過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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20ミリの世界

101117


堕ちていく女
Musee D'orsay, Paris


20ミリの超広角レンズに出合ったのはもうずいぶん昔のことだったが、たちまちその虜(とりこ)になってしまった。
超広角を初めて手にする者が最初は誰でもそうであるように、遠近のパースペクティブを極端に強調したショットや、超広角でしか撮れないアングルのショット、近景と遠景を対比させたショットなど、夢中になって撮りまくりながらレンズ光学の魔術に感嘆していた。
そしてしばらくすると飽きてしまった。

そんな時偶然に、50ミリで撮るべき平面的なシーンを被写体にうんと近寄って20ミリで撮った写真を見ていて、あっと思ってしまった。 画角は50ミリで撮られたものと理論的には同じであるはずなのに、どこか何かが違うのだ。 そこには、50ミリで作られた織物をいったんバラバラにして、今度は違う材質の縦糸と横糸を混ぜ合わせて、あらためてもう一度織り直したタペストリーのような不思議な雰囲気があった。 そしてそのイメージは、見る者に現実と非現実のあいだを揺れ動いているような奇妙な感覚を伝えた。 そこにあるのは眼にはっきりと訴えてくるものではなくて、よく見ないとうっかりと見過ごしてしまいそうな微妙な、不思議な空気だった。
それで再び病みつきになってしまったのである。

それからは外に出かけるときにはこの20ミリは必ずカメラバッグの底に潜んでいた。 それを取り出して使うチャンスははるかに少ないにもかかわらず、僕はいつも20ミリで取れる被写体を探し続けていたように思う。 それは現在でも同じだ。
「超広角で撮られたようには見えないイメージを超広角で創る」---これが僕の命題になった。

「堕ちていく女」 はそんな中の数少ない一枚である。 この写真は、誘惑に堕ちたなまなましい女の裸像からほんの1メートルしか離れていない地点に立って撮っている。


私はあらゆることに抵抗することができるが
誘惑にだけは勝てない。
Oscar Wilde





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コメント:

*

超広角。
いまは20mmくらいは超広角とは言わないそうです。
あんまり気にしないで使ってますが、こちらが意思を持つとそれに反した写真になるようで、気難しいです。
2010/11/19 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、
気難しい、という言葉はぴったりです。
なかなかコントロールをさせてくれないところに魅力があります。
2010/11/20 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

こんばんわ
余り分らないけれど、凄いと思います。
2010/11/21 [cocco] URL #- 

* Re: No title

Cocco さん、
コメントありがとうございます。
これからよろしく。
2010/11/21 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* はじめまして

こんにちは。はじめまして! 
いろいろめぐってここにたどり着きました。
写真拝見して感動しています。
一枚一枚ゆっくり拝見したいと思います。
2011/10/26 [アンリURL #- 

* Re: はじめまして

アンリさん、こんにちは。はじめまして。
アンリさんがここに辿り着くのをず~っと待っていました。
これからもよろしくお願いします。
2011/10/27 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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