過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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September30

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またまた古い写真を見つけた

Image0285-blog.jpg

カフェテリア
Brighton, Massachusetts, USA (1974)


「あなたのお尻の写真を撮らせて欲しいんだけど…」
と僕が云うと、30歳前後と思われるその女性は驚いた表情で僕の顔を見つめ、僕が手にしたカメラに不審そうな目をやると、その視線をまた僕の顔へ返した。 予期した反応だった。 もちろん僕は最初からちゃんと説明をするつもりでいたのだ。
あなたが腰掛けているスツールにまるで魚眼レンズを通して見るように食堂の全体が写っているのに気が付きましたか? 実はその中に自分を置いて一種の自画像を撮りたいんだけど、空のスツールの並列だけではつまらない絵にしかならないと思うんです。 そこで脇役としてあなたのお尻に登場して欲しい、という訳なんです…

彼女の表情から警戒心が消えてそのあとに微笑が現れたので僕はほっとする。
「そういう事なのね。 いいわよ、構わないわ」
僕は彼女のお尻のすぐ下に座り込むと、24ミリの広角を付けたニコンを顔に当てて数枚の写真を撮った。
遅い朝のカフェテリアには僕ら以外には客はなく、ウェイトレスは裏で煙草でも吸っているのかいつの間にか姿が消えていた。 周りに誰もいなくて良かった。 そうでなければ、あの変質者、女性のお尻に顔をくっつけて何をやってるんだ、と思われても仕方のないような図に違いなかった。

「ありがとう」 と床から立ち上がった僕が礼を云う。
「いいえ、私のお尻があなたのアートのお役に立てて嬉しいわ」 と彼女は声を立てて笑った。



あれから40年経ってこの古いネガを見つけた時に、そこには写っていないあの女性の顔や笑い声や、手に持ったコーヒーカップの白さまでが鮮明に記憶に蘇ってきたことに自分でも驚いた。 孤独の底に沈みこんでカメラだけを唯一の友として街から街をさまよい歩き、シャッターを切る時のあのパシャリという音にだけ慰めを感じた日々を忘れることはない。



時には母のない子のように






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コメント:

*

これは面白い写真ですね!
文章を読み始めたときは「またSeptember30さんの創作が始まったな」と思ったのですが、まさか事実だったとは。
よほどこの女性がおおらかだったのか、September30さんが他人に素直に受け入れられるタイプなのか、40年前のアメリカはそんな時代だったのか、はたまたこの女性も写真を嗜む人だったのか?
こんな写真を撮れる人は写真家の中でも稀なんじゃないでしょうか。
2015/01/12 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さん、

この写真は自分ではコンポジションに不満足だった上に
かんじんの自分の姿がわけのわからないものになってしまって(露出の失敗)
撮った直後に失敗作としてボツにされていたようです。
それが40年後に再び陽の目を見たわけですが
作品としてはともかく、当時の自分の記録としては残しておきたいと思ったのです。
2015/01/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

>September30さま
今の日本でこれをやったら、「お尻の写真・・・」とやったとたんに間違いなくそのまま警察のやっかいになりますね。下手したら自宅の写真やパソコンの中まで調べられる事になるかもしれません。

そういえば日本ではサイバーパトロールというものがあり、その権限はメールの内容までもチェックできるらしいです。これって相当酷い社会になりつつあるってことですよね。

しかしこの写真、自分が写真の中にありながら、その回りの世界がちゃんと写真になっている、ほんとに興味深い写真だと思います。
2015/01/13 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さん、

「あなたのお尻の写真を・・」 といきなり言わないでちゃんと最初から説明をすれば
日本女性もきっと理解してくれると思ったのですが
やっぱりだめですか? 

次回に日本へ行った時に試してみます。
もし検挙されてブタ箱入りをしたら
川越さんに保釈をお願いすることになるでしょうからその時はよろしく。(笑)
2015/01/13 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

もしも私がそう問われたら?
もちろんオッケーですよー(笑)
それにしてもスツールに自分が写っているっているって気が付くところがカメラマン。
カメラマンには目が5個ぐらいあるのかな(笑)
ユーモラスな写真て楽しいです。
2015/01/14 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

あなたならたぶんオッケーだと思っていました。(笑)

この写真からユーモアを汲んでもらえたのはとても嬉しい。
日本人(のとくに女性)はなかなかそういう眼では見ないのです。

ところでこの写真
女の尻に敷かれ続けてきた私の生涯を象徴していると思いませんか?
2015/01/14 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

そっかー(笑)
尻にひかれてる、そのまんま(大笑い)
クイズに当たったらこの写真をリクエストします!

2015/01/14 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: No title

ムーさん、

いろんな女性の尻にひかれすぎて
いつの間にか尻フェチになってしまいました。(笑)

あ、ところで
クイズの事が出てきたのでここでお知らせをしたい。

今年から毎月のクイズを止めようと思っています。
「クイズ」を止めるんじゃなくて「毎月の」を止めるんです。
私のクイズも先月で50回を迎え、この4年間に50枚もの写真が世界中の読者に届いたことになるのですが
今年は回数を減らそうと思うのです。
なんとなくマンネリになったなあ、というのと、ネタが切れてしまったというのが主な理由です。
でも
これは、と思うアイデアが湧いた時には突然のクイズになるからね。
その時はどんどん応募してください。

2015/01/15 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

もう50回もやって頂いていたんですか。その区切りの場面で、棚からぼたもちとはいえ自分が当選とは。私はたぶんクイズに挑戦しなかった時期が10回分くらいはあるので、それを考えると4回の当選はかなり高確率と考えて良さそうです。

最近のクイズはちょっとSeptember30さんらしからぬ問題が多かったので、次回からはまた難しくなりそうですね。それもまた楽しそうです。
2015/01/20 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: No title

川越さん、

以前の古いブログでのクイズと合わせると70回近くになりますが
全部を通すと4回以上当選の読者は数人いるようです。
確か6回当選という方がいたと思います。
思い返してみると
当選していながら連絡を取ってこなかった人が二人、
送り出した写真が届かなくて再度発送したことが2度(日本とドイツ)あります。
この日本への最初の郵便は4ヶ月後にボロボロになって到着したそうです。

でも今回のように名無しの当選者は初めてです。(笑)
2015/01/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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