過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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寒くない日は街を歩こう 4

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The Neon Cinema



巨大で殺風景な駐車ビルに囲まれて、申し訳無さそうにひっそりと生存するこの小さな建物が、デイトンのダウンタウンでたった1軒の映画館だと言えば、誰もが驚く。
一昔前まではそうじゃなかった。 大きな映画館が3軒もあった。 サイズとしてそれほど大きいとはいえないデイトンのダウンタウンの、お互いに歩いてすぐの距離にこの3軒があった。 その中の1軒が前に紹介したヴィクトリアで、これは舞台芸術のシアターに変身することでちゃんと生き残り、あとの2軒は郊外のモールへと逃げていったのだ。

このネオン・シネマは数人の映画オタクの若者たちがパートナーを組んで営業しているそうで、中へ入るとさらに2つのシアターに分かれていて、右が140の座席を持つ大(?)シアター、左が座席70の小シアターとなっている。 上演フィルムは最新のアート系の作品からインディーズ自主映画や古い名画がほとんどで、ハリウッド製の大衆向けヒット映画などはまずここには来ない。 だからいつ行っても観客はまばらで、これで商売になるのかとつい余計な心配をしてしまう。 観客層は当然ながら学生やシニアの知識人らしき人たちで占められていて家族連れとか若いミーハーなどはまず見られない。
ところが先日ここで観た今話題の Manchester By The Sea は大小両シアターで上演時間をずらしてやっていたが、僕らが行った遅い時間にも珍しく席は1つ残らず占められていた。 開演前にパートナーの1人が壇上に現れて挨拶をした所によると、この2週間は両シアターが完全に満員だったそうだ。 客席から大きな拍手が湧く。 常連だけが行くバーやカフェがあるように、ここはそういう人達のための映画館なのだろう。

僕がこの映画館を好きな理由はもうひとつあって、それはリクライニングの座席のクッションが他のどこの劇場よりも実に座り心地がいいのである。 それだけじゃなく、太った人でも楽に座れるように贅沢に幅が取られているから、両隣りの観客と肩やヒジがぶつかることもない。 前後のスペースもゆったりしていて座席を後ろに倒せばウーンと言いながら両足を前に伸ばせる。 飛行機で言えばエコノミーとファーストクラスの違いである。
上記の Manchester By The Sea は上演時間が2時間20分と長かったが、ちっとも苦にならなかった。 苦にならなかったのは良い座席のせいだけじゃなくて、映画自体が秀逸でまったく時間を忘れてしまったせいもあるけど。







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コメント:

*

うちの近所にも小さな映画館があります。
映画配給会社のプレヴュー室ぐらいの大きさです。
いつもガラガラだけど質の良い映画がかかります。
昼間っからここに来るのは近所の年配者と学生。
問題は年配者向けすぎる傾向かなー。
あまり身につまされるのは楽しくないのです。

リクライニングシートは素敵ですね!
寝てしまいそうだけどね(笑)
2017/02/05 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: タイトルなし

ムーさん

年配者というか高齢者をテーマにした映画は古今を通して結構あって
ドラマとして良いものが多いけれど身につまされるのは僕も同じで
ちゃんと見るのにかなり勇気が要る。(笑)

本文に書いた 『マンチェスター…』 はそれぞれの不幸を背負った若者たちの葛藤が描かれていて
唐突とも言えるエンディングでほのかな希望を匂わせているところがいい。
映画が終わり場内が明るくなって、観客はぞろぞろと外に出て駐車場まで歩きながら
終わった時点で始まる次の物語を頭に描いている、
そんな種類の映画です。
今年のベストムービーにはまちがいなく候補に上がるだろうな。

リクライニングチェアは寝てしまいそうじゃなくて
実際に眠っちゃったことが数回あるよ。
つまらない映画のばあい
他の映画館なら席を立ってしまうのが、ここだとそのまま目をつぶる。


2017/02/05 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

横浜にも小さいけれど味のある映画館があります。
私がしょっちゅう通うJ&B

階段を上がると右手に名画座
左手はミニシアター
潰れかけた映画館を30代の支配人が生き返らせました。
それでも数年前まではここまで活況を呈しておらず、やっぱり見たい映画は都内まで出かけておりました。

ここのところ、見たい映画はほぼここにやってきます。
都内より少し遅くですが、それもちょうど観に行くには程よい頃合い。

今日も2本も観てきてしまいました。
残念ながら、古い映画館なので椅子が硬く、2本めの後半はきつかったです。

でも、帰りに川沿いを駅まで歩くと、美味しい居酒屋があるんです。
私のお休みの日のとっておき。
でも、映画は1人で見たいんです。
帰りの居酒屋は友達と映画の話がしたいし。
ちょっとそこが迷うところ。1人で行くか、誰か誘うか。
居酒屋だけ誰か来て欲しい。

きっとマンチェスターバイザシーも来ると思います。
2017/02/11 [みん] URL #6moyDOY6 [編集] 

* Re: タイトルなし

みんさん

封切りの映画を映画館で見ることがほとんどなくなったこの頃
『マンチャスター』 はほんとに久しぶりの経験だった。
それというのも昨年夏の引っ越しのあとこのネオン・シネマが歩いて行ける距離になったということもある。

でもみんさんのように
映画を2本続けてみるというのは僕にはもうできないな。
2本の映画の間で頭脳の切り替えが難しいということもあるけど、それよりも
4時間近くを椅子に座りっぱなしというのは
お尻の肉が薄い僕にはかなりの苦痛だからね。(笑)

でも昔学生の頃は
池袋にあった 『人世座』 で便所の臭いが漂うような客席で
古い名画の3本立てなんてしょっちゅう見ていたのに。

映画は一人で観るもの、というのは僕も同感。
でも女房は別。
おたがいに空気のような存在だからぜんぜん気にならない。
つまり
僕ら夫婦はいっしょに暮らしていてもお互いにはいつも独りだということなんだろうなあ。
考えてみれが悲しいことだよね。
2017/02/12 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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