過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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戦争をする国に暮らして

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アメリカ、戦争に突入 2003年
Somewhere in Ohio USA



僕の住む町のローカルテレビ局が朝からショッキングなニュースを伝えている。
28歳の男性の自殺だった。
彼は1年ほど前にイラクから帰還した兵隊の一人だった。 奥さんと2歳の幼児を残してイラクに送られたのだが、爆弾に片脚を吹き飛ばされて本国に送り返されてきた。 2年間留守にして毎夜夢を見ていた家族のもとへ帰ってみると、若い奥さんには愛人がいたらしい。
その報道が人ごとのように思えなかったのは、実はその彼は、僕が長くいた会社で一緒に働いていたある女性の従兄弟にあたる人だったからだ。 それで彼の話は前に彼女から聞いていた。

以前からアメリカが抱える大きな問題になっているのは、戦地から帰った人たちの行状だった。 体験してきた地獄がそのまま心に住みついてしまうらしく、精神的に危険で不安定な状態に追い込められるそうだ。 その結果、自殺をしたり事件を起こしたり、そうでなくても社会復帰ができないままに半分廃人のような生活を送っている若い人たちの数は凄い数になるという。
五体無事で帰ることができたラッキーな兵隊たちでさえそうなのに、まして彼のように身体の一部を失い危うく命拾いをして、家族のもとへ還ってきた時にそこに自分の居場所が無い、とわかった時の彼の苦しみは僕には想像もつかない。 国から頂いた勲章なんか彼にとっては何の意味もなかったに違いないだろうと思う。 それでも彼は1年のあいだ、政府が提供した精神科医にかかったりして、必死で努力をしたそうだ。 そして回復が不可能だと悟った時に、彼は拳銃を口にくわえて引き金を引いた。



それで思い出したのは、今から10年前の2003年3月19日、アメリカと連合軍の軍隊がイラクへ最初の侵略をした時のことだった。
僕がこの日を忘れないのには理由があった。
ペンシルバニア州のピッツバーグで大学に行っていた娘の卒業式に出席するために、妻と妻の母と僕の三人は車の旅をしていたのだ。 車がオハイオ州を離れてウェストバージニア州に入る直前、僕らはハイウェイを下りてランチを取ることにした。 その時、レストランの入口に置いてあった新聞販売機に 『アメリカ、戦争に突入』 と書かれた文字を見て、(ああ、とうとう始まったか) という感が強かった。 新聞を買おうとしたら、販売機は空っぽだった。 レストランのテーブルに着いてわれわれ三人が最初に話題にしたのは、息子の太郎を徴兵に取られるかもしれない、ということだった。 そんなことはないだろう、と僕は云ったが、ブッシュ大統領を頭から毛嫌いしていた妻は、クルミぐらいのサイズの脳みそしかもたないあの男ならやりかねないと云ってゆずらなかった。 そういう僕だって、そんなことはないだろうというはっきりとした理由はなにもなかったのだ。 そのつい1か月ほど前には、アメリカの600都市で1千万人の市民がイラク戦争反対の大々的なデモと決起集会をやっていた。 その多くは青年を子供に持つ両親だったという。

パンケーキを食べてコーヒーをすすりながら僕は思っていた。 戦争をしたがる政治屋はどこの国にも必ずいるものだ、と。
これがもし日本だったらどうなるだろう?

『日本、戦争へ突入』

と、ある朝の新聞の巨大な見出しを、日本人はどんな気持ちで見るだろうか?
あってはならないことだ。 絶対に。




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コメント:

*

日本の男は平和ボケだ。とオジサンがほざいたので、
どんなにボケてても戦争よりはマシです!と言ってやった。

この世に男が居なければ戦争は起きない。
というのはある意味本質をついてるような気がする。

日本の現状は売られてる喧嘩をどうさばくかにかかっている。
日本人はよくも悪くも団結すると後先見えなくなる国民性だから余程注意しないとな。


2013/07/18 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

デカダンは平和なときにしか生まれないのでは、と常々思っていました。
いまの日本がそれでしょうね。
そして、
そうです! どんな頽廃も戦争よりはずっとマシです。

そして世界の歴史を見ても
デカダンの時代に文化が爛熟して優れた芸術を生み出していますね。
今の日本もそうだと良いのですが・・・
2013/07/18 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 平和の重み

日本の政治家の脳みそも相当小さいので、憲法改正とか原発再稼働とかあり得ないことが、いつのまにか進んでいます。

私も息子を持つ身なので、現実を考えると悪寒が走ります。

あり得ない事です。

人間は元来平和を愛する生き物なのか、もともと交戦的な生き物なのかわからなくなります。

福島で被災した友人が、日本のどこかで同じ事が起きたら、きっと福島の人々の気持ちがわかるから、再稼働すればいい、と過激な事を言っていました。
事態は地震直後よりずっと悪くなっていると、言っていました。

ただそこに暮らしていられる、そんな平和の重みを感じます。
2013/07/19 [みん] URL #6moyDOY6 [編集] 

*

日本も同じ道を進みそうです。そのアンチテーゼで共産党が支持を伸ばしています。都議選では第三党に躍進しております。
2013/07/19 [上海狂人] URL #ks8IdFps [編集] 

* Re: 平和の重み

みんさん、

人間は元来平和を愛する生きものだと私は信じたい。
長いあいだ留守をしていた日本の政治については現在改めて勉強中の私ですが
どのような結論を自分なりに出すにしろ
「戦争をしてはならない」 ということがその根底になることは
間違いないでしょう。
2013/07/19 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、

アメリカでは社交の場で政治と宗教の話はしないこと、
という根強い習慣があり、それに慣れてしまった私です。
このブログも社交の場所である以上できるだけ避けてきた話題ですが、
「日本は戦争をしてはならない」
このことだけはハッキリと言いたかった。
それ以外の政治論は他のブログに任せましょう。




2013/07/19 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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