過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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斜線の国から来たアメリカ人

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日曜のパレード
Oakwood, Ohio USA


アメリカに暮らしていて驚いたことは (たくさんあるけれど) アメリカ人というのは海外の国々に対する興味が、僕が予期していたよりもはるかにずっと低い、ということだった。 休暇でヨーロッパや南米やアジアに旅行するアメリカ人はもちろんたくさんいるけれど、その比率はびっくりするほど低い。 経済的に余裕のある階層のアメリカ人が、休暇になると家族を連れてこぞって出かけるのは、国内のデラックスなリゾート地が圧倒的に多い。 外国へ行くといえばせいぜい陸続きのメキシコとかカナダぐらいのものである。
あたかも彼らの世界地図には巨大な北アメリカ大陸が色濃く、でん、と中央に描かれているのに、それ以外の世界中の国々は斜線が引かれて色合いも薄くフェイドアウトされて、現実に存在しない世界のようだった。

2010年の今年、アメリカ合衆国の人口が3億人を突破した。 その3億人の中でほんの一握りのネイティブ・アメリカン (アメリカン・インディアンのこと) を別にすれば、あとは一人残らずその祖先が外国から渡ってきた、という事実。 それにもかかわらず、彼らが自分たちのルーツを求めて、斜線がひかれた国々へ源流探しの旅をする、というアメリカ人は少なくとも僕の周りにはあまりいないようだ。
彼らにとっての「世界」とはアメリカ合衆国のことなのである。

ヨーロッパにたびたび旅行をする僕に向かって 「なぜ?」 と不思議そうに質問するアメリカ人がけっこういる。 わざわざ時間と金をかけて、言葉も通じないし習慣も違う上に、はるか遠方に位置する異文化の国々を訪ねるということが、彼らには理解のできないことだった。 若い世代にはそんなことはないだろうと思ったら、それがそうでもないのである。 特に僕が住むアメリカ中西部の田舎では、生まれてこのかた海を見たこともなければ、飛行機に乗ったこともない、という若者はワンサといる。 それどころか、シニアの年代の人たちで、自分の住む州から外に出たことがない、というのがけっこういる、というのはまったく驚くべきことだった。  
そういう若者がそのまま歳をとって、金を貯めてリタイアをしたあと、巨大なモ-ビルハウスに家族とバイクと犬を詰め込んでアメリカ中を旅行する。 そしてアメリカという巨大国から一歩も外に出ることなく一生を終えるのだろう。

アメリカ 万歳!



アメリカは野蛮から敗退へ、
途中に文明開化を経ないで移っていった唯一の国である。
Oscar Wilde




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コメント:

* はじめまして

いつも楽しみに拝見させてもらっております。
写真もすごく大好きですが、なにより文章にも魅かれております。
これからも、ちょくちょく覗かせていただきます。
よろしくお願いいたします。
2010/12/15 [kenURL #- 

*

アメリカは国内ですべてが完結しますから、街もあれば雄大な自然もある。最先端からプリミティブなものまで。
清の乾隆帝は西洋人が対等な交易を求めに来たとき、「中華にはなんでもあるから、おまえらのもので欲しいものもない、逆に恩恵を施してやってるんだ」と。
それが今のアメリカですね。歴史が繰り返されるなら数十年後100年後のアメリカは清朝末期のようになっているかもしれません。
2010/12/15 [上海狂人] URL #wuZV7DPc [編集] 

* Re: はじめまして

Ken さん、初めまして。
嬉しいコメントをありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
2010/12/15 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: No title

上海狂人さん、まったくおっしゃるとおりです。
清の乾隆帝は現在の中国をも予言したわけです。
アメリカの未来はいったいどうなるのでしょう?
2010/12/15 [September30URL #MAyMKToE [編集] 

*

すみません、私はSeptember30さんの記事をすべて読んだと自信満々に思っていましたが、嘘のようです。この記事は読んだことがありませんでした。

非常に面白いですね。September30さんが感じられた事を、私も自分で感じてみたい!と強く思っています。(だからこそアメリカの片田舎にいってみたい)彼らの思う「世界」とは一体どんなものなのだろう・・すっごく興味があります。

確かにヨーロッパでは、「アメリカ人は地理に弱い」と考える人が多くいるように思います。現在ヴェネツィアから電車で2時間の場所に住んでおり、ヴェネツィアでは多くのアメリカ人観光客を目にしますが、彼らは3億人の中のほんのひと握りの存在なのですね。

自分たちのルーツを求めて源流探しの旅をするアメリカ人がいないという点ですが、それは、それほどまでに「アメリカ」という国が人を魅了する何かを持っているからではないか?と私は思うのです。それこそ「アメリカンドリーム」じゃありませんが、過去の苦しみもトラウマもすべて心の中から消してしまい、ゼロから人生を切り開いていく場所をアメリカが提供しているのではないかと・・平々凡々に日本で育った私にとって、「ルーツを探す」という行為自体、身近に感じる事ができないのであまり偉っそうな事を言うべきではないのですが、「私はアメリカ人だ」というアメリカ人としてのアイデンティティーに精神的に支えられている人も多いのではないかと思います。だからこそ、あえてルーツを求めるという事をしない。どこにいても目に入ってくる星条旗を見ながら、そんな事を考えていました。

セルビア人と知られるのが嫌で、名前をイギリス人の名前に変えた女の子、インドカレーは食べてもインドという国に全く興味を持っていなかった、インド人の両親を持つイギリス人の友人。自分のルーツを100%受け入れない人、受け入れられない人はいるんだなという事を彼らを通して強く感じました。

何を言いたいのか、自分でも分からなくなってきましたので、このへんで失礼します。(笑)

2014/06/16 [YokoURL #- 

*

Yoko さん、

上の上海狂人さんの、アメリカを昔の清にたとえたコメントは
簡潔にアメリカを表現しています。
そしてその中国がこうしてまた世界に台頭してきたことは
歴史の流れを体験しているような一種の感慨があります。

アメリカ人が自分の源流探しに興味が無いというのは
まあしょうがないかも知れません。
自分の両親や祖父母がヨーロッパからの移民ならともかく
そういう時代はすでに過ぎて今は祖父母の両親が移民だったわけだから
今の世代にとってはYokoさんのおっしゃるように、祖国はアメリカとなってしまってるのでしょう。

それにしても
英語しか話せないアメリカ人が圧倒的に多い、という事実は
驚くほどです。
アメリカでは中学高校で必ず第2外国語の選択を強いられて
フランス語かスペイン語を勉強するのですが
それを身につけている人はほとんど無いといってもいいんじゃないかと思います。
大部分のアメリカ人は外国に出ることなどまずないだろうし
もし出ても、なにしろ英語が世界の公用語となっているからそんな必要はないのですね。
北ヨーロッパでは誰でも最低2カ国語、中には数カ国の言語を話す人はざらにいるというのに。

先日もあるパーティでアルゼンチン人を相手にすばらしいスペイン語をしゃべっているアメリカ人がいる
と思って訊いてみたら彼はイギリス人でした。(笑)


2014/06/16 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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