
昔、30代だった頃の僕はボストンから毎週のようにグレイハウンドバスに乗ってニューヨークまで遊びに出かけていた。 知り合いの日本人シェフたちが3人でシェアしていたアパートがマンハッタンのど真ん中にあって、僕はいつでも好きなだけそこへ滞在することができたのだ。 そしてその高層ビルの同じ階の住人で、エレベーターの前でいつも顔を合わせたのが、スピッツを胸に抱いた美少女だった。 自然と会話が始まって、彼女といっしょに犬の散歩をしたり、道端のカフェでランチをしたり、色んな話をするようになった。
ある時、シェフたちが出かけたあとのアパートへ彼女がやってきて、部屋へ入るなり 「まあ、男クサーい」 と笑いながら顔をしかめると窓を開け放して、そのあと半日をかけてテキパキと動きまわり、アパート中をきれいに掃除してくれた。

そんなことがあったあと、ごく自然の流れで、ある夜、彼女の部屋のベッドの中で衣服を剥ぎ取った二人が肌を合わせた時に、突然アッと思ってしまった。 (皆さんもう気がついている思うけど) その美しい少女は男の子だった。

不思議だったのはそのあと、気持ちも身体も萎えてしまったにもかかわらず、違和感とか嫌悪感がまったく湧いて来なかった。
「驚いた? ごめんなさい。 いつもここまでは同じなの。 蹴飛ばされたこともあるわ。 でもあなたのこと好きよ。 しばらくこのまま抱いてて」
と、哀しそうに云った彼女に、僕はすごく優しい気持ちになっていて、そのままの姿勢で彼女を抱いて長いあいだ話をした。
男とも女とも判別できない身体で生まれてきたこと、最初は両親に男の子として育てられながら、小学校にあがる頃女の子に変身したこと、口のうるさい小さな町にいたたまれなくなって、高校を出たあとニューヨークへ出てきたこと、そしてニューヨークで仲間を見つけて 「その世界」 へと入っていったこと、夜のクラブでダンサーをしながらお金をためて、いつか本当の女になるための手術を受けるのが夢だということ。

ポツリポツリとそんな話を耳元で囁く彼女が僕は無性に愛しくなって、ちょっぴりと膨らんだその胸に唇をあてる。 細く喘いでいた彼女が上半身を起こすと、身体を下にずらせて僕の身体にキスをしてくれた。
優しくて柔らかくて、深いキスだった。

その夜は外は雨が降っていた。


あのこが話してくれたこと
t.A.T.u







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コメント:

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2013/07/23 []  # 

*

ロマンティックな話です。それを受け入れるseptemberさんの懐の深さ。これで終ったとは思えないなあ。
2013/07/23 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* Re: 届きました

鍵コメさん、

あなたがドキドキしたのは若い証拠。
tATuを聴くのも若い証拠です。(笑)

心配はしていませんでしたが、
モノが収まるべきところに収まったようでほっとしています。
2013/07/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、

終わったか終わらなかったかは想像にお任せしますが、
その後の私が倒錯の世界へ入っていったことは二度となかった
とだけ言っておきましょう。
もっとも『モナとその周辺』でそのすぐ近くで暮らしたことはありましたが・・・
http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-66.html
2013/07/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Gift of Love

運命は時として残酷な間違いを犯すけれど、それに惑わされないだけの度量があるか否かで、災難が災難を呼ぶこともあれば、あるいは、深い慰めのときがもたらされることもある。

そんなことを改めて感じた私には、学びのときがもたらされたといったところです。

身体をずらせてキスですか.....でも、とても静かで、なんというか清浄なひとときを想像してしまいます。

「倒錯の世界へ」というタイトルからこの温かいgiftまでの距離が大きくて消化不良ぎみですが、いいお話をありがとうございました。
2013/07/23 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

* Re: Gift of Love

うらら堂さん、

ニューヨークや東京のような、あらゆる種々雑多な人々が昼となく夜となく蠢く大都会でなければありえない出会い、
私のこの話もそのひとつでしょう。
平凡な日常の生活で運命的な出会いのまったくなくなったアメリカの片田舎に住みながら、
過ぎ去った恋への追悼だけではなく、「都会の哀愁」への郷愁のようなものが私にこの記事を書かせました。
2013/07/24 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

私はそういった経験はありませんが、変わった人達は概ね優しい気持ちの持ち主が多かった印象があります。自分の経験して来たことを考えると、自分以外に対して優しく接することができるようになるんでしょうか。
2013/07/24 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

*

世の中男と女しか居ないっていうのは嘘なのよね。
胎児が育つ段階は途中までは全部女。
男に変化する時が難しいみたいで、そこで中間の人が出来る。
どっちの性で生きるかはおとなになってから自分で決めるのが一番いいんだって。
差別意識なんて全然ないはずの私でも女性とキスするのは抵抗がある。
冷たく拒否しなかったSeptember30さんは素敵だと思う。
2013/07/24 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

川越さん、

ゲイ(レズビアン)、トランスベスタイト、それにこの子のように生まれつきの一種の畸形(?)などと
それぞれが心理学上ではハッキリとした違いはあると思うので一概には言えないでしょうが、
概して言えばおっしゃる通りかもしれません。
普通の人がしたことのない經驗を持っているという点では共通するのでしょうか。
2013/07/24 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

普通の人が同性とキスをするのに抵抗があるのは
差別意識というよりも本能的な拒否感でしょうね。
どんなに好きな同性の人でも
その心に惹かれることはあっても身体に惹かれることはないから。

私だってもし彼女が男だと最初からわかっていたら
親密になってもそれ以上の一線を超えることはなかったのは確かです。
それが偶然というか奇跡というか、何かが働いた時にこういうことが自然とできてしまう。

それって男と女のあいだでも同じだと思いませんか?
2013/07/24 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

香港で暮らし始めて最初に仲良くなったのはゲイの女の子でした。キリっとした美人でモテるこだったので、全然気がつかなかった、、、。
2013/07/25 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micio さん、

妖しげな物語の冒頭の一文だけで切らないであとを続けて欲しいですね。(笑)
2013/07/25 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* ちょっぴり苦い思い出

ムーさんのコメントを読んで思い出しました。私はその昔女子大の同級生からキスしていい?と尋ねられて、「やだ、なにそれ!?」と不器用に断った経験があります。septemberさんが同性とのキスに抵抗を感じるのは差別意識というより本能的な拒否感のせいだろうというふうに書いておられるのを読んで、少し気が楽になりましたが、でも、もう少し優しく賢くふるまえたらよかったのにとは思います。男性がダメもとでちょっかいを出してくるのより、勇気がいることだったかもしれないので。
2013/07/25 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

* Re: ちょっぴり苦い思い出

うらら堂さん、

女の子が十代のころ同性に淡い慕情を持つというのは、むしろ普通の經驗だと聞いていましたが、
うらら堂さんのように、成熟してからはっきりと打ち明けられるのはそんなにないのでは、と推測します。
おっしゃるように彼女にとっては勇気のいることだったろうし、それほどうらら堂さんに惹かれたのでしょう。
そのあとお二人の関係がどう変わったのか、に興味があります。

でも
男性がダメもとでちょっかいを出すのだって凄く勇気がいるのですよ。
少なくとも私にとってはそうでした。
それだけにそのお友達の失意がよく分かるような気がします。
2013/07/26 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 彼女とのそれから

septemberさん、

直後はさすがにぎこちなかったのですが、お互いに「なかったこと」にして過ごしています。卒業後も年賀状は続いていますし、旅先から絵葉書を貰えば返事を書くし…といった感じです。ちなみに彼女は現在は男性のパートナーと同居中です。(バイセクシャルってことなのかしら)

私はあらゆる意味で「十人並み」で特徴がなくて、同性ながらにあこがれられていたなどということが考えられない状況だったので、ただただ仰天しましたが、考えてみたら、異性間でも「蓼食う虫は好き好き」ですね。少女マンガのように(せめて片方だけでも)美少女だったり中世的な魅力にあふれた女の子だったりしなくても、いろいろあるのかもしれません。

それから、男性にとっても勇気のいることだというお話ですが、そちらの方も「いろいろ」だと思います。相手が明らかに喜んでいないときでも構い続ける男性が勇気をふりしぼっているとは考えられませんので。
2013/07/27 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

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2013/07/27 []  # 

* Re: 彼女とのそれから

うらら堂さん、

私の推測では(当てになりませんが)
そのお友達はバイセクシャルというより、異性への目覚めが少し遅かっただけなのではないのでしょうか。
以後も両性への活動が活発だったのかどうかでその答えは出てくるのですが・・・

私の友達(女性)の話では、普通に結婚をして50代になった現在でも
あちこちで女性に言い寄られて困っていると言っていました。
本人は昔から同性にはまったく興味がなかったらしいので
自分でも気が付かないところでそんな雰囲気が自然に出る人、というのはいるのかもしれませんね。

また、
断ってもしつこく言ってくる男性というのは、自分がそういうことができないだけに
その情熱?には少し羨ましささえ感じてしまいます。
よっぽどうらら堂さんの魅力に参っているのでしょうが
崇拝者とストーカーは紙一重の違いになり得る、と思います。
2013/07/27 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

鍵コメさん、

秘密を明かしてくださってありがとう。
すべてがうまくいくようにと祈っています。
2013/07/27 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: 彼女とのそれから

うらら堂さん、

送っていただいたものが着きました。
詳しくは私信でお送りしました。
2013/07/29 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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