過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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性に目覚める頃 4

150617f

裸身
Cincinnati Art Museum 2007




若い叔母

『性に目覚める頃』 なるタイトルで僕の少年時代を語る時に、どうしてもこの叔母のことを抜かすわけにはいかない。

僕の父方の一族には数人の叔母がいて、農家を実家とするこの叔母たちはそれぞれ近在の農家へと嫁いでいたが、いつもモンペ姿で田畑で働く陽に焼けた肌のこの叔母たちは、歳もずっと上で子供の僕から見ると 「お百姓のオバサン」 という感じしかなかった。
それに比べると、少家族の母方には僕が叔母と呼ぶ人は一人しかいなかった。
20代半ばの若い叔母だった。
東京の学校を出たあと郷里に帰って来て高校の体育の教師をしていたこの叔母は、僕が覚えている限り髪をボーイッシュに断髪にして、動作はいつもシャキシャキとしたひとだった。 すぐ近くに住んでいたので、しょっちゅうわが家にやって来た。 ひとりっ子の僕はいつも2階の自分の部屋で一人で遊んでいたが、叔母の声が階下に聞こえると何をやっていてもおっぽり出して階段を駆け下りた。 細い身体に背筋を真っすぐに伸ばしたこの叔母が、若々しく華やかなワンピースを着て元気よく姿を現すと、薄暗い陰気なわが家がとたんに明るくなる。 僕は嬉しさのあまりウキウキとして叔母にまつわりついたのは、いつもお土産に持ってきてくれるキャンデーだけが理由ではなかった。 叔母と一緒にいることでとにかく有頂天になってしまう自分だった。

子供の僕にとってこの叔母は憧憬と賞賛の的だったが、叔母にとっても僕はたった一人の甥っ子だったから、ことさら可愛がってくれた。 ある一線でピシャリと甘えを拒絶する母と違って、叔母は僕が甘えれば甘えるほど喜んでくれたのは、子供に厳しい母を見ていて叔母なりに可哀想に思ったのかもしれない。
体育の教師だった叔母は、畳の上でいろいろな体操を教えてくれたものだ。 スカートを思い切りたくしあげて白い脚を腿の上まで露わにする度に、僕はドキッとして見ない振りをしたが、そんな子供の好奇心など全く気にしないかのように、その柔らかい体を折り曲げていろいろな多角的な格好をして見せてくれた。
その頃の叔母はうちのすぐ近所に小さな台所付きの6畳一間のアパートを借りていて一人暮らしだったから、小学生の僕は母に勧められて週末の夜などよく泊まりに行ったものだった。 叔母と僕は6畳の間に布団を2枚並べて寝た。 寝間着に着替えた僕がいつも叔母より先に布団に潜り込んで、台所の後片付けなどを済ませた叔母が寝床へ来る時には、もうぐっすりと眠り込んでしまうのが常だった。

ある夜、ふと目が覚めたことがあった。
薄 暗く灯りを落とした電灯の下で叔母が着替えをしている。 僕のすぐ目の前で着ていたものをくるくると脱ぎとって白い下着1枚になった叔母の裸身がそこにあった。 向こう向きのままで何か溶液のようなものを丹念に全身に塗っている。 それはいつか美術図鑑で見たことのあるギリシャの彫像を思い出させる美しい光景だった。 腕を上に伸ばしたり脚を広 げたりするたびに、淡い光の中の素晴らしい肢体が次々と形を変えていく。 僕がいつものようにすでに眠っていることを疑わずに、叔母は前かがみになるとあっと息を呑むような大胆なポーズをとった。 僕は身体が震えて喉がからからに乾いていた。 見てはならないものを見てしまったという罪悪感よりも、あれほど好きで憧れているひとの裸を見てしまった興奮の方がはるかに大きかった。

そのことがあってから、叔母の家へ泊まりに行く楽しみがさらに大きく膨らんだ。 しかしその度に毎回叔母の裸身を見ることができたわけではなかった。 大抵の場合、僕は叔母が床へ来るのを待っている間に、襲ってくる眠気に勝てずいつの間にか眠ってしまったからだった。 今日こそは、と必死にがんばっていてもだめだった。

忘れられないことが起こったのはその頃である。
あれは秋か冬か、ちょうど今のような寒い季節だったに違いない。 いつものように叔母と布団を並べて寝ていた僕は、朝になって目を覚ました時に寒くてごそごそと身体を動かしていたらしい。 それを聞きつけた叔母が 「どうしたの?」 と声をかけてきた。
「うー、寒いー」 と言って身体を縮める僕に、「こっちにおいで」 と叔母が誘った。
その時とっさに、 「ううん、いい」 と答えてしまったのは、恥ずかしさからだけではなく、何となくいけないことをしようとしているような危険な誘惑の匂いを子供心に感じ取ったからに違いない。 そして断ってしまったことに、僕は後悔をした。 2度と手に入らないものを逃してしまったような大きな失望だった。 しばらくしてから僕は勇気を出して言った。 「やっぱり寒い…  行っていい?」
「うん、おいで。 暖かくしてあげる」

僕は自分の布団を抜け出すと、叔母のそばへもぐりこんでいった。


(続)








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コメント:

* ドキドキ

これはクイズの前フリでしょうか^_^
2015/11/08 [slight_impressions] URL #zVpgn9mk [編集] 

*

はじまりましたね。septemberさんのポケットは宝物の嵐。それを聞かせていただけるのは、とても楽しいです。:)
2015/11/08 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: ドキドキ

slight_impressions さん、

これはクイズにはならないと思うけど、そういえばこのところクイズにごぶさたですね。
やって欲しいというヒントかな? (笑)
2015/11/08 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

inei-reisan さん、

日本で北陸の秋を存分に楽しんでミュンヘンに帰って来たようですね。
壁に映る影が2つぴったり寄り添っている写真を見て
ラッキーな男性は誰だろう? 日本人? ドイツ人?
いや、これは余計なお世話ですね。
2015/11/09 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

う〜ん、ジャンルは色々あれど、こんな小説の一コマのようなことがSeptember30さんにはよく起こるのが不思議です。

自分のことを振り返って、必死に記憶の重箱の隅をつついても、こんなことはさっぱりです。

この後、どんな展開が待っているのやら。きっと凡人の想像とは全く違う展開になるような気がしますが、想像通りに事が進んで欲しい気もしています。(^^;
2015/11/10 [川越URL #uvrEXygI [編集] 

*

こんにちは。
おしりのエクボの見事な逆三角形が素晴らしいですね。
彫刻とはいえ、モデルがいたでしょうから会ってみたいです。もちろんヌードで。

男の人のおしりの両脇のエクボもいいですけどね。
2015/11/11 [micio] URL #O/XG6wUc [編集] 

* Re: タイトルなし

川越さん、

昔のことをあれこれ思い出して改めて追体験するのは年寄りの特権ですよ。
何しろもう先のことは余り考える余地がないからね。
その点、川越さんはまだ歳の取り方が足りない。(笑)

想像通りの展開とはどんなんでしょうね。
2015/11/11 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

micio さん、

女性のおしりのエクボは、少なくとも僕にとっては非常に魅力的な部位です。
無いとちょっとがっかりしてしまう。

男のおしりの両脇のエクボ?
自分はどうなのだろうと鏡に背を向けてズボンを引き下ろしてみたら…
あっ、僕にもあるあるある!! (笑)
2015/11/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* この体位がいいねと君が言ったから、11月13日は合体記念日

てな風な表題がついた、Septemberさんの大学の後輩さんが歌って大ベストセラーとなった歌集が昔あったような。

続きは、果たして川越さんのご想像通りなのか、村上春樹の「海辺のカフカ」の中で、美容師のさくらさんがカフカ少年に手をかしてあげたような他力発電プロジェクトへと発展していくのかは次回の楽しみとして。

まあ、今晩は合体するぞと最初から決めこんでのベッドインより、寒い夜にスプーン二枚重ねたようにして添い寝して温まっていくうちだんだんムラムラしてきて合体へと発展する夜の方が楽しいような。10年くらい前のアメリカ映画、Brokeback Mountain も、同じテントで寝ているうちにそうなるし。あっ、あれは男同士だったか。

でも、Septemberさんのおしりにエクボがあったかどうかなんて、暗かったせいかよく覚えてないなあ。

2015/11/13 [November 17] URL #- 

* Re: この体位がいいねと君が言ったから、11月13日は合体記念日

November さん、

そんな歌があったとは、初めて知りました。
後輩って誰だろう?
吉永小百合さんかなあ。
そんな下品な歌を歌うとは考えられないけど…


おしりのエクボを考察していたら、いきなりパリのテロ事件が起こって
それどころじゃなくなってしまいました。
これは戦争の始まりのような悪い悪い予感がします。

2015/11/14 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

俵万智

そのブームは
Septemberさんが日本から居なくなってずっと後。

俵万智さんはその後シングルマザーになり、息子とのTwitterで今ブームです。

2015/11/15 [たま] URL #6moyDOY6 [編集] 

* Re: タイトルなし

たまさん、

のび太はアメリカに長いという点では僕と同じなのに、
日本の事情に詳しいのには今さら感心してしまいます。
僕は日本の政治や現代文化にはふだん接していないので
時々こうしてちんぷんかんぷんな会話になってしまいます。

教えて頂いてありがとう。
2015/11/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* サラダ記念日

いいね!と言ったのは体位ではありません。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し

眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの

なかなか色っぼい甘酸っぱい歌が多く、日本ではブームになりました。

あれからまた25年も経っているのですね。
2015/11/18 [たま] URL #6moyDOY6 [編集] 

* Re: サラダ記念日

たまさん、

いいね! とは何か食べ物のことだろうと予想はしていました。
体位ならそんな悠長なことは言ってられないはず。
子供ののび太にはその辺がまだわからない。

彼女の歌には若者だけに共感できるようなみずみずしさがあります。
大先輩の寺山修司以来のこの学校の伝統かな?
それに与謝野晶子の匂いもする。
2015/11/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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