過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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墓地の秋

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眠れる女たち
Calvary Cemetery, Dayton, Ohio USA


この小さな白い墓石の下に眠るのはすべてカソリックの尼僧である。 なぜか没年だけが刻まれていて生年が書かれていない。 一つ一つ見ていくと一番古いのは1894年というのがあった。
一度修道に入ってしまえば、亡くなっても家族の元には帰らないでこうして同僚と一緒になるのだろう。 それとも、世を捨て人を捨てて修道に入った時に、彼女はすでに孤絶の人生を送る決心をしていたのだろうか。

「あなたも早くいらっしゃい。 みんなでいろいろなお話しましょう」
と、老いた尼僧の声が、薄ら寒い晩秋の風に乗って聞こえてくるようだった。 片隅では若い尼僧がクスクスと笑っっている。 
「早くいらっしゃいって言われても・・・」 と僕は答える。
「僕にはまだやらなきゃならないことがあるし、それに僕が死ぬのはここじゃなくて遠い日本の国なんだよ」

尼僧たちの秘そやかな囁きが続き、それを消すように、乾いた落ち葉がかさこそと音を立てて舞い散った。





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この墓地は我が家から車でほんの10分の距離にあって、1周間に1度はここを訪れる。 別に墓地が好きだというわけではなくて、犬を走り回らせるために来るのだ。 ゴルフ場を幾つもくっ付けたようなすばらしく広大な墓地だから、車を乗り入れてその日の気分でいろいろ違う場所に停める。 そして犬を放してやる。 僕はその辺りをゆっくりと歩き回りながら、墓石に刻まれた知らない人たちの名前を読んで、何歳で亡くなったのかを頭のなかで計算したりする。 町の騒音はここまでは届かず、辺りは静寂に満ちている。





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一昨年亡くなった義父が眠るのもこの墓地だったが、今日は迷ってしまってどうしても探し当てることができなかった。 それほどこの場所は広いのだ。 その代わり見つけたのは、綺麗な青い大理石の墓。 靴の箱くらいの大きさしかないその墓は、散歩者やジョッガーがほとんど来ることのない片隅に、その名前の通りに隠れるようにして、ひっそりとそこにあった。





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遠くに見える大きな銀杏の樹の下で、パイシーが糞をする時の多角的なポーズを取っていたので、僕はポケットからビニール袋を取り出して近寄っていく。
するとそこにはこんな墓があった。 しっかりと銀杏の樹に抱かれて、その墓はほかの墓のように寂しそうには見えなかった。 フランクさんは生前に銀杏をことさら愛したのか、それとも只のすごい寂しがり屋だったのか。 僕はビニール袋にパイシーのお土産を入れると、車を停めた方角へ向かって歩き始めた。


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コメント:

*

有難うございました。
写真が届きました。
思った以上に、私にとっては有り難い写真です。
大切にいたします。
取り急ぎ御礼を兼ねて受領のお知らせをさせていただきました。
2013/11/10 [Via Valdossola] URL #P6wRKz4w [編集] 

* Re: No title

Via Valdossola さん、

無事に着いたようですね。
写真の内容上、サイズを小さめにしたことをお詫びします。
2013/11/10 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

こんなふうに木に抱かれたらいいでしょうね。自分の場合はどうなるかなぁっておぼろげに考えてしまいます。相棒は散骨するといってますが、山の中にまいてもらうのもいいかなとは思っています。
2013/11/11 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

*

墓地を散歩というと、
えー?っていう人もいるでしょうが、
私は青山霊園のまん前で育ったので遊び場になっていました。
日本の墓地ですからもっと陰気です。
木に登ったり墓石に登ったり(怒られました)。
幽霊も人魂も見たことはないです(笑)

2013/11/11 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

川越さん、

私は海に撒いてもらいたいですね。
でもお互いに、まだまだそんなことを考えるのはやめましょうよ。

2013/11/11 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

えーっ? そうなんですか?
日本人は墓地を散歩しない?
墓場に対する感覚が違うというか
死に対する感覚が欧米とは違うのかもしれません。
そこで犬に糞をさせるなんて、とんでもないことなのでしょう。

幽霊や人魂だって怖いものはきっとあるはず。
だから現れなかったのです。(笑)
2013/11/11 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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