過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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携帯電話のこと

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青い噴水



最近、携帯電話を買い替えた。
長いあいだ使っていた旧式のやつ (日本でガラケーと呼ばれるあれ)が、ある日ついに働くことを止めてしまい、それで仕方なく、という感じでスマートフォンを手に入れたんだけど、使い始めてみるとこれが実に具合がいい。 まずそのサイズが馬鹿でかいからスクリーンの字がとても読みやすい。 それと、これは僕が知らなかっただけだけど、付いている機能が旧式の電話とは比べものにならないくらいに充実している。 日本ではパソコンをやめて携帯電話に切り替える人の数がどんどん増えているというのも大いに頷けた。

最初、新居となったビルの中までは外からの電波が届きにくく、いちいち中庭に出て電話をしていたのが、ケーブルとインターネットの設置で自宅のワイファイが使えるようになってからはその不便も解消した。 ただ発見したのは、電話を使いながら外から家の中へ入るととたんに電波がドロップする。 電話会社のシグナルと自宅のワイファイとの切り替えがうまく行ってないのだろうが、電話の使用量が仕事をやめてからは極端に減った僕にとっては、どうってことはない問題だった。 電話を耳に当てながらブリーフケースを抱えて、あたふたと外出する、なんて生活とはもうすいぶん前にグッドバイしている。 どこで電話を取ろうと、その場でゆっくりと応対すればいいのである。 それともう一つ、今の僕がカルト教団の狂信者みたいに死守しているルールが一つだけあって、それは車の運転中には電話に出ない、ということだ。 絶対に出ない。 発信者の名前すら見ない。 自分のスローライフをこんな形で周りの人に蔓延(まんえん)しているとも言える。


スマートフォンを持つようになって、普通の音声通話よりもテキストメッセージの数がぐんと増えたのに気がつく。 古い電話のキーボードがいかに使い難かったかがわかる。 まだ日本語のソフトを入れていないのでテキストはもっぱら英文だけなんだけど、グーグルのソフトが実にうまくできていて、英語のスペルを途中まで入力するとあとは候補の単語がいくつか上に出てくるので、それをタップするだけですぐに次の語へ進めばいい。 文章が驚くほど早く書けてしかもミススペルが無いのだ。 自分でも気が付かないでつい自然と饒舌になっている。
テキストメッセージの良いところは、同じ1対1の会話でも電話とかチャットと違って束縛感が薄いから、返答が遅れたり途中で座を外したりしてもあまり気にされないことだろう。

ある土曜日の午後に、息子と僕のあいだでこんなテキストが飛び交ったりする。

息子 「父さん、どうしてる?」
父 「おれは調子いいよ。 そちらは?」
息子 「芝刈り機を運転しててウルシにかぶれたらしく顔が倍に腫れちゃってる。」
(彼はアテネ郊外の大邸宅に住む老嬢に雇われて、庭の管理をしている)
父 「そうかそれはかわいそうだな。 父さんも子供の頃よくかぶれたけど、大人になってからは1度もないよ。」
息子 「今何してる?」
父 「テレビでテニスのUSオープン見てる。 錦織とカーロヴィッチ。 今回は錦織の調子がすごくいい。」
息子 「ああ、カーロヴィッチって2メートル10の大男だよね。」
父 「そうだ。 だけど彼はなぜプレス連中に Dr. Evil って呼ばれるんだろ?」
息子 「あれはね、コメンテーターのブラッド・ギルバードが映画のシリーズから付けたニックネームだよ。 異様に大男だから。」
父 「そうか。 たしかに身体といい顔といいテニスプレーヤーにはちょっと異様だ。 フランケンシュタインにそっくりじゃないか。」
息子 「あはは、その試合の結果は僕はもう知ってるけど言わない。 父さんはいつも1日遅れの録画しか見ないからね。」
父 「いや、これは錦織の圧勝だろうな。 賭けてもいい。」
(ここで息子の返信がしばらく途切れるので僕はそのまま続けて打つ)
父 「テニスといえば、おれはシンクレアのテニスのクラスを取ることにしたよ。 土曜の朝の9時からだ。 今日でもう3回目だ。」
息子 「それはいい! シンクレアなら新しいアパートから歩いても行ける距離じゃない。 それでクラスはどうだった?」
(ここで誰かがドアをノックするので、開けてみるとアマゾンからの小包が届く)
父 「いやあ、ちょっと参ってる。 別に年齢の制限とかは無いはずなのに参加者のほとんどがシニアなんだ。 まあ自分もシニアだから不満は言えないとはいえ、ちょっと程度が低すぎるんだな。 まず最初のクラスの日に、始まってから15分もしないうちに女性の一人が卒倒して床に寝たまま動かなくなったんで、救急車を呼んだり警察が来たりで大変だったんだ。」
息子 「まあ父さんもこのところ身体がナマッてるだろうからしばらくはそれでやってみたら? そのあとほかのクラスへ移ればいいじゃない。」
父 「うんそのつもりだよ。」

というぐあいである。
息子は自分の方から電話などまず掛けてこないくせに、テキストはこうして時々打ってくるのはなぜなのかは、何となく僕にもわかる。 電話で話す時のあの改まった緊張感を持たないで、気軽に呼びかけができるからだろう。
新しい電話でテキストメッセージをやるようになってから、息子だけではなく周りの人との対話がたしかに増えたのは喜ばしいことには違いない。


***



今日の写真はフィレンツェのピッティ宮殿の中庭をそぞろ歩きした時に撮ったもの。
なんて言えばカッコいいけれど、実はこれも我がアパートのコートヤードの壁に取り付けられた噴水なのだった。
ビルの管理人の話では魚の口からちゃんと水は出るそうだ。 誰も来ない庭に噴水を出すのも不経済だからと、ふだんは止めているという。
そしてこの噴水の壁の真裏にあるのは、ほかでもないわが家の寝室で、寝室の窓から首を出せばすぐそこに、シャチホコのような怖い顔の魚がいる、というわけなのです。





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コメント:

*

お久しぶりです。お写真、とっても気に入りました。蒼の色が、美しく、壁に貼り付けられているのは、大理石ですか?色のバランスがいいですよね。
ところで、9月3日に全米オープンを観戦してきました。マウーとの試合を応援してきましたが、圭くん、今回はすごく調子が良かったですよ。マレーの試合も見てきましたが、彼ね、頭のてっぺんが禿げてきていて、あのキャップは、ハゲ隠しですよ(笑)
テニスのクラスを受講されているようですが、年配の方々とプレイするのは、楽しいこともあるのですけど、転んだ拍子に骨折されたり、あるいは、最近、ある事実がわかったことが一つあって、83歳の女性が痴呆症で、私自身は、忘れっぽいのは、年齢的なものだろうなーって思っていただけに、テニス仲間や、この女性のお嬢さんから知らされた時は、ショックでした。
そして、自分の老後のことをしっかりと考えるようになりました。

太郎さんとのテキストメッセージのやりとり、いいですねえ。私と娘が、よくやっていますが、娘にスペールが間違っているって指摘されてねえ、、、、、、、。
ところで、もう少しでお誕生日ですね。

携帯電話は、娘のお下がりをもらっているんですが、私自身、電化製品に弱く、未だに、よく理解できないけど、なんとか利用しています。私は、やっぱり旧人類です。

テニス楽しんでください。
2016/09/15 [キャットラヴァー] URL #mQop/nM. [編集] 

* Re: タイトルなし

キャットラヴァーさん、

テニスのクラスといっても別にインストラクターがいるわけでもなく
3面ある室内コートを使いその時の出席者の人数によって
ダブルス、シングルス、カナディアンダブルスなどの試合をやるだけ。
本当は僕は試合よりも思いきりボールを打ちたいんだけど、それは無理みたい。
しかたなく、30分早くコートへ行って一人で壁に向かって打ってます。
2時間のクラスが終わってもなんとなく物足りない。
太郎を相手に乱打する時は、1時間も打つと歩けなくなるぐらいにヘトヘトになるのに。

でも、冬になってもテニスができるというのは嬉しいことです。
2016/09/15 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* 携帯

便利ですよね。私もガラケーから変えて早2年ほどですが、もう手放せない状態です。ただ写真を撮るときは、どうしてもカメラに手が伸びたいますよね。。
2016/09/16 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

* Re: 携帯

inei-reisan さん、

そう。携帯電話のカメラをほとんど使わないのは僕も同じ。
最近はびっくりするほど画質が向上してるのはよく知ってるんだけど
撮影時のコントロールができないというだけじゃなくて
長年いっしょに過ごしてきた他のカメラへの貞節を守ってるのかもね。


2016/09/17 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

テキストメールって何だ?と思いました。
皆がやってるLINEと似てるけどもっとシンプルで安心みたい。
LINEはデメリットもあるので私はしていません。
長話がしたい時はパソコンで限られた友人とSkypeかGoogleでチャット。
連絡事項はメールだけ。
私はそんなふうに使い分けています。
スマートフォンは便利だけど、
スマートフォンと自分を一体化したくないので、
位置情報なども必要なときしかONにしません。
何だか嫌なのよねあけすけにさらすのが。
用心深すぎる?(笑)

スマートフォンに変えて良かったと思うのは、
YouTubeから好きな演奏者の音楽を集めていつでも聞けること。
イヤホーンからの音が思いのほかいいんです。
東京の移動は電車が多いから昨日もウィンナワルツで歩きました。
気分が変りワクワクウキウキしてきます。
今度はサンバで歩こうかな。
よれながら歩いちゃうかもなー(笑)








2016/09/17 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* http://blog.goo.ne.jp/shirowani

まず、お写真を拝見して、ヨーロッパの何処か、なのに何か知っているような気がする… デ・ジャ・ブー?前世の記憶?と、思ったら、確かに、つい最近、見た噴水でした…orz

 携帯電話は会社支給のiPhoneだけ。よく家や会社に置き「忘れ」ます。
 
2016/09/18 [わにURL #LkZag.iM [編集] 

* Re: タイトルなし

ムーさん、

日本の LINE というのはどういうシステムなのか僕は知らないので比べようがないけれど
アメリカのテキストメッセージはメールのアドレスが不必要で
電話番号があれば誰にでもテキストが打てる。
最初の頃は打ったテキストの数でチャージされていたのが
今は基本料金を払うだけで無制限に打てるようになった。

それと面白いなあと思ったのは
Visual Voice Mail というソフトがあって
これは音信電話に入ってきたメッセージ(つまり留守電のこと)を
耳で聞かないで文字で読むことができる。
これは有料で月に3ドル加算されるのを1月だけ試した結果
結局キャンセルしたのは
人のメーッセージはやはりその人の声で聞きたい
というのが主な理由。
とくに、知らない人からの留守電は声を聞くだけである程度その人の性格を予想できるし
よく知ってる人なら、声でその時の本人の気分などを推測できる。
美しい声など、たとえそれが保険の勧誘でもうっとりと聞いちゃうからね。(笑)

自分の位置情報は僕も On にしていない。
仮釈放中の犯罪者じゃあるまいし自分の行動を逐次ほかの人に知られるなんて耐えられないじゃない?
うっかり浮気もできないじゃないか。(笑)

音楽を聴きながら街を歩くというのはいいね!
東京のような大都会に住んでれば僕も絶対にやるんだけど
今はその辺に出るのはいつも自転車なのでこれはちょっと危険。
レクイエムを聴きながら車にはねられて昇天
なんてことになりかねない。
2016/09/18 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: http://blog.goo.ne.jp/shirowani

わにさん、

先日の午後、この中庭が珍しく何やらガヤガヤとうるさいので
窓のシェードを引いてみたら
ファッションモデルやフォトグラファー、アシスタントなどで
写真撮影が進行中でした。

この中庭の設定ならヌードモデルを入れて撮ってみたいとは
最初にここに立った時から思っていたことなんだけど
眼をつけた写真家はほかにもいたんだ。





2016/09/19 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* テキスト

ご無沙汰しています。
テキスト、懐かしいな〜と遠い目になってしまいました。
今はWhatsappというフリーのアプリを入れて使っています。これもかかるのは携帯電話の基本的な使用料金だけで、アプリを経由してテキストを送ったことによるアプリ会社への支払いは生じません。
Wi-Fi環境下ならもちろん、携帯電話の電波しかないところでも通信できるので重宝しています。
私は英語での日常会話が苦手だったので、クラスメートやクライアント、インストラクターとのやりとりはテキストの方が気が楽でした。だから息子さんの気持ちもちょっとわかります(苦笑
あ、SeptemberさんもWhatsapp入れてみてください(笑)そしたら気軽にやりとりできますね〜 あはは
2016/09/20 [nicoURL #KqigePfw [編集] 

* Re: テキスト

nico さん、

この3日ほど小旅行に出かけていて
インターネットの届かない世界へ行っていたので、
いや、そうじゃなくて
わざとラップトップを持って行かず、しかも僕は携帯でのGメールというやつふだんはを使ってないので
帰宅するまでブログも見れなくて
このコメントを書くのが遅くなっちゃった。

日本とアメリカのあいだでテキストメッセージが打てるのかどうか
実はまだ試してないんだ。(多分ダメだと思う)
以前からヨーロッパやメキシコではアメリカから持ち込んだ自分の携帯がちゃんと使えるのに
日本だけは例外で使えない、という不便な年月を長い間経験してきたので
今はどうなってるんだろう、と思いながらついそのままになってる。
日本との交信はメールと家庭電話が通じればまず不自由はないからね。
世界中でも日本だけが独自の携帯電話システム(line というのもその1つ)や
営利通信会社の繁栄を保ってきたという弊害に
僕ら外国に住む連中が犠牲者とされたような気がしています。

2016/09/25 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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