過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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新しいもの古いもの

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古着屋
Dayton, Ohio, USA


アンティークとか骨董品と呼ばれるにはどのくらい古くなければならないか?
100年以上経っているもの、というのが世界的な基準になっているようだ。それを最初に規定したのが世界で最も歴史の浅いアメリカだったというのが面白い。ヨーロッパでもアジアでも200年、300年を経た建築や物品が至る所にごろごろしている国にとっては、100年などまるで子供だましのようなものだ。それがあえてアメリカの基準に従ったのは、「まあいいか、新顔のくせにボスづらをしてるから、好きなようにやらせておけば」 というような雰囲気があったのかもしれない。

建築物について言えば、僕らの住むレンガ造りの家は1900年代の始めに建てられたそうだから、これはもう立派なアンティークということになる。だいたい僕は機能だけを考えて作られたモダンな家が好きではなくて、廊下や縁側があったり、何のために使われたのか首をかしげるような小さな部屋があったりするような無駄の多い家が好きだ。無駄とは贅沢の別名だからである。

日本人はあれだけ古い文化を持ちながら、住む所となると新しい機能的な家を好むのは、狭い国土に人がひしめいている事実だけではなく、他人の手垢のついたものを嫌うという持ち前の潔癖感から来ているのかもしれないと思う。

もう10年以上も前の話だけど、日本からアメリカへ赴任して来たある大会社の社長さんと親しくなって、家族5人の住む家を探すのを手伝ってあげたことがあった。知り合いの不動産屋とか業界紙でいろいろと見たあと、これはと思う家を見つけたので彼に知らせる前に自分で下見に行ってみた。
それは白壁に黒い木の梁がアクセントを付けた、チューダー様式の美しい家だった。ベッドルームが5室あるから客用の寝室もとれるし、彼の好きなゴルフの練習もできそうな広い庭は、人を雇えば手入れには問題がない。花壇や小さな菜園もあって庭いじりの好きな人なら狂喜するだろう。車が3台入る車庫が付いていたが、それは昔の馬車小屋をそのまま改造したもので、その一部は物置として立派に使える。かんじんの本館は建物は古いけど内部は完全に新しく改造されて快適に暮らせるような設備が整っていた。にもかかわらず家中いたるところに、前世紀を偲ばせるデテールがセンス良く保存されている。僕はその場で魅了されてしまったが、住むのは自分ではないからこればかりはかんじんの彼らが何と言うか分からない。 僕は自分の興奮を隠すのに苦労しながら彼に電話をした。

数日経って彼から電話があった。家族連れでその家を見に行ったそうだ。彼自身はとても気に入ったが、かんじんの奥さんと子供達が嫌だと言ったらしい。彼等が言うのはまず家が古すぎる。内部は何となく薄暗くて、広いリビングルームの天井が高いのはまるで昔の小学校の講堂のようだし、部屋と部屋が完全に孤立してそれが迷路のようなホールウェイ(廊下)でつながっていて、あれでは家族の誰がどこにいるのかわからない。夜になるとお化けでも出そうだ、と子供達が言い、奥さんはキッチンが広すぎて動くのが大変、家中の掃除も大変、というようなことを言ったらしい。
その社長さんは若いころロンドンに留学したこともあって、こんな家に1度は住みたかったと言ってくれたが、どうやら家族の反対でその夢はかなわなかったようだった。僕は僕で、あの美しい家を化物屋敷と呼ぶなら僕の家など狐狸の住む廃屋と見られるのかな、と思った。
その後この家族は無事に家を見つけて、ほとんど新築のモダンで華奢(きゃしゃ) な家へ引っ越していった。



家に帰れば僕は絶対的なボスだよ。
女房なんて物事の単なる決定者にしかすぎない。
ウディ・アレン



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コメント:

* 古物

september さん、こんにちは。
近くの神社や都内などで、定期的にある骨董市に時々行きます。時々やっている東京歩きも、古い東京(江戸)を探してのことです。上京した時買った、地名変更前の東京の地図は今や貴重品です。ヴェネツィア歩きが楽しいのは、法律で建物の外観の変更が禁止されており、今でも中世の景観が見られることです。
男性は慣れ親しんだ物に愛着があり、修理してでも使おうとする癖があり、女性は新しい物に切り替えて心機一転したい傾向があるかに見えます。それは建物等に関してもそうでしょうね。
日本では姥捨ての昔から新しいもの好きの民族なのでしょうか。
2014/05/21 [ペッシェクルードURL #/plE8HKU [編集] 

* Re: 古物

ペさん、こんにちは。

前回の東京滞在で上野の美術館へ行った時に
久しぶりであの辺りをうろうろと歩きまわりました。
至る所に昭和もあれば江戸も残っていて時の経つのを忘れました。

私の住む地域では建物の規制はありませんが
表に面する庭の柵などにはうるさいです。
中が見えないような高い柵や、金網は禁止です。

日本人は新しいもの好きの民族だとは今まで考えてみたことがありませんでしたが
そうなのですね。
だから私など時々日本へ帰るといつも浦島太郎になってしまい
違和感を感じるのでしょうね。
2014/05/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* ウディ・アレンへの返歌

“The man may be the head of the household. But the woman is the neck, and she can turn the head whichever way she pleases.” ― Nia Vardalos

ところで、Septemberさんがみつけてあげたおうち、素敵すぎ! 一度そんなところに住んでみたいです。 
2014/05/22 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

* Re: ウディ・アレンへの返歌

うららさん、

欧米では財布の紐をがっしり握るのは旦那、というのがほとんどで
しかもレディーファーストの気風が染み込んでいるから
その紐をいかにして緩めさせるか、ということが奥様連中の手腕となるのでしょう。

日本では逆に家計を見るのは奥様の仕事で
旦那はその奥様からお小遣いをもらうのが普通だと聞きました。

そういえば
私の最初の結婚でもそうでした。
へそくりを作るのに苦労したものです。
Head of the household(一家の頭)は女房で
私なんてその首どころか、ただの手足にしか過ぎませんでしたよ。(笑)
2014/05/22 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 家探し

自分の家探しでも手一杯なのに、人のお世話までしてしまうSeptember30は本当に心が優しいひとなんだなあと思います。
September30の言葉を再び読み返してみて、そう思ったんです。
こんなストーリがかけてしまう人生を送っていることが、やさしさの塊なんです。
2014/05/23 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

*

そういうお家に住んでみたい!
って思いますけど、
広いってほんとに掃除が大変。
お風呂や寝室ががいくつもあれば、
それ誰が掃除するのよ?ってなる。
メイドさんが何人もいる生活ならいいけどねー。
あ、でも人を雇えるお金持ちなんだ。
それでも嫌かなー。

日本じゃ「京都の町屋に住む」なんて一時流行ったけど、
今どうなっているんだろう。

私は全然住みたくなかった(笑)


2014/05/23 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: 家探し

inei-reisan さん、

ところが私は人のおせっかいを焼くのがあまり好きじゃないんですよ。
それが相手が日本人となるとつい動いてしまうのは
同胞意識からでしょうね。
2014/05/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

ムーさん、

掃除はほんとに大変だと思います。
社長さんがこの家を断った一番大きな理由はそれだったのだと
私は思っています。

京町家のような立派なものではありませんが
子供の頃私の一家が住んだ借家は
そういう、表は店屋があってうなぎの寝床みたいに細長い裏手の2階屋でした。
すぐ裏に流れる水路は昔の城下町時代の外堀で、
小さな木の橋を渡って家から外に出るのです。

数年前にそこへ行ってみたら
掘割は完全に埋められて新し道となり、その家には新しい立派な玄関が造られていましたが
中はどうなんでしょうね。
2014/05/23 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 京都の町屋

私も、住みいとは思いません。寒そうだし下手なピアノの音がだだ漏れになるのが困るもの。

ところで、「住む」というのとはちがうけど、法律事務所として使われている町屋もあるらしいですよ。
2014/05/23 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

* Re: 京都の町屋

うららさん、

日本にいた頃私が知っていたクラシックのピアニストは純日本式の家に住んでいて
練習室の壁、床、天井にお金をかけて厚い防音壁を張っていました。
1日中弾いているわけだからそうでもしなければ
近所だけではなく家族もたまりませんよね。

私は膝を曲げて座るということがもうできないので
古い屋敷に招かれるのが苦痛です。
うららさんはどんな家にお住みなのか?
私を招待して下さる時はテーブルとイスでお願いします。(笑)
2014/05/24 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 離島の町屋

我が家は、中途半端に古い和洋折衷の建物です。Septemberさんにおいでいただけることがあったらうれししい。そんな日が来たらいいなあ。もちろん椅子とテーブルの部屋にご案内します。

純日本式の家とピアニストの組み合わせは、それ自体がちょっとアートですね。いいなあ。グランドピアノだと防音に加えて床の強度も心配になるから、純日本式のお宅のピアノ室というのは、現実問題かなり大変だったことと思います。

去年ピアノを買ったときは、古いピアノを捨てる気になれなかったせいもあり、置き場に困って納戸を改装しました。窓から隣の家まで3メートル程度しか離れていないので、窓を二重窓(しかも内窓も複層)にしたり防音カーテンをつるしたりしたので、お隣対策はばっちりです。

さて。タイトルの離島の町屋ですが、父方の祖父の家のことです。増改築を繰り返した旅館のようにわけがわからんことになっていたのでのですが、元は町屋だったのだと思い至りました。無医村で内科を開業することにした祖父が元々酒屋さんだったという家を買ったと聞いています。真ん中を土間が通っていて、片方が医院で反対側が自宅スペースでした。といっても自宅側も2階は大方病室になっていたし、1階も土間の奥のに井戸や物置があって、入院患者さんが洗濯したりしていたので、自宅とそれ以外の領域の区別は曖昧でした。

というわけで、ムーさんのお話の町屋暮らしからイメージできるような趣味人のおしゃれな住まいとは程遠いのですが、今思い返すとわくわくするような建物でした。残念ながら10年ほど前に解体してしまったのだけど、自分の記憶や父が残した手書きの図をもとに作った見取り図があるので、見つけたら別便でお送りします。(東京のひみつ基地において来たかもしれません)
2014/05/25 [うらら堂] URL #PTRa1D3I [編集] 

* Re: 離島の町屋

うららさん、

お祖父様の診療所の話を読んでいて
昔見た黒澤明の『赤ひげ』のシーンとイメージが重なってしまったのですが
これって荒唐無稽な連想でしたか?
原作の山本周五郎の『赤ひげ診療譚』は私は読んでいないのです。

子供の頃のうららさんはお父様に連れられてこの離島をよく訪ねたのでしょうね。
見取り図もぜひ見てみたいけど
写真などあればぜひ拝見したいものです。
そんな建物の内外の写真を撮って欲しいなんて依頼でも来れば
喜んで飛びつくのですが・・・
2014/05/25 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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