過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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危険な関係



危険な関係のサンバ
Art Blakey and his Jazz Messengers


高校生の僕はフランスから日本上陸をしたヌーヴェル・ヴァーグの渦中に溺れていた。
衝撃的な物語、即興性の多い演出、スタジオを離れたロケーションだけの撮影、眼を見張るようなモノクロの映像。そしてその裏に、いつも流れていたのがモダンジャズだったこともさらに拍車をかけたようだ。
「い とこ同士」(シャブロル)、「大人は判ってっくれない」(トリュフォー)、「美しきセルジュ」(シャブロル)、「勝手にしやがれ」(ゴダール)、「ヒロシマ・モナムール」(アラン・レネ)、「去年マリエンバー ドで」(ロブ・グリエ+アラン・レネ)、「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)、そしてこの「危険な関係」(ロジェ・ヴァディム)、と50年前に見た映画をよくもまあ覚えていたと自分で感心するくらいに思い出せた。 もちろん、調べればもっともっといっぱい見たのはまちがいない。

「危険な関係」を最初に見た時は、主演のジェラルド・フィリップやジャンヌ・モローはその頃の僕には大人のお兄さんお姉さんという感じがして、彼らのやる放埒な恋と誘惑のゲームをポカンと 口を開けて見ていたと思う。その中で若いアネット・ヴァディム(監督の奥さん) が僕のお気に入りで、そのあと同監督の「血と薔薇」でもうすっかり彼女に魅せられてしまっていた。あんな美女を自分のものにできるなんて、映画監督とはなんとうまい商売だろう、と憧れたものである。
しかし「危険な関係」で映像と同じくらいに僕がショックを受けたのは、音楽担当のこのアート・ブレーキーのグループだった。このテーマ曲はピアニストのボビー・ティモンズの作曲によるものだけど、このサンバを聞けばすぐ判るように、主役はむしろうしろで凄絶なドラムとパーカッショ ンを叩く大殿のアート・ブレーキ―だった。この演奏には映画の醸しだす頽廃とエロティシズムの雰囲気そのままに、緊迫したテンションが溢れている。

ロジェ・ヴァディムといえば、一生に結婚を5回繰り返した。
後年になって "My Life With The Three Most Beautiful Women In The World (1986)" (世界でもっとも美しい三人の女たちと私) という自伝で、以前の二人の妻と一人の恋人の女優たちのことを書いたのは、5人目の妻、女優のマリー・クリスティーヌ・バローと結婚する数年前だったから、 あの本を読んだバローとしてはどんな気持ちで彼との結婚に踏みきったのだろう、と考えてしまった。

1952年に、24歳だったロジュは17歳の少女ブリジッド・バルドーと結婚したあと5年後に離婚。
その翌年にアネット・ストロイバーグ(アネット・ヴァディム) と結婚してこれは2年後に離婚。
その翌年、1961年に17歳のカトリーヌ・ドヌーブと知り合い、結婚はしなかったが2年後にドヌーブがロジェの息子を生んだ直後に二人は別れている。
その同年、ジェーン・フォンダと同棲を始めて2年後の1965年に結婚、この結婚は8年続いた。
1975年には衣裳デザイナーのキャサリン・シュナイダーと結婚。 2年後に離婚。
それから13年間は、さまざまの女達との情事を繰り返したあと、
1990年に最後の女性となるバローと結婚をして、10年後に72歳のロジェはバローの胸に抱かれて死んだ。

なんという人生!

文字通り芸と女に生きたロジェ・ヴァディムは只の「女たらし」ではあるまいと思う。一つ一つの恋に彼はすべてを賭けたような気がする。映画界の寵児としてその気になれば、永遠のバチェラー(独身男) を通しながら次々と女を変えていこうと思えばできたろうに、彼はそうしないで律儀に結婚を繰り返して、それぞれの女に4人の子供を生ませている。きっと、それぞれが最後の恋だと思っているうちに、さらに崇高な至上の恋に巡りあってしまったのだろうか。その終わりのない遍歴は最終的にマリー・クリスティーヌ・バローとの結婚という形で終結する。ずっと以前から知っていた女優だった。
そして10年後の2000年に、今まで関係のあったどの女よりも先にあっけなく死んでしまう。

なんという人生!




私は誘惑には絶対に逆らわない
なぜって
自分のためにならないことに誘惑を感じることはない
と発見したから。

George Bernard Shaw



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コメント:

* 男は最初の男に、女は最後の女に、、、

うわ、凄いカッコイイですねこのサンバ。
聴いただけで、あの車とモードのモノクロのヌーヴェル・ヴァーグの時代がイメージされる。。

実はわたし、カトリーヌ・ドヌーブさまの大の信奉者なのです。

September さんもお好きだと伺って、とても嬉しく頼もしく思っているのですよ。
なぜって私も、世界一の美女だった若い頃より、今の彼女に完全にノックアウトされているから。
女の生き様の理想美が、あの方にはあります。
なわけでワタシ、いずれ小劇場界のドヌーブと言われる野望に生きてます。(爆笑)

ホラね、語りだしたら止まらなくなっちゃうんで、長くなるのが申し訳なくて、
こちらでも何度あのかたのお話をしたいと思ったことか、そのたび誘惑をねじ伏せていたんですが、
今回はついに負けてしまいました。
そう、ちょうど一昨日から、ドヌーブさま来日されてるんです。
もう帰っちゃったかなあ。

ロジェ・ヴァディム。。天才ですよね、本人も言ってますが 「女の研磨師」 としての。
べべもドヌーブも、アネット・ストロイベルグもフォンダも、
ヴァディムが世に送り出した、ダイヤで出来たガラテアですよね。

この人で思い出すのが、べべとの逸話。
「下着は女性からセクシーさを奪うものだからいけない」 と言われて、
べべはヴァディムとの暮らしでは、いつでも一糸まとわぬ姿だったそうです。
今、女性のランジェリーがセクシーになったのも、元を正せば彼のこの美意識が浸透したからでは?
と思ってるんですけどね。

ドヌーブの退廃美を作ったのもヴァディムですものねえ。。
さらに完璧なのはジェーン・フォンダへの魔法。
『バーバレラ』で、どっちかというと野暮ったいお堅い娘女優のまま年を食いそうだった彼女を、
超がつくセクシー女優に変貌させたんですよね。

二人とも、彼のおかげで芸域が広がってスタアダムに乗ったわけで、
大した男だと思います。
なんというか、オトコのプロって感じ。

バローは、彼と一緒になった時点が 40代だったようなので、
この彼の遍歴はそのまま彼女の勲章にもなったんじゃないかと。
だって、あのロジェ・ヴァディムに最後に愛された女、ということですものね、
これはたまらなかったと思います。
大人の女なら、放蕩だろうと不埒だろうと、愛した男のすべてを共有できますしね。

そのヴァディムを、本当の意味で踏み台にしきった女はドヌーブだけだったとも思うのです。
フォンダに取られたような形になって、ぬぐい去れないほどにつけられた深い傷が、
彼女を本物の大女優にしていったと、あたしは思ってるんです。

なーんて、ああやっぱり!凄い長さになっちゃいました、ごめんなさいー!(笑)

2013/08/31 [belrosa] URL #eJbgdmWg [編集] 

*

うーん、なんという人生!
しかも「お若いのがお好き」(笑)
最後に胸に抱かれてって、
男の人の理想の人生でしょうねこれって。
こういう男はまたいい女を選ぶのよねー。
真似しようったってなかなかできないのですこればかりは。
2013/08/31 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: 男は最初の男に、女は最後の女に、、、

belrosa さん、

いやいや、芝居関係のブログ上で belrosa さんの演技に関する劇評や印象文を読むと
もうすでに「少劇場のドヌーブ」の位置は確立されているようですね。
そこへ辿り着くまでには数多くの男の影があったに違いありません。
その中で、ヴァディムがドヌーブに与えたような決定的な影響を
belrosa さんに打ち付けた「女の研磨師」は
演劇の世界の中にやはり居た(居る)のでしょうか。

後年のドヌーブには他のどんな大女優よりも、
円熟した女の美しさを感じます。
女優という芸術家である前に、女であることをやめていない美しさ、とでもいうのか
あの少し太めの身体から洗練された色気がぷんぷん、
それこそ「オンナのプロ」ですよ。
belrosa さんのように「さま」を付けて呼ぶほどの大信奉者は
きっと世界中にいますよ。男性にも女性にも・・

ヴァディムの本はぜひ読んでみたいですね。
芸術に(しかも同じ芸術に)打ち込む男と女が一緒に住んで愛しあう生活とは
いったいどんなものなのだろうか?
すごく興味があります。
それは単純な、師と弟子の関係だけではないような気がします。

belrosa さんに、
いずれご自分の遍歴を本にして欲しいですね。




2013/09/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

まことに
「うーん、なんという人生!」 
です。

ロジェ・ヴァディムのような恵まれた(?)立場にあれば
女の選択は自由自在だったのでしょう。
まるで、キャンディ屋に放り込まれた子供のように。(笑)
いちばん美味しいものを掴み取りできる。

せめて私は今日も酒屋へ行って
いちばん美味しそうな酒を選んできましょう。
2013/09/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

去年マリエンバードでを5回くらい観たのですが、さっぱり分かりましぇん。
気狂いピエロのほうがまだ分かります。(今観てみたら、なんとなくという感じですが)
で、あまりにも分からな過ぎて、逆に強烈に印象に残ってしまうという、、、。
ヌーベルバーグって、頭で観るものではなく、色(モノクロなので基本ないんですけど、たまに色的なものが見える気がします)や音楽や雰囲気を脳に染み込ませる映画なんでしょうか。
あと、びっくりしたのは、フランス人の女性って、素肌にセーターを着るんだなと。チクチクしないんだろうか。

という、変なところばかり気になって観ています。
2013/09/01 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: No title

micio さん、

ヌーヴェルヴァーグは確かに一応筋らしきものはあるけど
物語というよりも、詩といったほうがいいのでしょうか。
時には奇をてらうよなところがあるけど
その新鮮さには目を見張りました。

おっしゃるように
頭で解釈するより肌で感じる、というか
べつに分からなくても構わないんじゃないか、と思います。

「去年マリエンバートで」 といえばあの強烈な映像の記憶が
以前、私にこの記事を書かせました。

http://blog1942.blog132.fc2.com/blog-entry-160.html
2013/09/01 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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