過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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プロヴァンスの石の家 (4/4)

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ブランチはサンルームで

連日の日帰り旅行と1泊のカマルグ行が続いたあとは、どこへも行かずに家でごろごろしたり、洗濯をしたり、徒歩で近所を散策したりする日があった。 そんな日にはそれぞれが勝手に朝寝坊をして遅く起きだしてくる。
この朝僕が目を覚ますとすでにコーヒーの香りが家中に漂っていて、あくびをしながら階下へ降りるとサンルームのテーブルはきれいにセットされていた。 あとで聞くと、ふだん調理当番には入っていないマヤが今朝はひとりで全部やったのだという。 サラダにポタージュ、卵、ハム、チーズ、クロワッサンとバゲット、数種類のとびきり美味しいジャム、それに冷えた白ワイン、と優雅なブランチとなった。





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家の向かいにはローマン・シアターがあって・・・

サンルームからすぐ向かいに見えている巨大な石段は、大昔に古代ローマ人が造った闘技場だった。 その裏側には近代的な博物館があって、そこを訪ねてこの闘技場の史実を知った時に僕は思わず唸ってしまった。 建てられたのがなんとBC500年というからすごい。 ローマ帝国が全ヨーロッパを支配していた時に、その威容を示すためのさまざまの創造物のひとつがここにも残っていたのである。 この町には21世紀の現在と紀元前の世界とが文字通り同居しているのだ。
このローマン・シアターは現在は夏になるとロックのコンサートが開かれてフランス中から若者たちがなだれ込み、この町はものすごい騒ぎになるそうだが、ヘンドンハウスでは居ながらにしてそのコンサートを楽しめるというわけだ。 コンサート開催中はその混雑と騒音のためにこの家の滞在費が割引になる、というのはロックが好きな人ばかりではないようだ。

そういえば不思議な偶然があった。
最初にこのヘンドンハウスへ到着した時に、同行の娘のマヤがアッと絶句して立ちすくんだ。
彼女が突然思い出していたのは、6年前にまだソルボンヌに留学していた年の夏、友達数人とパリから車を10時間運転して、はるばるこのローマン・シアターまでレディオヘッド(Radiohead)のコンサートへ来ているのだ! そのシアターの真向かいに6年後に住むことになるとは、なんという巡り合わせだろう。





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ローマン・シアター

今、自分がこうやって指で触ったり腰掛けたりしているこの同じ石段に、2000年以上前に誰かが同じように腰掛けていたのだと想像する時に、僕は 当たり前のことながら 「石は燃えない」 と改めて悟ったのだった。 その昔、グラディエーター(闘士)とライオンの死闘に大歓声を上げた民衆の子孫たちが、2000年後に同じ劇場でロックスターに熱狂的な声援を送るのだと考える時、人類の歴史とは長いものなのか短いものなのか、混然としてわからなくなってくる。





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進化と退化

ローマン・シアターの石塀の外には、ツーリストのための案内所やコミュニティーの集会所やギャラリーが並んでいる。
先ほど博物館で古代ローマ帝国時代の彫像を数多く見たばかりの僕の眼に、この21世紀の前衛彫刻は不思議と奇異に映らなかった。
のんびりと歩きながらつい目と鼻の先のヘンドンハウスへ向かう途中、アメリカでの自分の生活とは何という違った世界がここにはあるのだろう、と思っていた。 そしてその世界を、旅する者としてではなく、たとえ短期間でもそこに住む者として経験できたことが嬉しかった。

さあ、今日はこれから帰って何百枚という写真の整理をしなくちゃならない。 明日からまたアクションが始まるのだ。 明日の予定はフランスで一番高い山であるモンヴァントゥに登ることになっていた。 ここからはそんな遠くではない。
この山登りでは下山の途中で車が故障したりするのだが、そのことはここに書いた。


(終)



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コメント:

* うわあ。

一気に読んでしまいました。この週末の時間がとても有意義なものとなりました。いいですね、こういう車を使ったのんびりとした旅。私免許もってても運転できないんです。ドイツの国際免許に切り替えたのかかわらずで巣。こうやって運転ができて旅ができたら、とてもいいでしょうね。。
来月のオースターのお休みをどこにしようか考え中だったんですごく刺激させられました。
2014/03/08 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: うわあ。

inei-reisan さん、

ヨーロッパ圏に住む人をつくづく羨ましいと思うのは
気軽に簡単に他国への旅ができて、それぞれの国でユニークな經驗ができることです。
アメリカなんて3日間ぶっ続けでドライブしても目にするのは変わり映えのない同じ風景ですから。
2014/03/09 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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